第6回研究会(1)「『生政治時代』における対抗的公共空間の可能性」、(2)「ナチズムの『過去』からナチズムの『現在』へ」

報告者 (1)宮崎寛(世界問題研究所RA、龍谷大学国際文化学研究科)
(2)川合全弘(法学部教授)
開催場所 第2研究室棟第1会議室
開催日時 2011年1月26日(水) 15:00〜18:00

報告の概要

 第1報告者の宮崎氏は、「自律」的に「(社会の)生・健康状態」を管理するよう促す作用を持つ「生政治」の視点から、近年隆盛のグローバル市民社会・公共圏論を再考する試みを行いました。前半では、(1)市民社会は自律性やエンパワーメントなどの側面を持つと同時に、特定(既存)の基準で一方的に地域・国の「健康管理」状態をランク付けする「序列化」メカニズムと整合性を持つ点、(2)何が政治的アジェンダになるべきで何がそこから排除されるのかという線引きの政治性が市民社会にも働いている点、が指摘されました。後半ではH.アレントの公共性論に依拠しつつ、単一の結論を目指す議論モデルではなく、議論の進行・結論の「予測不可能性」やアクターの多様性に基づいた公的議論空間を形成する必要性が強調されました。

 第2報告者の川合全弘氏は、「ナチズムの『過去』から、ナチズムの『現在』へ」と題した報告の中で、「革命勢力としてのナチズム」をキー概念としながら、ナチズムと「現在」との関係を分析する視座を提示しました。(1)現在による過去の克服(リヒャルト・フォン・ヴァイツゼッカー)、(2)人格の住処としての過去の記憶への固執(マルティン・ヴァルザー)、(3)過去の裏返しとしての現在への批判(カール・ハインツ・ボーラー)、(4)過去の再現前による空虚な現在の震撼(ボート・シュトラウス)、の4つの視座が整理された上で、「革命勢力としてのナチズム」の研究史が紹介されました。その代表例として5つの作品が紹介され、なかでもフランク=ロタール・クロル著『イデオロギーとしてのユートピア:第三帝国における歴史思想と政治行動』の読解を通じて、ナチ・イデオロギーの中心にあった「刷新」思想を、その時代経験や芸術的・文化的雰囲気、歴史イデオロギーとの関連において解明していく必要性に焦点があてられました。

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