2023(令和5)年度 学校法人京都産業大学「サギタリウス基金」卒業生顕彰式を実施

2023(令和5)年11月12日(日)、本学神山ホールにて令和5年度 学校法人京都産業大学「サギタリウス基金」卒業生顕彰式を挙行しました。顕彰式には同会場で実施された同窓会総会出席者の皆様にもご臨席いただきました。

大城光正理事長によるご挨拶

卒業生顕彰制度は、学校法人京都産業大学が創立50周年を機に、「国の内外を問わず社会の諸分野において活躍し、社会的貢献を果たし、顕著な業績をあげ、本学の名声を高めた」卒業生に対して顕彰するものです。2023(令和5)年度は、本年、人間国宝(重要無形文化財保持者)に認定されるという快挙を成し遂げられました、狂言方大蔵流 茂山七五三 氏(本名 茂山眞吾氏 1970年経済学部卒業)に「荒木俊馬賞」を、また、「サギタリウス賞」には、長年にわたり京都の印刷産業全体の振興への貢献により、昨年、旭日双光章を受章されました、中西印刷株式会社代表取締役会長で京都府印刷工業組合顧問でもある中西隆太郎氏(1974年経営学部卒業)にお贈りしました。顕彰式では、大城光正理事長より顕彰盾などが贈呈されました。この顕彰盾は、本学文化学部教授であり、瑞宝単光章、現代の名工・卓越技能章等、多数の受賞歴がある京蒔絵師・下出祐太郎氏の作で、書は本学職員OB、書道部OBでもある坂之上茂氏によるものです。

  • 荒木俊馬賞:茂山七五三 氏(大蔵流狂言師:1970(昭和45)年 経済学部卒)
  • サギタリウス賞:中西隆太郎 氏(中西印刷株式会社 代表取締役会長:1974(昭和49)年 経営学部卒)
顕彰盾の贈呈(左から、大城光正理事長、茂山七五三氏) 
顕彰盾の贈呈(左から、大城光正理事長、中西隆太郎氏)
写真左から、大城理事長、茂山七五三氏、中西隆太郎氏
受賞者と理事長、学長、副学長、社会連携センター長

「礼を尽くし、先輩に教えを乞う気持ちを大切に」茂山 七五三氏インタビュー

2019(令和元)年の本学卒業生顕彰「サギタリウス賞」の受賞に続き、このたび「荒木俊馬賞」の顕彰者として選出されたのは、狂言方大蔵流 茂山七五三氏(本名、茂山眞吾氏。1970(昭和45)年経済学部卒業)です。本年、人間国宝(重要無形文化財保持者)に認定されるという快挙を成し遂げられました。海外公演をほぼ毎年行い、京都市の姉妹都市であるチェコのプラハ市において狂言を普及するなど、狂言を通じて国内外に京都の魅力を発信されています。伝統を重んじながらも新作狂言への挑戦や落語家との共演興行など、古典芸能に新たな視点を取り入れた活動も行っている茂山氏。受賞のお喜びの声と共に、これまでの歩みや在学生へのメッセージを伺いました。

——卒業生顕彰「荒木俊馬賞」を受けられたお気持ちをお願いいたします
我が母校からこうした賞を頂戴できるとは夢にも思いませんでした。大変ありがたいことです。今後もこれを励みとして、本学で学んだことを礎に、狂言の道に勤しんでいきたいと思っています。

——本年は、人間国宝(重要無形文化財保持者)に認定されるという輝かしい功績も挙げられました
こちらも予想すらしていなかったことです。2歳から狂言を始めましたが、私は二人兄弟の次男坊で、兄を支えるというのが自分に与えられたことでした。兄は先に亡くなりましたが、今でもそう思っています。人間国宝という肩書きをいただいても礼を尽くし、自分の立場を十分に考え、先輩には教えを乞うという気持ちを大切にしています。

——学生時代の思い出をお聞かせください
私は2期生で、時代は学生運動の真っ只中でした。ある時、どこかの大学に部隊が集結して私たちの大学に攻めてくるという噂が立って、「大学を守ろう」と学校に泊まり込んだこともありましたね。伝統ある近隣の大学には負けないぞ、という気持ちは持っていました。そんな時代で周りの大学が休校になる中でも、私たちの大学は影響があまりなく、無事に講義を受けることができる環境で幸せだったと思います。所属していた剣道部の活動も思い出深いですね。やはり試合でも「他の大学には負けたくない」という気持ちが強くて、それが愛校精神につながっていったのかもしれません。部の仲間とは今もつながりがあります。同期生は何かあったら連絡をくれますし、培った友情を守ってくれているのはありがたいですね。

——ご卒業後は地元の信用金庫にお勤めになられながら、土曜日、日曜日に狂言師として舞台に立つという活動を18年間続けられました
次男ですので、卒業当時は狂言だけでは生活できないということでした。地元の信用金庫に勤めましたが、父からは「狂言はやめるな」と固く固く言われておりましたので。「二足のわらじ」はしんどい時もありました。「あの人はお勤めしたはるから」という声が遠くから聞こえてくることもあった。「舞台は下手や」ということですよね。自分が何のために狂言をしているのか、勤めているのかわからなくなるくらいなら両方をしっかりやろうと、職場の昇格試験も頑張りましたし、狂言も難しいものがあれば仕事が終わってから父に習いに行きました。そんな生活を18年間続けましたね。私の子どもが成人近くなった時、狂言の道をつけてやるのは今だろうと、体力のことも考えて40歳で区切りをつけて狂言師一本で行くと決めました。退職してからも、勤めていた経験は役に立ちました。能や狂言の世界を外の視点から見ることもできます。金融機関は1円間違ってもいけないし、今、何をやるべきかというその都度の判断も培われました。狂言でも、どんなことがあってもこの舞台だけはしっかりやろうと、そんな気持ちにもなりましたね。

——京都産業大学で、学生に講義をされていらっしゃいますね
京都の狂言のルーツや古典芸能、まちの文化などを教えてきました。せっかく京都のいい大学にきたのですから、食べ物や生活習慣など、この土地の特別なものを学んでほしいです。故郷に帰られても、就職されても必ず役立つと思います。何をとっても京都は、明治くらいまでは最前線の土地だった。都もあったし、ここで千年近く培われたものは、これから千年経っても崩れないんですよ。それを守るのは、やはり京都の人間であり、京都を知った人の責任です。私も、講義を機会にして大学に行けるというのは大変うれしいですね。その都度、先生方もお変わりになっているし、学生さんの気分的なものも変わっていますが、それをじかに感じられる。大学とお付き合いができて、新しいことを自分の知識にできますので。

——最後に、在学生へのメッセージをお願いします
学生時代に、一生離れないような友人を作っていただきたいです。そして、京都産業大学という良い環境で学んだということを誇りにしてください。今、何をすべきか、与えられた機会を絶対に逃がさないように、自分自身を信じて、仕事や家庭に生かしていってほしいと思います。

「変化に未来を求めて」中西 隆太郎氏インタビュー

このたびの卒業生顕彰で「サギタリウス賞」に選出されたのは、中西印刷株式会社代表取締役会長で京都府印刷工業組合顧問でもある中西隆太郎氏(1974(昭和49)年経営学部卒業)です。同社の経営に携わりながら、長年にわたり京都の印刷産業全体の振興に貢献され、昨年、旭日双光章を受章されました。また、印刷業界の大変革の時代にあって、海外の最新デジタル技術を国内で最初期に導入するなど生き残りをかけた変化と挑戦を続けてこられました。本学同窓会でも会長を経て現在は顧問を務められるなど、同窓会の発展にも尽力いただいています。受賞のおよろこびの声のほか、これまでの歩みや在学生へのメッセージをご紹介します。

——卒業生顕彰「サギタリウス賞」を受けられたお気持ちをお願いいたします
このような素晴らしい賞をいただけることに感謝しております。受賞のお知らせをいただいた時に、これまでの受賞者を拝見したところ、当然のことながらアサヒビールの泉谷直木さん(現アサヒグループホールディングス株式会社特別顧問)がおられました。私が大学の同窓会会長をしていた時に、泉谷さんはアサヒビールの常務になられたんです。そこで、同窓会枠の大学評議員をぜひお願いしたいということでアポを取り、浅草の本社へ伺いました。応接室で出迎えてくださった泉谷さんに評議員のお話をしたところ、「願ってもないことです」と快諾いただきました。こうした思い出もある泉谷さんもお受けになられた賞を私もいただけるというのは、大変光栄なことで、ありがたく思っております。

——学生時代の思い出をお聞かせいただけますか
実は、私は大学時代に大失敗をしています。高校の時に初めて乗ったヨットが好きになり、大学ではヨット部に入ろうと決めていましたが、入学して新入部員を募集する歓迎イベントで探したところ、部がないんですね。あったのはヨット同好会。ちょっと拍子抜けして入らなかったんですけど、これが大失敗でした。というのはやはり、学生時代というのは、同じ世代の仲間が集まって一つのことをとことん追求できる時なんです。その時はまだ私も神山スピリットが足りなかったのかな。いまだに後悔しています。京都産業大学のヨット部はアテネオリンピック日本代表で銅メダルを取った轟賢二郎くんや、アメリカスカップに参加した南波誠さんが出身なんですよ。

——同窓会会長を経て、現在は顧問をお務めですね
友人に頼まれて最初は会計監査だけ務めていたのですが、その後理事になり、そして、たまたま選挙で通っていきなり会長をさせていただくことになりました。2期6年でアドバイスもいただきながら貴重な体験ができました。日常で卒業生に出会っても仲間意識を持ちますね。京都産業大学出身というだけで、すぐに親しくなる。「おぉ、君、産大か!」という感じでうれしくてね。ワンキャンパスですから、「同じ坂を登っていたのか」「私もあの先生知っていますよ」とか、そんな一体感があります。後輩に対してもそうですし、先輩からもそんなふうに接していただいた。本当にいい大学だと思いますね。

——会長を務めていらっしゃる中西印刷株式会社は、慶応元年(1865年)創業の伝統ある企業ながら、印刷業界で革新を続けていらっしゃいます
我が社の社是は、「印刷を通じて文化学術の発展に貢献する」。大英図書館にも収蔵されているようなさまざまな学術図書を印刷しています。最先端の研究をされている先生方がお客様ですから、変化も早い。当然、技術と業務両方の革新をやっていかないとお得意樣としてお付き合いができなくなります。私が入社してから、活版からオフセット、電算写植の導入、デジタル印刷への挑戦、現在のオンラインジャーナル(※インターネット上の学術誌)の習得と、目まぐるしく変わってきました。オンラインジャーナルは、当初日本では一般的ではなく、この技術を全面的に採用していた英国のオックスフォード・ユニバーシティ・プレスと1999年に提携契約を結び、技術者に来日してもらいました。弊社は英文の雑誌も多く手掛けていますので、英会話に堪能な社員がおりました。コンピュータに長けている者とチームを組んで、なんとか技術を習得し、世界で初めて日本語のオンラインジャーナルを始めることができました。

——新しいものを取り入れていくのは、挑戦でもありご覚悟も必要だと思います
老舗と言うと、古いことばかりやっていると思われがちですが、実は常々変わっていないと今がないわけです。古いことだけやっていたらとっくに消滅しています。そういう意味で過去から変化し続けるのは当たり前なんですね。必死でやってきましたから、当時はそんな大層なことは考えていませんでしたが、ニーズに対応している内に現在のようになりました。京都府印刷工業組合創始130年記念式典のスローガンに私が提案した「変化に未来を求めて」が採用されましたが、まさに変化しないと未来は来ないのです。

——最後に、在学生へのメッセージをお願いします
学生である今できること、今しかできないことは何なのか、そして目の前にあるチャンスを逃がさないようにしてほしいです。私は学生時代に(ヨット同好会に入らずに)失敗しましたので(笑)。今しかできないことは何なのかをしっかり考えて実行に移し、チャンスをつかんでください。

神山の絆について

「神山の絆」は、卒業生と本学との絆を一層強固にする一環として卒業生向けに発信しているコンテンツです。母校、京都産業大学がより身近なものになればと願っています。これからも、WebサイトやFacebook等を通じて、京都産業大学と卒業生の皆さまとの“絆”をむすぶコンテンツとして、在学生・卒業生の活躍や本学の教育・研究成果などの学内のホットなニュースを随時お届けします。

PAGE TOP