令和4年度 学部授業・カリキュラム改善に向けた「年間報告書」

1.「学習成果実感調査」についての分析結果

全学共通の設問に関する結果について、全体的な傾向では、事前事後の勉強時間(設問3)が全学平均に比べ本学部平均が圧倒的に長い(たくさん勉強する必要がある)科目が多い。以前の全学での卒業時アンケートの集計結果でもこのような傾向は出ていたが、2022年度の春・秋それぞれの結果でも本学部全体では他学部に比べて圧倒的に勉強時間が長いことがわかる。その一方で、到達度(設問4)が全学平均よりも全体的に低めに出ている。これらから、他学部に比べ勉強時間が長い割に到達度は上がらない傾向がみてとれる。プログラミング演習科目に留まらず、計算機を用いた実践的な課題が多く出る科目が多数あることから、時間を使う割にはうまくいかない場面や経験が多いことが伺える。これらは、一概に悪いことではなく、試行錯誤を通じてより理解度を高めると共に、実践的なスキルを身に付けて行く過程で起こることと言え、その様子が数値化されていると見ることができ、本学部の学びの特徴が現れていると解釈できる。(他の理系学部との違いも比較したい)
他方、個別科目のデータをみれば、特定科目において、学部独自設問(理解度、より興味が沸くか、など授業評価に相当する設問が中心)の結果が低めに出ているものがある。それらは今後の授業改善の方策を立てる際の学部での情報共有に用いる。また、自由記述の回答について、特定の科目で具体的・客観的な意見として改善希望などが書かれており、それらも今後の改善点として学部で共有する。
今回の分析結果の総括として、全学共通設問においては学部の特徴が如実に表れたと言える。また、学部独自設問においては個別科目の状況や改善点が明らかになり、今後のよりよい学びに繋げて行くデータとして活用できる。

2.「公開授業&ワークショップ」についての報告

(1)公開授業とワークショップ

①公開授業:
  • 科目『プロジェクト演習』
  • 担当教員 岡田英彦・中島伸介・永谷直久・宮森恒
  • 実施日時/場所 2022年7月22日(金)15:00-18:15/オンラインおよび各クラスの発表用教室
  • 参加人数 4名

②ワークショップ:
  • 実施日時/場所 2022年7月6日(水)13:15-14:45/14113会議室
  • 参加人数 24名
  • ワークショップでの意見交換内容
    ☆コース制度における、各コースの要件科目等の見直し案について
    ☆プログラミング科目について

(2)その他研修会等

  1. 研修会:オンデマンド講義「大学の授業の設計」の視聴
    ・概要 立命館大学沖裕貴先生の『授業設計論I』の動画を視聴して意見交換
    ・実施日 2022年4月27日(水)13:15-14:45
    ・参加人数  20名
  2. コース制度を含む学部カリキュラムの改訂
    ・組込みシステムコースに関するコース要件科目(選択必修科目)を大幅に見直しを行い、より最近の技術事情にあった内容に構成し直した。これに伴い、メディア処理技術コースのコース要件科目も1科目変更を行った。
    ・情報システムコースについては、重要な要素技術(構成要素)の科目は多数あるが、「情報システム」としての概論もしくは総括的な位置付けの科目がないため、今後の課題点として改善していく必要がある。
  3. コース毎のカリキュラムマップおよびカリキュラムツリー作成によるコースの特徴の明確化・視覚化
    ・カリキュラムマップの各科目の要素が教員毎のまちまちの判断で多めになっている傾向を修正して、少なめにすることで、科目の特徴がよりわかる形にした。視覚化に関することまでは取り組めなかったが、コースの特徴は以前より出る形になった。
    ・カリキュラムツリーについては、コース毎の明確なものは作成できていないため、次年度に取りくむ必要がある。
  4. 留年率改善のための方策の検討、修学支援・学びの動機付けに関する取り組み(寺子屋やランチタイムトーク)の実施
    ・留年率については特段の方策は打たなかったが、コンピュータ理工学部から情報理工学部に変わり、大幅に改善されている。学びの動機付けとしては、寺子屋(修学支援)を対面とオンラインのハイブリッドで実施したほか、ランチタイムトークも対面実施を再開した。ただ、いずれも参加者数は伸びず、修学支援や学びの動機付けとして限定的な効果と判断している。今後はそれらの活用する旨を学生に周知していくことが必要と言える。

3. 総括

(1)1と2において確認された、本学部の授業・カリキュラムの長所
「情報理工」の名の通り、科学技術的側面を中心に据えた情報系カリキュラムであり、その分野の特徴(客観的勉強時間と主観的到達度)が出ており、カリキュラム全体としては学部当初の狙い通りの形であることが確認できた。海外の大学生の勉強時間や取り組み方と比較すれば、まだ勉強時間は少ないとも言えるが、国内の理工系学部としては真っ当な状況で、しっかりとした教育を進めている。

(2)1と2において確認された改善すべき点
個別科目の課題は学習成果実感調査の全学共通設問および学部独自設問それぞれから統計データとして確認できた。これらは、学部教員間で共有し次年度のFD活動として改善していく。またコース制度については、個別コースの改善や、カリキュラムツリーの作成などが今後の課題となっている。留年率については改善されているものの、コロナ禍後の通常状態での状況を注視しつつ、引き続き修学支援や学びの動機付け含めて取り組んで改善させていく。

4.次年度に向けての取り組み

  • 「学習成果実感調査」での全学設問「到達度」や、学部独自設問「より興味が持てるか」「授業工夫」などの項目について向上していくよう、学部教員間での情報共有と改善策の検討・実践を行う。
  • 各コースについての課題の洗い出しとコース内容の見直しを引き続き行う。
  • コース毎のカリキュラムマップの可視化およびコース毎のカリキュラムツリーの作成と学生達への公開する。
  • 修学支援および学びの動機付けに関する学生達への周知および活用促進する。
  • 社会では高度な情報系人材が必要とされていることに対し、学部としては大学院進学率の低迷が課題となってきており、先端情報学研究科に限らず他大学大学院への進学を含めて、学生達への進学プロモーションを学部として積極的に行う。
PAGE TOP