総合生命科学部 国際シンポジウム「生命科学の最前線」開催報告

 5月30日(金)・31日(土)の2日間にわたり、むすびわざ館2階ホールにおいて創立50周年記念事業「国際シンポジウムCutting-edge of Life Sciences(生命科学の最前線)」が開催された。このシンポジウムは本学総合生命科学部(生命システム学科)が主催し、同大学院生命科学研究科の開設ならびに総合生命科学部生命システム学科の4名の教員(伊藤維昭教授、福井成行教授、吉田賢右教授、八杉貞雄教授)の退職記念を兼ねたものである。この時期には珍しく真夏日の快晴に恵まれた2日間、ともに100名をこえる参加者があり終始活発な講演と質疑応答が行われた。

 1日目(5月30日)午後1時のシンポジウム開会にあたり、同オーガナイザーの総合生命科学部 永田和宏教授から開会の辞、ならびに本学学長 藤岡一郎教授から歓迎の辞がそれぞれ述べられた。その後2つのセッションが行われた。セッション1「From proteogenesis to proteostasis(タンパク質の品質管理)」では、Richard Morimoto博士(米国・ノースウエスタン大学・教授)、Bernd Bukau博士(ドイツ・ハイデルベルク大学・教授)、伊藤維昭博士の3名により、細胞内におけるタンパク質の生成途上および生成後にみられるタンパク質の品質管理機構の詳細に関する研究の最前線が紹介された。
 またコーヒーブレイクをはさんで行われたセッション2「Mitochondria: protein import and ATP production(ミトコンドリアと生命機能)」では、遠藤斗志也博士(本年4月に本学着任・総合生命科学部教授)、John Walker博士(イギリス・ケンブリッジ大学・教授:1997年ノーベル化学賞受賞者)、吉田賢右博士の3名により、動植物の細胞に共通に存在するミトコンドリアがどのように細胞内で作られるか、そして生命機能に必須なATP(アデノシン三リン酸)合成やタンパク質の品質管理機構にどのように関わっているのかについての研究の最前線が紹介された。

 シンポジウムは2日目(5月31日)の午前9時半に再開され、セッション3「Information embedded in oligosaccharides(糖鎖バイオロジー)」が谷口直之博士(理化学研究所・グループディレクター)、Ten Feizi博士(イギリス・インペリアルカレッジロンドン・教授)、福井成行博士の3名により行われた。このセッションでは糖タンパク質の構造の多様性と機能性について、その細胞の多種多様な振る舞いとの関連性についての研究最前線が紹介された。
 昼食休憩をはさんで行われたセッション4:「Ubiquitin/proteasome and autophagy(タンパク質分解とオートファジー)」では、大隅良典(東京工業大学・教授)と田中啓二博士(東京都医学総合研究所・所長)の2名により、タンパク質が細胞内外の環境に応答して生成・分解されるメカニズムや細胞がオートファジー(自食作用)により生理機能を再構築するメカニズムの詳細とその破たん(疾患との関係)について最前線の研究成果が紹介された。最後のセッション5:「Genetic regulation of organ development(器官形成の遺伝学的制御)」では、近藤寿人博士(本年4月に本学着任・総合生命科学部教授)、Paul Scotting博士(イギリス・ノッチンガム大学・准教授)、八杉貞雄博士の3名により、目や消化管などの発生すなわち器官形成と呼ばれる生命現象における遺伝子制御の実態に関する研究最前線が紹介された。シンポジウム全体の最後には、総合生命科学部・学部長 黒坂光教授から閉会の辞が述べられた。

 シンポジウムのすべてのプログラムは通訳なしの英語で行われ、国際的かつ学際的な雰囲気のもとで活発な講演および質疑応答が繰り広げられた。参加者の声には「発表から質問まで全て英語ということで内容を理解するという点では難しかったが、論文等で見たフレーズを聞き取ることができたのですごく良い勉強になった。」(生命科学研究科1年次)や「次にこのような機会がきても大丈夫なように英語の単語リスニングにチャレンジしようと強く思いました」(総合生命科学部3年次)などがあり、このシンポジウムが知的刺激に満ちていただけでなく、特に学生にとっては英語力をつけることの重要性を知る機会となり、かつ研究者がつくるコミュニティのいきいきとした現場の雰囲気も味わうことのできる貴重なものであったことがうかがえた。

 
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