第7回研究会(1)「グローバル化・帝国化・国民国家」、(2)「フランスの共和主義と歴史認識問題:いくつかの簡単なスケッチ」

報告者 (1)溝部英章(法学部教授)
(2)中谷真憲(法学部准教授)
開催場所 第2研究室棟第1会議室
開催日時 2011年2月22日(火)15:00〜18:00

報告の概要

 第1報告者の溝部英章氏はこれまでの論考・著作を発展させる形で、21世紀における「国民国家」の「帝国化」について分析されました。中国がその最たる具体化として提示され、日中戦争までの日中政治経済状況が整理された上で、それ以降の中国の「二重経済」構造が分析されました。とりわけ農業(伝統部門・内陸部)と非農業(近代部門・沿岸部)の産業格差・乖離という「二重経済」のジレンマに焦点が置かれ、対内よりも対外的な成果に正当性根拠を求める改革開放路線がその克服になるのかという問いが投げかけられました。最後にしかし、都市部と農村部の格差の固定こそが中国の発展を導いたのであり、それは共産党政権の強権によってはじめて可能であったことを指摘して、中国は今後も「奇形帝国」という「帝国化」を歩む可能性があるという指摘がなされました。

 第2報告者の中谷真憲氏は、「フランスの共和主義と歴史認識問題」というテーマについて、フランスの移民政策と植民地問題の関係性を軸にしながら報告されました。まず、共和主義、移民問題、植民地問題のつながりが整理された上で、植民地の記憶の問題とアルジェリア戦争の処理の仕方との関係が分析されました。特に、引揚者法など一連の戦後処理法の変遷を見つつ、そこにどのように共和国意識が反映してきたかの分析に焦点が置かれ、その中で記憶の問題と政教分離の関係性に関する議論が激化してきた点も浮き彫りになりました。最後に、第二次大戦以降の「左翼的」良心のシンボルであったギイ・モケを「フランス」の英雄へとシフトさせる近年の動向が紹介され、植民地の記憶の忘却に対する批判も、(宗教的・民族的)不可分性を前提とする共和主義の枠組みそのものを問うことができない点が確認されました。

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