フランス移民問題と宗教教育

報告者 中谷 真憲 氏(本学法学部教授)
開催日時 2015年2月25日(水)15:00〜18:00
開催場所 京都産業大学 第2研究室棟第1会議室

概要

 2015年になってからのイスラムのテロ問題は、日本では、1月7日フランスの風刺雑誌『シャルリ』が武装集団によって襲われ幹部職員が殺害された事件と、1月20日から開始された湯川・後藤両氏の殺害予告事件(2月1日の殺害報道で終了)の二つに関心が集中していた。

 シャルリ事件は日本では、被害者への哀悼とテロを容認できないとする点では世界と共通の見方をとっている。けれども、「言論の自由」の問題と考えるなら、自分たちの価値観上許容できない言論(ホロコーストの賛美)を認めておきながら、他の文化(イスラム文化)絶対的に拒否する(マホメットの風刺)ものをどうして執拗に報道するか理解できないという論調が多数である。

 本講義は前半において、フランスにおける風刺文化と言うものが、キリスト教の権威の確立の過程で宗教の介入を許さない「世俗性laicite」を担保するものとして非常な重みをもっており、多数のフランス人はここにそういう意味でのフランス精神の源を見ているとの説明があり、多くの出席者にとっては「目から鱗」の報告であった。

 後半は、ISISへの参画がフランスを含む先進国の若人から行われている実態に着目した。このことは、フランスが「フランス語とフランス文化」を受け入れ尊重する人を移民として受け入れる寛容な移民政策をもちながら、かならずしもそれがうまく機能してこなかったことを意味しており、同国の歴史に遡った移民政策は、極めて興味深いものがあった。


  • 中谷氏による報告

  • 会場の様子
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