平成27年度 学部授業・カリキュラム改善に向けた「年間報告書」

1.「学習成果実感調査」についての分析結果

平成27年度に学習成果実感調査を実施した春学期29科目および秋学期35科目では、科目の満足度(設問6)の平均値は、それぞれ3.94(最低3.02、最高4.68)および3.88(最低3.14、最高4.67)であり、著しく満足度の低い科目(評点3.0以下)はなかった。今年度の課題とした「事前事後学習の充実」については、これに充てた時間(設問3、7段階の評点)に関する評点の平均値が春学期で2.03(60分程度)、秋学期で2.20(65分程度)であった。さらに詳細に見てみると、春学期実施科目において事前事後学習を行った時間が90分以上であった学生の割合は平均11.2%(最小0%、最大38%)、30分未満であった学生の割合は37.6%(最小5%、最大73%)であった。秋学期実施科目については、事前事後学習が90分以上の学生の割合は平均13.5%(最小0%、最大31%)、30分未満の学生の割合は平均36.8%(最小8%、最大71%)であった。これらの結果から、一部(10%程度)の学生は自主的に事前事後学習を行う習慣を持つものと思われる。しかし一方で、多く(40%程度)の学生は、ほとんど事前事後学習を行わずに授業に出席していることが明らかである。ただし、そのような学生の割合が低い(10%未満)科目もあることから、教員の適切な指導や教授方法の工夫(課題やレポートの指示)により改善できる可能性があるものと考えられる。

2.「公開授業&ワークショップ」についての報告

(1)参加人数

  1. 「公開授業」:13人
  2. 「ワークショップ」:10人

(2)ワークショップでの意見交換内容

10月12日に松本耕三教授の公開授業「実験動物遺伝学」を参観した後、午後からワークショップを開催した。まず、出席者に当日の公開授業の感想を求めるとともに、授業担当教員への質問の時間をとった。「授業の中間で休憩時間を設けていることが、学生の集中力維持に効果的に働いている」という感想が多く出された。その一方で、「スライドの情報量が多過ぎる」、「板書の字が読みづらい、声が小さい」などの指摘も出された。また、moodleで資料をアップロードすることのメリットとデメリットについても意見が出された。  つぎに、本年度の課題としている「事前事後学習の充実」について、各教員に取り組みや工夫について紹介してもらい、意見交換を行った。「予習の課題を穴埋め資料として作成してmoodleにアップロードしている」、「毎回、小テストをmoodleにアップロードしている」、「教科書を指定し予習させ、毎回の授業で学生に質問する」、「英語の授業では、予習ノートのコピーを提出させている」、「次週の講義の内容を事前に伝え、下調べをさせて発表させている」などの取り組みが紹介された。全体として、事前学習の時間を確保させるための取り組みが多く紹介されたが、事後学習を充実させることの重要性についても指摘がなされ、その点について出席者と意見交換を行った。

3. 総括

(1)1. と2. において確認された、本学部の授業・カリキュラムの長所

本学部の授業は、学生の授業に対する満足度や学びの面白さなどの設問において5段階評価で平均4近い評価を受けており、学生から総じて良好な学習成果の実感が得られている。これは、各教員の担当科目に対する豊富な知識と熱意の表れであると考えられる。また、多くの授業で「スライドやプリントが有効に使われている」という感想が出されており、授業の進め方についても工夫がなされている授業が多いものと考えられる。「個人的に質問に行った際に、丁寧に対応してもらえる」という感想も多く見られ、学生と教員の距離が近い少人数制の教育のメリットが生かされているようである。  本学部のカリキュラムの特徴として、3学科ともに2年次秋学期から授業を担当教員が実験科目をリレー形式で担当していることも、授業に対する高い満足度と関連しているものと考えられる。授業で身に付けた知識の実践、あるいは実験の後での知識の再確認は、学生にとって学習が単なる机上の知識にとどまるものではないことを体感できる機会となっているはずである。

(2)1. と2. において確認された改善すべき点

本年度の課題としてきた「事前事後学習の充実」については、授業成果実感調査の結果から見ると十分な成果が得られたとは言えない。公開授業の後のワークショップでは、事前学習の時間を確保させるための取り組みについては、いくつかの具体例が出されたが、事後学習の励行のための取り組みについては依然として不十分であると考えられる。多くの知識量と高度な理解・判断力を要求される生命科学の専門分野における知識を身に付けるためには、事前学習に加えて授業で習った内容を確実に復習することが不可欠である。本年度の学習成果実感調査で明らかになった事前事後学習に充当している時間では、明らかに不足している。
しかしながら、事前事後学習を30分未満しかしていない学生の割合が数パーセントに過ぎず、逆に90分以上の時間を充てている学生の割合が30%を超える科目も見られる。このことは、授業の工夫によって事前事後学習の充実を可能にできることを示している。このような授業を担当する教員の取り組みや工夫について、公開授業やワークショップなどを通じて学部の全教員で共有できる機会を設けるべきであると考えられる。

4. 次年度に向けての取り組み

自然科学系の中でも、とくに生命科学の専門分野において要求される理解力や判断力は基礎知識の蓄積の上に養われる。ところが、本年度に実施した「学習成果実感調査」では、少数(10%程度)の学生を除いて、大多数の学生は基礎知識の習得と蓄積に不可欠な事前事後の自主学習に充てる時間が圧倒的に不足していることが判明した。 そこで、次年度は予習・復習を確実に励行させるための授業形態の工夫を目標として挙げる。具体的には、Moodle等を用いて事前課題を与え予習時間を増やすとともに、事後復習を徹底指導する、授業において小テストを実施する、さらに宿題を課しことにより学習到達度・理解度をこまめにチェックするなどの取り組みを、担当教員が実践することで学生の事前事後学習を習慣化するように努める。また、すでに事前事後学習の励行について効果をあげている教員の取り組みを、公開授業やワークショップを通じて学部教員全員に紹介する機会を設ける。
事前事後の自主学習の励行は、専門分野での研究遂行能力の向上につながることが期待される。また、当該科目の成績向上だけでなく、自宅や通学時間における自主学習時間の確保は学生に学ぶことを習慣づけさせる点において、極めて大きな意味を持つ。さらに、自然科学を学んだ学生に社会が要求する論理的思考能力を身につけさせる上においても、大きな効果を持つと考えられる。
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