第1回研究会(1)「国民参加・住民参加と行政活動」
(2)「日本知識人の外交と『東アジア共同体』」

報告者 (1)芦立秀朗(法学部准教授)、(2)滝田豪(法学部准教授)
開催場所 第2研究室棟第1会議室
開催日時 2011年4月27日(水)15:00〜18:00

報告の概要

 最初の報告者である芦立秀朗氏は、「行政に参加することにはどのような意味があるのか」という問いを立て、「ネットワークによるガバナンス」という視点から政治参加を分析しました。まずガバナンスの類型整理がおこなわれ、その上で「手段としての参加(政策実施への参加)」と「目的としての参加(意思決定への参加)」が分類されました。特に後者の尺度となる「信頼」とネットワークをつなぐ概念として、「社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)」が提示されました。また、前者の問題点として(1)行政主体の自立性、(2)援助行政の中の「国益」の定義がそれぞれ曖昧である点、後者の問題点として「参加」と行政との間に依然として距離がある点、が指摘されました。最後に、「ネットワークによるガバナンス」が政治過程の変化にどんな影響を及ぼすのかという今後の課題が確認されました。

 滝田豪氏は、「東アジア共同体」言説をより広い外交論の文脈から考察することを念頭に、日本知識人の分類を論じました。永井陽之助やマイク・モチヅキによる「外交論の四類型」が援用され、(1)政治的リアリスト、(2)平和主義者、(3)日本型ゴーリスト、(4)軍事的リアリストの類型が明確にされた上で、それぞれにおける「アジア共同体」論が検討されました。政治的・安全保障的共同体よりも経済的共同体を重視する(1)、米国覇権的グローバルスタンダードに対抗する意味合いでアジア共同体を重視する(2)、自立型で経済より軍事を重視し、東アジア共同体に批判的姿勢が多い(3)、日米同盟を重視し、東アジアに冷淡的姿勢の多い(4)という分類により、外交論の中の東アジア言説が整理されました。同時に、それぞれの内部における主張の多様性も明らかになりました。

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