第8回・9回 バイオフォーラム2012

 最先端の生命科学研究に触れてみませんか

第8回

植物のエピジェネティクス研究で乾いた地球を緑にできるか!?

 環境の悪化や資源の乱開発などによる地球規模での生産力低下は、世界が直面する大きな問題となっている。生命が誕生して以来、これまでにも大きな環境変動が幾度も地球を襲い、その度に生物は変化を乗り越えて適応し、存続してきた。この生物の持つ底力を発見・理解し、その知恵を利用して環境改善や生産力増大を目指す技術の開発は、人間と地球が共存していく上で非常に重要である。
 ヒストン修飾やDNAメチル化を介したエピジェネティックな調節機構は真核生物に共通した、遺伝子およびゲノム制御機構の一つである。植物は環境変動に巧みに対応しており、環境ストレスに応答した遺伝子発現にも、ヒストン修飾を介したエピジェネティックな制御が機能している。シロイヌナズナのヒストン脱アセチル化酵素HDA6は、ゲノム維持、環境ストレス応答、発生およびホルモンシグナリングなど、植物の生命現象に多面的に機能することが知られている(Kim et al., 2012 PCP. To et al., 2011 PLoS Genet.)。我々は、シロイヌナズナhda6変異株を用いた表現型解析から、この変異株が強い乾燥耐性を示すことを見いだした。hda6変異株では、乾燥ストレス応答時にある代謝経路に関わる遺伝子群が強く発現し、この経路に関わる内在性の最終代謝物量も高度に蓄積していることがわかった。クロマチン免疫沈降実験の結果等から、シロイヌナズナの乾燥耐性付与には、HDA6によって制御されるこの代謝経路の活性化が必須であることがわかった。このことは、エピジェネティック制御を介したストレス応答特異的な代謝経路の活性化が、植物の乾燥耐性機構に必須であることを示すものである(未発表データ)。
 本セミナーでは、シロイヌナズナ脱アセチル化酵素HDA6に焦点を当て、エピジェネティックな制御(特にヒストン修飾)が寄与する、植物の環境変動応答とその意義について議論したい。

講師

理化学研究所 植物科学研究センター 金 鍾明 氏

日時 2013年1月11日(金)
開場 16:00〜
開演 16:30〜17:30
場所 京都産業大学 15号館1階15102セミナー室
交通 ※キャンパス内に駐車場はありません。公共交通機関をご利用ください。
交通アクセス
備考 事前申込不要・入場無料・一般の方の参加歓迎
主催 京都産業大学 総合生命科学部

第9回

Translocon-mediated assembly of membrane proteins: Energies and forces
(トランスロコンによる膜タンパク質の形成:エネルギーと物理力に関する考察)

Membrane proteins destined for insertion into the inner membrane of E. coli are synthesized by ribosomes bound to the SecYEG translocon. During co-translational membrane integration, transmembrane α-helical segments in the nascent chain exit the translocon through a lateral gate that opens towards the surrounding membrane, but the mechanism of gate opening and lateral exit is not well understood. In particular, little is known about how a transmembrane helix behaves when inside the translocon. Current work in our lab has shown that a force proportional to the free energy of membrane insertion is exerted on a transmembrane helix when it transits through the translocon channel, providing a direct insight into the dynamics of membrane integration.
※細胞の働きに必須な役割をもつ膜タンパク質がどのように作られるのかという基本的な問題を扱う。von Heijne教授は、物理化学的な視点も取り入れた研究を展開しているが、今回は翻訳アレスト配列を巧みに使った研究結果なども講演予定である。
※本講演は英語講演となります。通訳はありませんのでご注意ください。

講師

ストックホルム大学 生化学・生物物理学部門 膜研究センター
Gunnar von Heijne 教授

日時 2013年1月21日(月)
開場 13:00〜
開演 13:30〜15:00
場所 京都産業大学 15号館1階15102セミナー室
交通 ※キャンパス内に駐車場はありません。公共交通機関をご利用ください。
交通アクセス
備考 事前申込不要・入場無料・一般の方の参加歓迎
主催 京都産業大学 総合生命科学部
 
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