現代日本の「世界」理解の問題−日本思想(京都学派)の可能性−
開催日時 | 2013年3月29日(金)9:40〜18:00 |
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開催場所 | 京都産業大学 むすびわざ館 4階会議室 |
プログラム
開始時刻 | 内容 |
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9:40 開会挨拶 | 東郷 和彦(世界問題研究所所長) 「根(哲学)・幹(国造り)・枝(外交)を統合する思想とは?」 |
9:50 発表者・質問者紹介 | 司会・森 哲郎(文化学部教授) |
10:00〜10:40 講演I | ブレット・デービス(USA ロヨラ・メリーランド大学准教授) 「西田哲学と異文化間対話 −新世界市民主義の可能性」 |
10:40〜11:00 代表質問 | 美濃部 仁(明治大学教授) |
11:00〜11:40 講演II | 遊佐 道子(USA 西ワシントン大学教授) 「海外からみた外交下手の日本:セルフ・コンフィデンス及び セルフ・アイデンティティー」 |
11:40〜12:00 代表質問 | 松本 直樹(京都府立医科大学) |
12:00〜13:00 昼食 | |
13:00〜13:40 講演III | 福井 一光(鎌倉女子大学理事長・学長) 「現代日本の世界理解 −一様性と多様性の間で」 |
13:40〜14:00 代表質問 | 秋富 克哉(京都工芸繊維大学教授) |
14:00〜14:40 講演IV | 氣多 雅子(京都大学大学院文学研究科教授) 「京都学派の可能性と限界」 |
14:40〜15:00 代表質問 | 岡田 勝明(姫路独協大学教授) |
15:00〜15:20 コーヒー休憩 | |
15:20〜16:00 提言 | 提言1. 植村 和秀(法学部教授)「ソフト・パワー」 提言2. 大熊 玄(西田記念哲学館)「将来の鈴木大拙」 提言3. 香西 克彦(京都建築専門学校)「日本の風景(建築論)」 |
16:00〜17:50 自由討議 | 討議参加者:世界問題研究所・所員の諸先生方・参加希望者 |
17:50〜18:00 総括・挨拶 | 東郷和彦・森哲郎 |
セミナー概要
哲学と政治学という異なった領域に属する研究者が一堂に会し、京都学派をてがかりとしつつ、現代日本の思想のありかたについて、緊迫した議論を行った。最初の報告者であるブレット・デービス氏(ロヨラ・メリーランド大学)は、従来の抽象的なコスモポリタニズムを批判的に論じつつ、西田幾多郎の「場所」および「文化」の概念を援用しながら歴史的・文化的文脈を生かした「異文化交流的」世界市民像を提示した。続く遊佐道子氏(西ワシントン大学)は、国の枠組みとしてトップダウンに押し付けられるステレオタイプ的アイデンティティーではなく、市民の交流を通じたボトムアップ型のアイデンティティー形成から真の「自信(セルフ・コンフィデンス)」が形成されると捉え、日本外交の向上へのヒントを模索した。第三報告者である福井一光氏(鎌倉女子大学)はグローバリズムにおける「フラット化」(普遍化)と「特殊化」(個別化)との緊張関係を描きながら「日本と世界」の関係性を描き出した。同時に今日の世界状況を考察するヒントとして「国連の根にある二律背反」(暴力の排除を目指しながらも加盟国の暴力に頼ること)という鋭い視点を提供した。最後のメイン報告者である氣多雅子氏(京都大学)は西田哲学における「個人的自己」「社会我」といった考えを整理しつつ、近代的主体とは異なる自己・主体の成立の仕方を明快に論じ、現代社会におけるその積極的意義を提示した。
後半部では前半部の議論を踏まえ、日本の「ソフト・パワー」が国際政治において持つ可能性、鈴木大拙の説く「自然」が持つ今日的及び将来的意味、風景(風土)と人間の「自己」との相互関係が今日的日本社会及び世界社会の理解にどのようなヒントを与えてくれるのか、といった根源的テーマのもとに活発な意見交換がなされた。
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東郷和彦所長による開会のあいさつ
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ブレット・デービス氏による報告
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遊佐道子氏による報告
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白熱する全体議論