令和2年度 学部授業・カリキュラム改善に向けた「年間報告書」

1.「学習成果実感調査」についての分析結果

情報理工学部の完成年度を来年に控え、所属する学生は3年次に進学している。学習成果実感調査に関して、本学部では、初年次(1~2年次)の教育と3年次以降の講義科目との履修状況の違いを分析する目的から、学部専門科目を2つのカテゴリーに分けて調査を行なっており、今年も、それを踏襲した。なお、昨年度は「初年次科目(1・2年次生)」、「初年次科目(3年次生以上)」と「初年次科目以外」の3つに分類していたが、今年度は「初年次科目」と「初年次科目以外」の2つに分類した。

初年次科目以外:

今年度は、春学期の実施率が94.74%、回答率が27.51%、秋学期の実施率が94.74%、回答率が21.92%であった。昨年度は、春学期の実施率が97.22%、回答率が48.81%、秋学期の実施率が100%、回答率が48.38%であった。
全科目における出席回数に関して(設問1)、出席率80%以上と回答している学生は春90%、秋89%であった(昨年は春84%、秋78%)。履修に関してシラバスを確認したかどうかに関する質問(設問2-1)に対しては、確認したと回答している学生は春91%、秋93%であった(昨年春84%、秋88%)。
今年は、回答率の大幅な低下と、出席率およびシラバス確認率の明確な上昇が見られることから、学習意欲が高い学生が学習成果実感調査に回答し、その他の学生はあまり回答しなかったと推測される。また、次に述べる初年次科目と比較すると、回答率が低下しており、年次が進むにつれアンケート疲れが見られる。

初年次科目:

今年度は、春学期の実施率が87.50%、回答率が53.43%、秋学期の実施率が81.25%、回答率が38.51%であった。昨年度は春学期の実施率が100%、回答率が83.50%、秋学期の実施率が100%、回答率が76.30%であった。
全科目における出席回数に関して(設問1)、出席率80%以上であると回答している学生は春88%、秋91%であった(昨年は春93%、秋88%)。履修に関してシラバスを確認したかどうかに関する質問(設問2-1)に対しては、確認したと回答している学生は春80%、秋86%であった(昨年は春76%、秋76%)。
「初年次科目」は「初年次科目以外」と比べて回答率が高く、回答した学生層がより広範囲であったと言える。今年の「初年次科目」に特徴的なこととして、シラバスの確認率が春学期は低く、秋学期に高まったことがある。入学時の履修指導で、シラバスの案内が不十分であったのかもしれない。

今年度は、実施率と回答率が低下した。特に回答率は例年の半分程度に落ち込んでいる。これほどに回答率に違いがあると、多くの調査項目において、例年との比較が意味をなさない。この分析では、授業の参加度合いとシラバス確認度合いについて、例年と比較したが、その他の設問に関しても、数値上は、例年よりもポジティブな結果になったと推察される。回答率を向上・安定化させるための具体的な改善策が望まれる。

2.「公開授業&ワークショップ」についての報告

(1)参加人数

  1. 「公開授業」:
    科目名:学部の教員が参加可能なオンラインで実施されている29の科目
    担当教員:ほぼ全教員
    実施日:7月16日(木)から7月22日(水)
    参加人数は不明。
    秋学期は公開授業を実施せず。
  2. 「ワークショップ」:
    春学期実施日:7月22日(水)、13:15〜14:45、参加教員23名
    春学期実施日:12月9日(水)、13:30〜14:30、参加教員23名

(2)ワークショップでの意見交換内容

春学期

(a)プロジェクト演習について
情報理工学部への改組の3年目にあたり、初めて実施する科目である「プロジェクト演習」の状況を確認した。概ね、良好に進んでいるとのことであった。学部の完成年度(令和3年度)の後、プロジェクト演習の担当教員を中心に経過などを振り返り、実施方法の変更も含めて検討を行う。
(b)修学指導体制について
寺小屋の利用者が減少を続けていることなどから、新しい修学サポート体制の構築を検討する必要がある。10月ごろに決定するために、それまでに学部カリキュラム委員会で検討することとした。
(c)オンライン授業の現状確認と秋学期への準備について
まず、オンライン授業の実施状況と秋学期への準備について確認した。次いで、春学期のオンライン授業の実施状況に関して、いくつかの情報提供があった。また、秋学期の授業で、実験・演習系の科目は対面授業の可能性があることを説明した。候補になる実験・演習系授業は以下のものである。
  1. 情報理工学実験
  2. プログラミング演習(基礎プロI再履修、基礎プロII、発展プロ再履修、応用プロ)
  3. 電子回路、デジファブ、実践情報セキュリティ
  4. 特別研究I、特別研究II

秋学期

(a)2021年度の修学指導(寺子屋)について
2021年度は、従来の自発的な参加者への指導に加えて、プロ演・基礎数学系科目などと連携した指導を行うことを説明した。
(b)プロ演、基礎数学系科目に関する制約を設けない意見聴取
2021年度に情報理工学部が完成年度を迎え、2022年度以降は、比較的自由にカリキュラムを変更することが可能になる。学部長から以下のような説明があった。
  1. 「情報理工学部2.0」をイメージさせるような新しいカリキュラムを検討し、改善していくことは必要である。
  2. 情報理工学部の柱になっているコース制の有効性やあり方などについて、ワーキンググループのような形で検討する、ということも考えてはどうか?
プログラム演習について、現状や課題の意見交換を行った。次のような意見があった。
  1. 基礎プロIは、初年次教育の効果を狙い教員8名を割り当てたが、その効果は限定的である。
  2. 基礎プロIIは、プログラミングスキルを修得した学生を送り出すために、それが不十分な学生は厳しく指導してきた。2020年度は課題提出のみで成績判断することになったので、不十分な学生も合格する傾向にある。
現在のカリキュラムを検証し、その上で改善というステップを踏むべきである。

3. 総括

まず、年間計画書に記載した今年度の取り組みの結果を振り返る。
1:情報理工学部の教育カリキュラムの有効性の状況把握
->学習成果実感調査の結果からは状況把握が難しかった。来年度の取り組みに反映させる。
2:情報理工学部での「プロジェクト演習」の教育効果の検証
->概ね良好に実施できたので、完成年度の後、担当教員を中心に検証、再設計を行う。
3:情報理工学特別研究Iの研究室配属にコース制が有効に機能しているかどうかのチェック
->学習成果実感調査の結果からは状況把握が難しかった。来年度の取り組みに反映させる。
4:修学支援(寺子屋)の効果的運用の検討
->来年度は授業との連携など、運用方法を再検討することとした。

(1)1と2において確認された、本学部の授業・カリキュラムの長所

情報理工学部の授業・カリキュラムは、グレード制と少人数制の導入で、初年次(1・2年生)の基礎的・共通的な科目を十分に身につけ、その上で多岐にわたる専門科目を学生個人の目的・目標に合わせて履修するためにコース制を導入している。例えば、グレード制によって「基礎プログラミング演習I」を修得した上で「基礎プログラミングII」を履修することになっている。さらに、初年次科目を修得しなければ、研究室への配属を受けることができない。グレード制を有効に機能させるためには、きめ細かい指導が必要であり、教員やTAによる少人数教育でその実現を目指している。
情報理工学部の専門科目は高度で多岐にわたるので、学生がその選択に迷う、あるいは、安易に選択してしまう、という可能性がある。コース制では、選択したコースに応じて専門科目が重点化されるので、学生にとって履修すべき専門科目がイメージしやすく、目的・目標を明確にできるという長所がある。

(2)1と2において確認された改善すべき点

基本的なこととして、講義に出席している学生がその内容を理解できるような講義内容に改善していく必要がある。しかしながら、授業内で学習分野の全てを身に付けさせることは難しいため、学生の事前・事後の学習時間は必要不可欠である。そのためには、事前・事後学習において、具体的にどのようなことに取り組めば良いのかを指導するなど、学生が学習する時間を取るような方策を行う必要がある。
この基本事項に加えて、現在の情理工学部で改善すべき点として、次のようなことがある。
  1. 授業内容を十分に理解できない学生が多く、留年率が高止まりしている。
  2. 初年次科目(プログラミング演習や情報理工学実験、など)では大学における修学態度(準備学習の習慣、自ら学ぶ姿勢、ノートの取り方やレポートの書き方、など)を身につけることも目指しているが、効果は限定的である。
  3. 修学支援(寺子屋)が有効に活用されていないという指摘があり、科目担当教員やTAの協力により、効果的な運用が望まれる。

4.次年度に向けての取り組み

  1. 情報理工学部の教育カリキュラムとコース制の状況把握と有効性をチェックするとともに、カリキュムラ改訂に向けての検討を開始する。
  2. 留年率を改善するための方策の提案と、それとリンクした修学支援(寺子屋)の運用。
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