ワークショップ「台頭する中国の対外関係:エズラ・ヴォ―ゲル教授の来日を機会に」

開催日時 2013年9月16日(月・祝)15:00〜18:00
開催場所 京都産業大学 むすびわざ館 3F 3-A教室
報告者 スティーブン・ヤング経済人コー円卓会議事務局長 杉本孝京都大学教授

報告の概要

 本セミナーは、日本滞在中のエズラ・ヴォーゲル教授を招いての基調講演と、中国に造詣の深い有識者を招いてのパネル・ディスカッションによって、台頭する中国の対外関係についての踏み込んだ議論を企画したものであった。しかし、台風の京都直撃と言う予期せぬ事態で、北京から到着する予定だったヴォーゲル教授の来日がまる一日遅れ、「エズラ・ヴォーゲルのいないエズラ・ヴォーゲル講演会」という異例の企画となった。

 けれども、パネル・ディスカッションには、ヴォーゲル教授の最新作『現代中国の父・ケ小平』の翻訳者の一人杉本孝京都大学教授、及びスティーブン・ヤング経済人コー円卓会議事務局長が出席、東郷和彦世界問題研究所長の司会の下で、京産大の先生方をはじめ、本学の学部生、院生、関西の経済人、研究者、マスコミなど40人の参加を得、活発な議論を行うことができた。  杉本教授からは、まず、今回の訪日における講演のためにヴォーゲル教授が用意したケ小平についてのパワーポイント資料の紹介をふくめ、「改革開放」政策によって中国を変えたケ小平の一代記と、日中友好を徹底することによって中国の発展を図ったケ小平の壮大な考え方が紹介された。

 ついで東郷所長より、極端に悪化した日中関係の現状分析と、日中平和友好条約締結のころのケ小平時代の日中関係が、なぜいまここまで悪化したのか、日中百年の計をもって現状を以下に変えていくべきかという問題提起があった。

 最後に、ヤング氏から、@同氏が、大学卒業後、米国務省より南ベトナムに派遣され、当時の南越政権の民主化と統治に参画、南越政権の崩壊とベトナム統一以後は、アメリカの価値を信じて戦った旧南越避難民の保護と厚生につくしてきたこと、A中国に対しては、当時から、ベトナムから見た中国と言う観点からずっと観察し、建国3000年を通じて生き続けてきて中国人の変わらぬ思想の底流を観察し続けてきたこと、B台頭する中国はいま、歴史上初めてグローバルな海洋国として登場してきており、外部世界は、伝統的なものと現代に適応して生まれている中国人の思想を知ったうえで対処すべきこと、C伝統思想は儒教の中に現れているが、それは徳を中心とする孔子、秩序を重んじる墨子、「新儒教」ともいうべき朱子学や陽明学など様々な系譜があるが、中国のみが天に通じ、中国以外の文化・文明に天に対する直接のアクセスを認めない偏狭な中華思想の再興には気をつけねばならず、開かれた中国の伝統思想を勧奨する必要があること等の見解が述べられた。

 なお、セミナー終了後夕刻より、京都に到着したヴォーゲル氏及び東京からの参加が台風によって遅れたもう一人のパネリスト・シリウス・インスティテュート代表取締役船橋晴雄氏の出席をえて、世界問題研究所主催の夕食会で、引き続き活発な議論が続けられた。

  • 東郷和彦所長による開会挨拶

  • 杉本孝氏の報告

  • スティーブン・ヤング氏の報告

  • 会場の様子

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