社会安全・警察学研究所オンラインシンポジウム「性犯罪被害者のために何が必要か、何ができるか(再び)」開催報告

2022.03.24

2022(令和4)年2月26日、京都産業大学社会安全・警察学研究所は、シンポジウム「性犯罪被害者のために何が必要か、何ができるか(再び)」を、警察大学校警察政策研究センターの共催を得てオンラインで開催いたしました。警察関係者や被害者支援の実務に当たっている方を中心に、250名を超える多くの方々にご参加いただきました。
当研究所は、2年前の2020(令和)2年2月にも同じ趣旨のシンポジウムを開催しましたが、性犯罪被害者支援や性犯罪・性暴力防止の分野は、急速に社会的な関心が高まっており、政府・自治体や民間支援団体などの取組みが活発化し大きく展開してきています。そこで、最近2年間の動向をフォローする趣旨で、前回のシンポジウムの講演者にもう一度登壇していただき、最近の動きを照会していただきました。

まず、小西聖子氏(武蔵野大学人間科学部教授・心理臨床センター長)は、「性犯罪に関する議論と課題——法律改正と精神医学・心理学——」と題する講演で、法制審議会における性犯罪に関する刑法改正の検討状況や刑事訴訟での被害者の証言の証拠としての扱いなどについて、精神医学の臨床・鑑定の経験をもとに問題点を指摘されました。これに対して、当研究所員の増井敦(本学法学部准教授)が、刑事法学の立場からコメントしました。
次に、福岡県性暴力対策会議座長をつとめる松浦賢長氏(福岡県立大学理事・看護学部教授)が、「性被害防止教育・性教育から考える被害者支援の糸口」と題して、前回シンポ後に施行された福岡県性暴力根絶条例の運用状況を報告され、とくに性被害防止教育を集団で行う場合の工夫について検討課題を示されました。
3本めの講演は、片岡笑美子氏(一般社団法人 日本フォレンジックヒューマンケアセンター会長)の「社会で支える性暴力被害者支援の未来——人づくり・場づくり・チームづくりで悪循環を断ち切る——」でした。片岡氏は、病院拠点型ワンストップ支援センターである日赤なごや「なごみ」の活動から見られるコロナ禍の影響を指摘した上で、課題解決に向けての人材育成や他機関多職種連携チームでの情報共有などの取組みとその課題を論じられました。松浦氏と片岡氏の講演に対しては、当研究所員の新恵里(本学法学部准教授)が臨床心理士としての経験なども踏まえたコメントをいたしました。

後半のパネルディスカッションは、参加者からオンラインで寄せられた数多くの多様な質問に対して、講演者が回答するかたちで進められました。司法面接に関する法制審議会での議論の状況、福岡県条例に基づく加害者住所届出制度の実効性や加害者の再犯防止プログラムの内容、集団での性犯罪防止教育の機会に被害開示がなされた場合の対応、性被害関連相談に携わる相談員教育、家族内での性被害の場合など被害者が相談を拒絶する場合の対応など、実務において重要な問題が論じられました。

講演の資料

シンポジウムの講演で用いられたスライドの資料を掲載いたします。

備考

2020(令和2)年2月の前回シンポジウムの内容は、当研究所発行の『社会安全・警察学』第7号に掲載しております。本学リポジトリでご覧いただけます。

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