「今を大切に!」頚椎損傷から復活を目指すラグビー部の中川将弥さんが「共生社会の実現」をテーマに講演

2019.07.19

中川さんを紹介する大西教授
京都産業大学ラグビー部の元主将の中川 将弥さん(経済・4年次)は、2017年の関西リーグ最終戦で一時は全身不随となる大怪我を負いました。しかし、中川さんは「ラグビー選手として復帰する」という目標を掲げて懸命にリハビリに励み今春から復学。現在は、寮で部員と共同生活をしながら自身のリハビリと後輩の指導にあたり、復帰に向けて充実した毎日を過ごしています。

その中川さんが、今年度末で定年退職するラグビー部監督の大西 健 教授が担当する授業『スポーツと人間形成』の最終講義にゲストスピーカーとして登壇し、同世代の学生たちに「共生社会の実現」をテーマに講演しました。この授業は、2009年に開講して以来、オリンピック金メダリストや元メジャーリーガーなど延べ112名のゲストが講演し、スポーツを通じた人間形成について様々な視点から学ぶことができることから、今年度も300名を超える学生が受講している名物授業です。

中川さんは小学1年の時にラグビーと出会い、中学で全国優勝、高校2年時に全国大会準優勝など輝かしい成績を残してきました。3年で主将を任され「先輩の上をいく」という目標を掲げたものの県大会決勝で敗退。ラグビーを続けるか悩んでいた時に、大西監督から声をかけてもらい、二つ返事で入学を決めたと当時を振り返りました。

本学への入学後は練習が厳しかったことから、頑張る気持ちよりも辛い気持ちが強くなり集中力が途切れて怪我をしたこともありましたが、気持ちを入れ替え、怪我から復帰した後はレギュラーとして活躍。3年次の全国大会で一度も勝ったことが無い明治大学から劇的な初勝利を挙げ、試合に勝って初めて泣いたと笑顔で語りました。 その後、新チームの主将になり「先輩の上をいく」、「泣かない」、「勝ちにこだわる」を目標に掲げてチームを引っ張りました。勝てない時期が続きましたが、夏合宿を経てようやくチーム力が向上。リーグ戦5勝1敗で全国大会出場を決め、最終戦に臨みました。

最終戦は、全国大会に向けて弾みをつける負けられない試合と位置づけていましたが、相手ペースで試合が進んだため流れを変えようとボールを持って相手に突っ込んだ際に大怪我をしました。怪我をした瞬間は何が起こったのかわからず、足を触られても感覚が無いことが怖くなり、また病院で医者から「首から下が動かなくなる」と家族と監督が説明を受けているのが聞こえ、「泣かない」と決めていたのに泣いてしまいました。
学生に思いを語る中川さん
手術後の約40日間は全く動くことができず、とてもつらい毎日を送りました。その後のリハビリでは起き上がることもできず、貧血を起こして気を失い倒れることを繰り返しました。そんな中川さんが厳しいリハビリに耐え、乗り越えることができたのは、毎日多くの仲間がお見舞いに来てくれたからで、怪我から仲間の大切さや人の優しさ、温かさを感じることができました。中でもライバルチームの主将が中心になって作った千羽鶴をもらった話を披露し、各チームがプライドを持っているジャージカラーで作られた千羽鶴をもらった時は、嬉しくて感動したと語ってくれました。

リハビリを続けていくうちに少しだけ左半身が動くようになり、左手でできることは何でもやろうと挑戦を始めました。「勇気」を持って一歩踏み出したことで前に進むことができ「チャンスがあれば勇気を持ってチャレンジすること」の大切さを感じ、その思いを受講生に強く伝えていました。また、怪我をしたことで当たり前のことが当たり前でなくなり、外に出られること、外の空気がおいしいこと、周りの人が声をかけてくれることなど、些細なことでも嬉しく感じられるようになり、今まで気づくことができなかったことにも気づけるようになり感謝できるようになりました。

最後に中川さんは、同世代の学生たちに向けて、「今はラグビー選手として復活するという目標に向かって夢中に頑張れているので、怪我をする前よりも充実した毎日が送れている。人生は何が起きるかわからないし、悔いを残してもらいたくない。みなさんには、今を大切に生き、何事にも勇気を持ってチャレンジできるようになってもらいたい。それができれば人生を変えることができる」と語りました。
受講した学生からは、「これまでは車椅子の方を見かけたときに手伝っていいのか悩む自分がいたが、中川さんの話を聞いて積極的に自分から声をかけられるようになりたいと感じた」、「今まで意識できていなかったが、共生社会を意識できるようになりたいと思った」、「今を大切にし、中川さんの話をみんなに話したいと思った」との感想が聞かれました。

講演後、大西教授は「みんなで共生社会をどのように作り上げていくのかは、大きな社会問題である。みなさんのような若い世代の人がどのような意識を持つかによって、将来の日本社会は変わります。今日の話をきっかけにしてみなさんの意識も変わってほしい」と出席した受講生にメッセージを伝えました。 また、「彼はいつも明るく前向きに行動し周りの人にパワーを与えているが、彼も人知れず悩み、泣き、苦しみもがいている。それでもそのような姿を人に見せることはできない。そうして彼を強くし成長させているのも、スポーツの力だと思う」と最後の授業を締めくくりました。
全体練習後のトレーニングにも最後まで付き添う
試合では選手にアドバイスを送る
20kgまで落ちたベンチプレスはリハビリにより90kgまで回復
寮の食事
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