令和3年度 学部授業・カリキュラム改善に向けた「年間報告書」

1.「学習成果実感調査」についての分析結果

情報理工学部は令和3年度で完成年度を迎える。学習成果実感調査に関して、昨年度までは、初年次(1~2年次)と3年次以降の状況の違いを分析する目的から、2つのカテゴリーに分けて調査を行なっていた。その結果、「初年次科目」は「初年次科目以外」と比べて回答率が高いことや、「初年次科目」のシラバスの確認率において、春学期は低く、秋学期に高まることなど、一定の傾向が読み取れた。令和3年度は学部全体の状況を理解するために、年次の区別なく、調査を行った。
今年度は、春学期の実施率が88.00%、回答率が32.19%、秋学期の実施率が83.02%、回答率が18.90%であった(令和2年度は初年次科目とそれ以外の合算で、春学期の実施率が92.59%、回答率が22.54%、秋学期の実施率が81.97%、回答率が26.27%であった)。秋学期の回答率18.90%は、これまでの回答率と比較して、顕著に低い数値である。学習成果実感調査に回答する意義を、多くの学生が感じておらず、教員もその意義を伝えられていない状況にある。
出席回数に関して(設問1)、出席率80%以上と回答している学生は春94%、秋93%であった。履修にあたりシラバスを確認したかどうかを問う質問(設問2-1)に対しては、確認したと回答している学生は春93%、秋94%であった。アンケートに答えた学生は出席率が高く、また、シラバスを事前に確認する割合も高いことがわかった。
準備学習等の時間に関する質問(設問3)に対して、1時間30分以上の学生が春48%、秋59%であり、1時間以下の学生が春25%秋20%であった。履修した科目がコースの修得に有意義であったかを問う質問(設問5)に対して、そう思う・強くそう思うと答えた学生が春87%秋83%、そう思わない・あまりそうは思わないと答えた学生が春3%秋5%であった。これらのことから、アンケートに回答した学生は、準備学習にある程度の時間をかけており、コース修得を意識して科目を履修していることがわかる。
設問6(科目は有意義であったか)、設問7(積極的に取り組んだか)、設問8(内容を理解できたか)、設問9(成長を実感できたか)、設問10(興味が湧き、さらに学習したいと思ったか)、設問11(履修して良かったか)、設問12(教え方に工夫がみられたか)に対して、いずれも、ポジティブな回答が80%前後、ネガティブな回答が5%前後であった。これらのことから、アンケートに回答した学生層は授業に対する満足度が高いことがわかる。
昨年度から学習成果実感調査をWebで実施することになり、実施率と回答率が低下した。特に回答率は例年の半分程度に落ち込んでいた。今年度もこれらの数値が回復することはなく、秋学期の回答率18.90%は、これまでの最低であると思われる。アンケートに対して、学習意欲が高い学生層が回答したと推察され、授業への満足度など高い数値が得られた。一方、実施率・回答率が低下する傾向が継続しており、改善することが要望される。

2.「公開授業&ワークショップ」についての報告

(1)公開授業とワークショップ

①公開授業:
  • 科目:基礎プログラミング演習Ⅱ
  • 担当教員:井上 博之、荻野 晃大、安田 豊、吉村 正義
  • 実施日時/場所:12月22日(水)、9:00〜12:15、10号館プログラミング演習室
  • 参加人数:教員13名

②ワークショップ:
  • 実施日時/場所:12月22日(水)、13:15〜14:45、Teams会議
  • 参加人数:教員27名

(2)ワークショップでの意見交換内容

  1. 教育カリキュラムとコース制を検証するための委員会からの報告
  2. 情報理工学部が関係する教育カリキュラムの有効性の状況把握
  3. 留年率改善のための方策と修学支援(寺子屋)の運用に関する状況報告
詳細については、議事録を参照のこと。

3. 総括

年間計画書に記載した今年度の取り組みの結果を振り返る。
1.情報理工学部の教育カリキュラムとコース制の状況把握と有効性をチェックするとともに、カリキュラム改訂に向けての検討を開始する。->
(1) 総じて言えば、コース制はポジティブに機能した。現在の実績をもとにして、「より魅力的な学部」「学生にとって修学意欲が増す学部」「大学進学意欲が増す学部」を目指してバージョンアップすることが必要。
(2) コースごとに見れば、特色の出ているコースと、それほどでもないコースは存在する。例えば、「コンピュータ基盤設計コース」は選択者が少ない。「組み込みコース」は必要な科目に抜けがある、など。
(3) 本学の学生の傾向として、単位習得の容易さを優先する学生が多いので、高度な授業を導入することの是非は、総合的に考える必要がある。

2. 留年率を改善するための方策の提案と、それとリンクした修学支援(寺子屋)の運用。->
(1) 留年する理由は、① 学校に来ない、② 授業に出席しても単位を落としてしまう。
(2) ①に対しては保護者を巻き込んだ低単位指導面談で対応する。
(3) ②に対しては、授業の質を落とさずに合格率を上げる、ということである。価値の高い教育を提供することが重要なのであって、留年率を下げれば良い、ということではない。


(1)1と2において確認された、本学部の授業・カリキュラムの長所

情報理工学部の授業・カリキュラムは、グレード制と少人数制の導入で、初年次(1・2年生)の基礎的・共通的な科目を十分に身につけ、その上で多岐にわたる専門科目を学生個人の目的・目標に合わせて履修するためにコース制を導入している。例えば、初年次科目を修得しなければ、研究室への配属を受けることができない。グレード制を有効に機能させるためには、きめ細かい指導が必要であり、教員やTAによる少人数教育でその実現を目指している。
情報理工学部の専門科目は高度で多岐にわたるので、学生がその選択に迷う、あるいは、安易に選択してしまう、という可能性がある。コース制では、選択したコースに応じて専門科目が重点化されるので、学生にとって履修すべき専門科目がイメージしやすく、目的・目標を明確にできるという長所がある。

(2)1と2において確認された改善すべき点

基本的なこととして、講義に出席している学生がその内容を理解できるような講義内容に改善していく必要がある。しかしながら、授業内で学習分野の全てを身に付けさせることは難しいため、学生の事前・事後の学習時間は必要不可欠である。そのためには、事前・事後学習において、具体的にどのようなことに取り組めば良いのかを指導するなど、学生が学習する時間を取るような方策を行う必要がある。
この基本事項に加えて、現在の情理工学部で改善すべき点として、次のようなことがある。
  1. 授業内容を十分に理解できない学生が多く、留年率が高止まりしている。
  2. 初年次科目(プログラミング演習や情報理工学実験、など)では大学における修学態度(準備学習の習慣、自ら学ぶ姿勢、ノートの取り方やレポートの書き方、など)を身につけることも目指しているが、効果は限定的である。

4.次年度に向けての取り組み

コース制に基づく教育カリキュラムの検討結果に基づいて、専門科目のカリキュラムを改善する。
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