体験レポート
金融・証券市場の現場をさぐる(2010年度)
国際関係学科 亀谷いつの・茶屋道あずさ・堀内香那・松下芽依
現代では企業買収やM&Aなどが国内だけではなくクロスボーダーに行われていますし、また一般の投資家による株式売買も国際的に行われ、それに伴い様々な立場の人々が大金を得たり失ったりしています。また、リーマン・ショックのように一国で起きた金融危機が世界に波及する現代において、金融取引や証券取引による資本の国際的な動きは、国際関係を学ぶ上で欠かせない問題となってきています。しかし、私たちは、一国レベルでどのように資本が動き、株式の売買が行われ、また、企業がどのように活動しているのかを、どこまで知っているのでしょうか?今回の国内フィールドリサーチで私たちは、普段の国際関係学の講義とは一転して、日本の金融・証券取引の仕組みを学び、また京都・滋賀地域の経済の動向にも目を向けました。
まず事前学習では、金融・証券取引や金融機関の基本的な仕組みについて学び、それぞれが疑問点や課題を挙げ、夏休み中に行う訪問・見学の準備をしました。訪問・見学の第1回目には、日本銀行(日銀)京都支店と日本の代表的な地場証券のひとつである西村証券を訪れました。日銀京都支店では、主に京都府・滋賀県(京滋)地域の経済状況のレクチャーを受け、事前に準備していた質問にも答えていただきました。また西村証券では、京都に本社のある企業の経営の特徴などについてレクチャーしていただきました。企業経営や証券取引等の専門知識に明るくなかった私たちですが、両所でお話を伺うことで関心の幅を大きく広げることができました。京都の企業が日本企業の中でも特色のある経営を行っていたり、企業ごとに経営形態の類型があったりというようなことについて、新たな発見もありました。
第2回目には東京へ行き、東京証券取引所(東証)と、日本銀行の本店および貨幣博物館を訪問しました。東証では株式の模擬売買を体験できるということが、私たちにとって今回のフィールドリサーチの魅力のひとつでした。実際に株式の模擬売買をしてみると、売り買いを決めるタイミングが非常に難しく、また自分の保有金額があっという間に増えたり減ったりすることが楽しい反面、おそろしいということを体感しました。事前学習で学んだ株式投資のハイリスク・ハイリターンという特徴を体験することができ、とても良い経験になりました。東証ではまた、株式売買管理システムの現場を見学し、証券取引所の役割や国際経済の中での日本の状況についてのレクチャーも受けました。
訪問から持ち帰った各自のメモを基に、事後学習が始まりました。基礎知識が少ない状態で受けたレクチャーだったため漠然としか理解できなかった部分もありましたが、横山先生やメンバーとの討論によって理解を深めることもできました。そして、個々のレクチャーや体験で学んだことを4人共同で報告書としてまとめ上げました。レクチャーや体験を振り返って文章にすることでさらに疑問点が生まれ、それについて自分で調べることを繰り返していくうちに、学んだことをさらに濃密なものとして習得できたように思います。
今回の国内フィールドリサーチは少人数でのクラスであったため、自分たちのペースで主体的に取り組めたと思いますし、それが私たちのやりがいに繋がりました。また、私たちが今後何について学んでいきたいかということを改めて考える機会を与えてくれました。先生と対話を繰り返していくうちに、自分たちが関心を持つ内容について深く考えるようになり、翌年にどのような学習をしてくのか(どのような内容のゼミや講義を選ぶかなど)について早い時期に考え始めることもできました。そういう意味で、この国内フィールドリサーチが今後の学習への道標となったと感じています。
今回、私たちは国内フィールドリサーチとして、横山先生の指導で経済・金融について学ぶクラスを選択しましたが、ほかにも先生方が様々な分野を学ぶ機会を用意してくださっています。私たちは毎日の講義では知ることのできない知識や経験を得ることができました。自分にとって興味のある分野や今後専門的に学びたいことがある人は、是非国内フィールドリサーチに参加してみてください。
担当教員(横山 史生先生)から
私の指導する国内フィールドリサーチは、日本銀行や証券取引所などを訪問し現場の見学やレクチュア受講を行うことを通して、金融・証券市場によって媒介されている投資家・企業間での資金の流れが日本経済・国際経済の中で果たす機能と問題点について考えよう、というものです。訪問見学を行うためには、金融論や証券市場論に関するある程度の基礎知識が必要ですし、訪問先との日程調整交渉にも日時がかかりますから、綿密な事前学習を行わなければなりません。また、夏休みの暑い時期に東京まで出向いて調査見学を実施する苦労も伴います。
2010年度に2回生としてこの国内フィールドリサーチに参加してくれた亀谷さん、茶屋道さん、堀内さん、松下さんの4人は、この国内フィールドリサーチに伴う上述のような大変さを、一人一人の積極性と緊密なチームワークによって乗り切ってくれました。訪問見学をふまえて調査報告書を作成する事後学習においても、全体構成の中で各自が分担する範囲について下書きを作成し、それをもとに討論を重ねながら明解な文章を練り上げていくという形で、共同作業の利点を最大限に発揮することができたと思います。さらに、体験記で書いてくれているように、この国内フィールドリサーチでの体験をただ単に一回きりのイベント的なものに終らせるのではなく、4人がそれぞれの学習の方向性を主体的・自覚的に考えるきっかけとして捉えてくれたことも、大きな成果であったと思います。4人の国関(国際関係学科)生としてのさらなる成長を期待しています。