IoTによるバス安全運転支援システムを開発、大規模実証実験を開始~車両と運転手の状態と道路情報の分析から、事故の危険を未然に察知~

京都産業大学(コンピュータ理工学部 秋山 豊和 准教授)、大阪電気通信大学、京都大学、株式会社社会システム総合研究所は、総務省戦略的情報通信研究開発推進事業(SCOPE 受付番号150201013)の委託を受けて実施する「走行車両からのセンサデータを収集・処理するための階層化クラウドとその応用に関する研究開発」において、みなと観光バス株式会社と株式会社電通国際情報サービスと共同で、階層化クラウド型通信を用いた安全運転支援システムを開発しました。システムを営業稼動する30台の路線バスに適用し、2016年12月からバス運転士の呼吸・脈拍や車両状態を計測する実証実験を行います。

本システム開発の背景と概要

本システムは、京都産業大学、大阪電気通信大学、京都大学、株式会社社会システム総合研究所が、(総務省戦略的情報通信研究開発推進事業SCOPE 受付番号150201013)の委託を受けた「走行車両からのセンサデータを収集・処理するための階層化クラウドとその応用に関する研究開発」の取り組みの一環として開発するものです。

近年、運転手の健康上のトラブルに起因する交通事故の発生が社会の大きなリスクとなりつつありますが、これまでの安全運転支援システムは、車両の挙動のみに焦点を当てるものが一般的でした。本システムは、車両の走行状況に加え、運転手の健康状態もセンサによる計測・蓄積・分析の対象とします。さらに、それらセンサデータと、道路の形状/勾配/整備状況など道路情報を組み合わせた分析を行うことで、車両の危険状態をより細やかに検知することを可能とします。本システムが危険と検知した場合、運転手にすみやかにフィードバック(視覚による警告)を行います。

本システムの3つの特徴

図:本システム(安全運転支援システム)の概要

1.多種多様なセンサを設置

車両に設置したセンサにより、車両の位置情報のほか、加速度、車速、エンジン回転数、累計走行距離、ブレーキの操作状況、冷却水温度等の情報を収集します。運転席の背面に設置した非接触の生体センサでは、運転士の心拍数や呼吸状態を計測します。

2.運転事例データベースとの連携による

センサから収集されたデータは、道路20m(交差点付近は5m)ごとの車線数、歩道整備状況、勾配、道路縦断線形などの道路情報と組み合わせて、「運転事例データベース」としてクラウド上に蓄積されます。リアルタイムデータとマッチング解析を行うことで、過去の運転状況との比較による危険状態の検知や、事故発生リスクの高い地点の検出を行います。

3.階層化クラウド型通信システム

本システムは、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が運用する大規模スマートICTサービス基盤テストベッドJOSE(*)上に開発されており、通信およびデータ処理は、求められる反応速度や保持すべきデータの要件にあわせて、階層化した構造の各レイヤで最適に行われる仕組みとなっています。運転事例データベースとのマッチングが必要な処理には車両とクラウドを結ぶ通信を行う一方、緊急時のリスク判断・警告等の処理は、エッジコンピューティング技術により、車載のIoTデバイスが単独で行えるようにしています。

(*)JOSE(Japan-wide Orchestrated Smart/Sensor Environment) は、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)が運用する大規模IoTサービスの実証ができるセンサ・クラウド基盤で、専有利用・カスタマイズが可能な大規模ネットワーク・サーバ設備、設置が容易な無線センサ設備、および、実環境のセンサデータが利用可能なオープンテストベッドです。

京都産業大学の役割

本システムにおいて、リアルタイムにバス情報を収集するスケーラブルなデータ収集基盤を構築するため、IoT向けのプロトコルMQTTをベースにP2PのオーバレイネットワークプラットフォームであるPIAXを活用したデータ収集分析基盤を構築しています。また時系列データベースを活用してインタラクティブなデータ可視化が可能な分析システムを構築しています。

実証実験の概要

期間 2016年12月~2017年1月
対象 みなと観光バスが運行する30台の路線バス
地域 神戸市周辺
目標 合計6万キロ以上の実証走行

今後の展望

本実証事業を担当する各機関は、今回の実証実験で得られる知見を元に、将来的には自動運転技術への貢献を視野に、本システムの本格稼働に向けた改善活動を実施します。
お問い合わせ先
大阪電気通信大学 広報部広報課
Tel.072-824-3325
kouhou@mc2.osakac.ac.jp
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