新星の可視光低分散分光観測による新星爆発の多様性解明

再帰新星T Pyxにおける早期分光観測から高温度膨張ガスの証拠!

 上に示した図は2011年4月に起きた再帰新星 T Pyxの爆発の発見直後に荒木望遠鏡で観測したスペクトルです。これは、この新星爆発において、世界で最初の観測例となりました。機動性の高い荒木望遠鏡によって、これまで分光観測が行われたことのない、ごく初期の増光中の観測に成功しています。その結果、非常に高い励起レベルにある元素からの輝線が検出されました(Arai et al. 2015)。この結果は新星の火の玉が初期には高温(数万度)であったことを示しており、新星の爆発初期の描像を理解するうえで重要な手がかりになることが期待されます。このように、神山天文台では、可能なかぎり爆発の早期に観測を開始することで、新星爆発の本質である高温で膨張しつつある光球面の物理を解明しようとしています。

新星の分光モニタリング観測

 これまで、多くの新星について可視光での光度曲線が観測されており、新星の光度変化には様々なクラスが存在することが示唆されています(Strope et al. 2010)。しかし、こうした光度変化が何に起因するものであるか、十分には理解されていません。神山天文台では、様々な新星候補天体の可視光低分散分光観測を実施し、多くの新星について光度変化に伴うスペクトルの変化を追跡することで、光度曲線に見られる分類がどのような物理現象に起因するものであるかを明らかにしようとしています。

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