生命資源環境学科の木村成介准教授らの研究グループが、植物の複葉に見られる分岐構造の形成過程を数理モデル解析で再現。

 総合生命科学部生命資源環境学科の木村成介准教授、中益朗子研究員(日本学術振興会特別研究員-PD)、中山北斗研究員(日本学術振興会特別研究員-SPD)らの研究グループは、植物の複葉に見られる分岐構造の形成過程を、反応拡散パターンを用いた数理モデル解析で再現することに成功しました。

 本研究成果は2014年11月6日付けで学術誌PLOS ONEに掲載されました。

掲載論文

A developmental model for branching morphogenesis of lake cress compound leaf
PLOS ONE (2014) 9: e111615

著者

 中益朗子(京都産業大学、日本学術振興会特別研究員-PD)、中山北斗(京都産業大学、日本学術振興会特別研究員-SPD)、中山尚美(エジンバラ大学)、末松信彦(明治大学)、木村成介(京都産業大学)

研究概要

 木村研究室では、生育環境に応じて発生する葉の形を大きく変化させる植物Rorripa aquaticaの研究が進められています。アブラナ科の半水生植物であるこの植物は、水没すると葉身が針のような羽状複葉を発生する一方,気中では温度に応じて単葉から羽状複葉までさまざまな形態の葉を発生します。このように生物が環境に応じて形態などの表現型を変化させることを表現型可塑性といいますが、R. aquaticaがどのような仕組みで葉の形を変えているのかはわかっていません。今回、この植物が単葉から複葉まで連続的に変化していることに注目し、葉の変化を数理モデルで再現する研究を行いました。

 これまでに、単葉を持つシロイヌナズナの葉の形成を説明する数理モデルが発表されていましたが、このモデルの枠組みを応用することで、複葉の持つ複雑な分枝構造の形成も説明できることを示しました。

 複葉の持つ分枝構造を再現するには、葉の成長に伴って葉縁に形成される空間的周期パターンが規則的に倍加する性質が重要ですが、今回は、生物の形態形成の位置情報として広く利用されている反応拡散パターンを用いることで、複葉の持つ分枝構造を再現しました。

 この数理モデルを応用すれば、自然界に見られる葉の形態の多様性が生じる仕組みの解明できる可能性があります。

図1:R. aquaticaの示す葉の形態の表現型可塑性。
25℃(左)および20℃(右)で育てたときの葉の形態。(図は掲載論文より抜粋)


図2:リングの成長プロファイルとパターンの時空間プロット。上のパネルはモデルの概略図とピークの挿入によってパターンの倍加が起こる様子を示した時空間プロット。反応物質uの量がグレースケールで示してある。 下のパネルは左から1番目、2番目、3番目、 4番目の挿入が起こった時点でのリングの様子。各点は細胞の位置を示し点の色はを示す反応物質uの量を示す。黒い矢印は分枝の挿入位置を示す。白抜きの矢印はサイドブランチの形成を示す。(図は掲載論文より抜粋)

 
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