「第三の生命:東アジア発の生命観は可能か」

報告者 小倉紀蔵(京都大学大学院人間・環境学研究科)
開催日時 2013年10月23日(水)15:00〜18:00
開催場所 むすびわざ館 4階会議室

報告の概要

 京都大学大学院人間・環境学研究科の小倉紀蔵教授をお招きし、「第三の生命:東アジア発の生命観は可能か」と題してご講演いただきました。(1)長年にわたり「難解」「論理一貫性に欠ける」とされ、誤った解釈をされてきた孔子の諸概念、特に『論語』に記されている考え・視点を解きほぐすこと、(2)その作業を通じて、彼の「仁」概念を「第三の生命」観として捉えなおすこと、の二点を軸として議論が展開されました。孔子の「論理一貫性のなさ」が何を意味するのかに焦点を当てる中で、孔子は普遍性の尺度から一貫して諸価値を判断するような演繹的思考ではなく、あくまで個々の「出会い」「現象」にその都度応答しその中から価値を浮かび上がらせる帰納的思考を重視したことが強調されました。そこから、孔子の「仁」概念を、上意下達型のシャーマニズム的視点ではなく、複数の人間の「あいだ」を重視するアニミズム的視点から解釈するアプローチが提示されました。西洋近代思想で前提とされてきた「生物学的生(第一の生命)」でもなく、超越論的に解される「精神的・霊的生命(第二の生命)」でもない、複数の人間の「あいだ」にその都度浮かび上がる生命が孔子の説く「仁」であり、これが「第三の生命」として位置付けられるという議論が展開されました。


  • 小倉紀蔵氏による報告

  • 研究会の様子
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