日本文化研究所シンポジウム「きょうの音」を開催しました

2022.12.22

2022年12月3日(土)に、京都産業大学 天地館にて日本文化研究所主催シンポジウム「きょうの音 -音・人・場の関係を探る」が開催されました。

シンポジウムのタイトルである「きょうの音」には、「京」と「今日」の2つの意味が込められています。京都の街を歩けば自分の歩く足音や人々の話し声から車が行き交う音や工事現場の音まで、様々な音が聞こえてきます。その「音」が京都の文化にどのような影響を与えているか、そしてコロナ禍を経て生活様式が変化した今日ではどんな音が街から聞こえてくるのかという日本文化研究所の行う研究内容にあわせ、DJ・サウンドアーティストのニック・ラスカム氏、京都市立芸術大学 教授の高橋悟氏、音楽家のやぶくみこ氏をお迎えしてそれぞれの取組や研究についてご紹介いただきました。

シンポジウムは日本文化研究所・並松信久所長(経済学部教授)と、イベントを企画したディエゴ・ペレッキア所員(文化学部准教授)の挨拶から始まりました。

ラスカム氏は2010年に創立した「MSCTY」での音響に関する研究とそれらを活用し、音を利用して人と場をつなぐ取組をされています。アートや体験、空間づくりなどに音を提供し、都市における「音のオアシス」をつくることを目標に掲げて活動しておられることについてお話しいただきました。

高橋氏は崇仁地域や東九条の音を記録・研究して街の記憶を残す取組をされています。年月の流れやそこに住む人々の高齢化などにより街は急速な変化を遂げています。場所の音を記録として残すことで風景とともに移り変わる音の変化に気づき、その場所の在り方やその場所を作り上げた人々の思いに触れることができます。音を体感するためのインスタレーションや記録された音を聴くプロジェクト『聞こえないを聴く・見えないを視る』についてご紹介いただきました。

やぶ氏は音楽家、作曲家としてご活躍されています。今回は舞台音響として場の音をつくるお仕事について、また淡路島でのプロジェクト『瓦の音楽』についてお話しいただきました。南あわじ市・津井の瓦を使って地域の方々と一緒に音楽を楽しむイベントのお話は非常に魅力的で、身近なものを使って年齢や性別、経験を問わず誰もが音を楽しめる特別な体験がつくられていく過程をドキュメンタリー映像とともにお話しいただきました。会場にも瓦を持ってきてくださり、参加者も実際にたたいて瓦のやさしい音色を楽しんでいました。

発表のあとにはディスカッションが行われ、副題にもある音・人・場の関係性について議論が交わされました。発表された取組には共通して「誰もが音を受け入れ、楽しめる取組であること」という考え方があり、身のまわりに溢れる音の活用や音の在り方をどのように捉えるかなどこれからの人・音・場の関係性の探り方を考える時間となりました。

(報告者:文化学部京都文化学4科年次 武内 翠)

日本文化研究所・並松信久所長の挨拶
登壇者の集合写真(左から高橋悟氏、ニック・ラスカム氏、やぶくみこ氏)
やぶ氏が演奏する淡路島の「瓦」
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