対馬に侵入した侵略的外来種ツマアカスズメバチの侵入経路を大学院生の高橋稜一(修士課程1年)さんが特定に成功しました

論文情報


邦題:

対馬で初めて採集された外来種ツマアカスズメバチ (Vespa velutina) の成熟巣
高橋稜一・境良朗・山村辰美・清拓哉・高橋純一
長崎県生物学会誌 No.76 49-56. (2015)

Title:

Analysis the nest of alian hornet, Vespa velutina, found for the first time in Tsushima Island, Japan.
Ryoichi TAKAHASHI,Yoshiro SAKAI,Tatsumi YAMAMURA,Takuya KIYOSHI and Jun-ichi TAKAHASHI
Trans. Nagasaki Biol. Soc. No. 76 49-56. (2015)

 高橋研究室で調査を進めている外来性スズメバチの研究論文が長崎県生物学会誌に掲載されました。本論文は,生命資源環境学科の平成26年度の卒業生 (現在京都産業大学/修士課程1年) 高橋稜一さんが卒業研究を中心に自ら作成したものです。

概要

 ツマアカスズメバチは,2003年頃から欧州や韓国に侵入し,分布を広げている外来種です。侵入した国では,在来生物への影響とともに刺傷被害,養蜂被害などが大きな問題となっています。そのツマアカスズメバチが,2012年に長崎県対馬市で初めて高橋純一准教授らのグループにより国内で発見されました。翌年から,高橋研究室では地元自治体とともに定着状況やその侵入起源について調査を進めています。

 今回,卒業研究で高橋稜一さんが本種の巣を解析したところ,対馬で繁殖していることが初めて確認されました。さらに東アジア一帯に分布している本種と対馬の個体のミトコンドリアDNAを解析したところ,中国原産の系統が韓国経由で対馬に侵入したことを特定しました。これらの調査結果をふまえて,環境省ではツマアカスズメバチを特定外来生物に指定し,その防除対策を進めています。

 指導教官の高橋純一准教授は,「今回は和文誌の論文であるが,卒業研究を論文に取りまとめたことは十分に評価できる。また対馬への侵入ルートを今回科学的に特定できたことは,今後の防除対策にも十分に貢献する重要な成果である」とコメントした。

  • 対馬で問題となっているツマアカスズメバチ

  • 巣を捕獲したときの様子(撮影:境)

 本研究は,文部科学省科学研究費 基盤研究B「原始的真社会性種の繁殖制御:遺伝子から行動まで」(24370008)および基盤研究C「侵略的外来種ツマアカスズメバチの帰化状況と生態情報にもとづいた防除法の確立」(26440250)の支援を受けました。

調査の様子は以下のwebサイトでも見ることができます。
NHK エコチャンネル
http://cgi4.nhk.or.jp/eco-channel/jp/movie/play.cgi?did=D0013772562_00000

 
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