総合生命科学部 佐藤賢一教授らの研究グループがアフリカツメガエル卵細胞の受精メカニズムに新たな仮説を提唱

 総合生命科学部生命システム学科の佐藤賢一教授、マブブハサン助教(現ダッカ大学)、井尻貴之助教らのグループ(発生情報学研究室)は、アフリカツメガエル(学名Xenopus laevis)卵細胞の膜マイクロドメインに存在するuroplakin III-Src(ウロプラキンスリー・サーク)システムの作用機序を基盤とする受精メカニズムの新たな仮説を提唱しました。

 本研究成果は2014年4月8日付で英国の学術誌Developmentの電子版(ePress)に掲載されました。

掲載論文名

The egg membrane microdomain-associated uroplakin III-Src system becomes functional during oocyte maturation and is required for bidirectional gamete signaling at fertilization in Xenopus laevis

著者

 マブブハサンAKM(京都産業大学、現・ダッカ大学)、橋本亜樹(京都産業大学)、前川由佳(京都産業大学)、松本尚士(京都産業大学)、玖島将太(京都産業大学)、井尻貴之(京都産業大学)、深見泰夫(神戸大学)、佐藤賢一*(京都産業大学)(*責任著者)

研究概要

 一般に脊椎動物の卵(卵母細胞)は、メス個体の卵巣内において未成熟な状態で成長し、一定以上の大きさになった卵母細胞がホルモン刺激を受けて受精可能な成熟卵となり受精(精子との合体)し、発生開始を実行する。本研究では両生類アフリカツメガエル(学名Xenopus laevis)をモデル生物として用い、卵の膜マイクロドメインと呼ばれる細胞膜微小領域に存在するタンパク質複合体(わたしたちはUPIII-Srcシステムと呼んでいる)が受精時の精子との相互作用とその後の発生開始のための一連の卵活性化反応(多精防止、細胞周期再開など)に重要な働きをすることを明らかにしました。UPIII-Srcシステムがメス個体内で起こる卵成熟反応にともない機能を獲得すること(図1)、そして精子と卵の間にUPIII-Srcシステムを介する双方向性シグナル伝達が行われていることを示唆する結果が得られたこと(図2)が、本研究成果の主な特徴です。今後はUPIII-Srcのより具体的な作用機構や、また、このシステムが他の生物種でも機能をもつのか、といった点を明らかにすることが期待されます。

図1

図1 間接蛍光抗体法によるuroplakin IIIの発現解析:未成熟卵母細胞(a)では検出困難な卵表層のuroplakin III(緑色の蛍光シグナル)が、ホルモン刺激により調製した成熟卵母細胞(b)では検出可能となる。図中のスケールバーは250 μm。(図は掲載論文より抜粋)


図2

 図2 アフリカツメガエルの受精における配偶子間相互作用と発生開始のメカニズム(新しい仮説)の概念図:精子および卵からのシグナル(① ②)がお互いに作用することで精子の受精能(③)および卵の発生開始能(④)が影響を受け、受精成立に関係している。卵表面uroplakin III(UPIII)-Srcシステムは、この配偶子間の双方向性シグナル伝達機構において重要な働きを担っている。(図は掲載論文より抜粋)

 
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