第5回(特別)研究会「日米中関係の現状、問題、対策」

報告者 (1)劉鳴(上海社会科学院アジア太平洋研究所副所長)
(2)高蘭(上海社会科学院アジア太平洋研究所北東アジア研究室主任)
開催場所 第2研究室棟第1会議室
開催日時 2011年1月19日(水) 9:30〜12:00

報告の概要

 上海社会科学院アジア太平洋研究所より劉鳴氏、高蘭氏をお招きし、「日米中関係の現状、問題、対策」についてご講演いただきました。まず劉鳴氏は、「東北アジア安全保障メカニズムのモデル」を描く際に重要なポイント、現在直面している課題、これからの展望について詳細に述べられました。はじめに、東北アジアの安全保障メカニズムを考える上で、OSCE(欧州安全保障協力機構)などのモデルと経験を参考にしつつも、その機構ができたヨーロッパ的背景と現在の東アジア状況との違いを考慮する必要性が明らかにされました。また、メカニズムの成否は(1)一定の短期的・中長期的目標の設定、(2)大国間の戦略的な信頼関係と二国間同盟の問題、(3)リーダーシップの問題、(4)6カ国あるいは7カ国からなる安全保障メカニズムに先立って生じている小型の(日米韓)多国間安全保障メカニズム、という4点の問題解決にかかっている点が触れられました。最後に、日中韓三国の関係改善と組織化の進展が、より大きな安全保障メカニズムの構築の第一歩となる点が確認されました。

 続く高蘭氏は「Energy Cooperation between China and Japan and Construction of “East Energy Community”」という題目のもと、東シナ海の石油・ガスにおける日中協力・開発の影響と見通しについて講演されました。まず日中露三国はエネルギー協力において補完関係にある(露は資源、中は労働力、日は資本・技術をそれぞれ持つ)点が指摘され、2004年以降の日中間で加速した資源「競争」から、「協力」関係へとシフトさせることが重要である点、また事実その流れが形成され始めている点が確認されました。特に技術協力の観点から、(1)海上輸送の安全保障協力、(2)日本におけるエネルギー産業技術の発展過程が参考になる点、(3)省エネ部門の技術協力、の3点がもっている可能性に焦点があてられました。最後に、日中間のエネルギー協力関係の成熟は、東アジアにおける「エネルギー共同体」構築に向けての大きな貢献になるという展望が描かれました。

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