生命科学セミナー(私立大学戦略的研究基盤形成支援事業「タンパク質の生成と管理」セミナー) 開催(2012.12.10)

ピロリ菌の分泌タンパク質Tipαによるヒト胃がんの発症機構とTipαの結晶構造

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日時 2012年12月10日(月)15:00〜16:00
場所 京都産業大学 15号館 15102セミナー室
演者 主席主幹 菅沼 雅美(埼玉県立がんセンター)
世話人 生命資源環境 津下英明(075-705-3117)
主催 京都産業大学総合生命科学部
私立大学戦略的研究基盤形成支援事業「タンパク質の生成と管理」

要旨

 多くの日本人の胃の中に生育しているピロリ菌(微好気性桿菌)は、胃炎や胃潰瘍、さらに、胃がんの原因として注目されている。ピロリ菌による胃がん発症機構の解明は、胃がんの予防・治療に役立つと考え、私共は内因性発がんプロモーターであるTNF-α(サイトカイン)を強く誘導する新しい発がん因子の遺伝子をピロリ菌のゲノムに見出し、TNF-α inducing protein (Tipα)と命名した。ピロリ菌から分泌されるTipαは、ピロリ菌特有のタンパク質で、細胞表面のヌクレオリンに結合して胃粘膜上皮細胞に取り込まれる。ヌクレオリンは元来核小体に多量に存在するタンパク質であるが、発がんの過程で細胞膜に移動したヌクレオリンとTipαが結合して、核内でNF-κBを活性化、さらに、TNF-αを発現し、胃発がんが促進される。

 Recombinant Tipα (活性型rTipα, 二量体)とN-末の6個アミノ酸を欠損する不活性型Tipα(rdel-Tipα、単量体)を用いて進めた研究結果を紹介する。最近、津下教授らは、rdel-Tipαのユニークな結晶構造を解明された。ヒト胃がんの発がん機構をピロリ菌の新しい発がん因子Tipαから紹介する。

 
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