第7回研究会(1)「ヨーロッパ歴史的和解:2012年フランス共和国大統領選挙、治安政策の観点から」(2)ウィルソン政権と旧ドイツ領南洋諸島の委任統治問題」

報告者 (1)浦中千佳央(トゥールーズ第一大学キャピトル警察学研究所)
(2)高原秀介(外国語学部)
開催場所 第2研究室棟第1会議室
開催日時 2012年1月25日(水)14:30〜18:00

報告の概要

 フランス・トゥールーズ第一大学キャピトル警察学研究所より浦中千佳央研究員にお越しいただき、「ヨーロッパ歴史的和解」というテーマについて「2012年フランス共和国大統領選挙、治安政策の観点」からお話しいただきました。まずヨーロッパの警察・刑事司法協力の史的変遷が概観され、移民やマイノリティの問題を含む幅広い刑事司法枠組みがEU規模で形成されてきたこと(2010年のストックホルム・プログラム等)が論じられました。また、EU加盟各国間における制度的な違いも明らかにされました。次に、これまでの大統領選挙において治安問題が各候補者の得票率にどう影響を与えていたのかが分析され、2002年選挙以降に治安政策に関する多くの法律が成立してきたことが指摘されました。最後に、現在社会党が治安対策に弱いというイメージの払拭を図っており、また政権党UMPも不法外国人の摘発を強化するなど、左右派共に選挙を意識した治安政策を進めている点が確認されました。

 続く高原秀介氏は「ウィルソン政権と旧ドイツ領南洋諸島の委任統治問題」と題して、委任統治案に対する米・英・日それぞれの構想・反応を比較分析しました。まず、米国内においても旧独南洋諸島をめぐる戦後構想が多様であったこと、日本の「南進論」が米国の構想に影響を与えたことが確認されました。次に委任統治の形成が触れられ、ウィルソンの「非併合・民族自決主義」案と列強諸国の「併合主義」案との衝突に対し、解決案として「スミッツ案」が提出された点、ウィルソンはその案を自分流に拡大解釈した点が指摘されました。委任統治案に対する英米日の反応として、(1)米国は旧来の帝国主義的「解決策」は望まず、国連の機能を最重要視する姿勢を、(4)英国は帝国の存続を視野に入れつつも国際連盟支持を視野に入れた対米協調の姿勢を、(3)日本は赤道以北の南洋諸島にのみ関心を集中させる姿勢を、それぞれ示したことが明らかにされました。最後に、「スマッツ案」をめぐる攻防の中で日本の要求が列強諸国・英自治領の利害関係と密接に結びつくことでウィルソンの構想が妨げられたという結論が引き出されました。


  • 浦中千佳央氏

  • 高原秀介氏
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