第8回研究会「鈴木大拙と「日本的霊性」の自覚」

報告者 森 哲郎(文化学部)
開催場所 第2研究室棟第1会議室
開催日時 2012年2月22日(水)15:00〜18:00

報告の概要

 文化学部の森哲郎氏に「鈴木大拙と「日本的霊性」の自覚」と題してお話しいただきました。導入部では、鈴木大拙が「十牛図」*のなかの「第十の図」を「人(にん)と人との妙(=出会い)」として重要視していた点が触れられました。また大拙の生涯とその膨大な著作群について、その視野の広さと哲学的・宗教的洞察力の深さが特徴的であるとし、「外は広い、うちは深い」という言葉で評されました。次に、「日本的霊性」における「霊性」は精神とも理性とも異なるという点、西田幾多郎の「場所」の哲学と重なりを持つ点が確認され、同時に、戦時中の「神道」との鋭い対比がなされました。特に「大地性(と宗教の誕生との関係)」「妙好人」といった考えに焦点がおかれ、宗教における「具体性・個別性」と「普遍性」との関係が浮き彫りにされました。最後に、3.11以降の「自然と非自然(technologie)」の脅威という文脈の中で、「自然」(自ら然る)と「自由」(自らに由る)の問題を本来の意に即して考え直すべきではないかという深い問いが提出されました。

*「十牛図」は、禅において悟りを牛に例え修行の道程を表現するために用いた説明図として知られる。


  • 森哲郎氏

  • 研究会の様子
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