生命科学セミナー 開催(2012.10.16)

包括的ゲノムワイド解析によるトウモロコシ転写因子Pericarp Color1 (P1)が
制御する遺伝子群の同定

演題 包括的ゲノムワイド解析によるトウモロコシ転写因子
Pericarp Color1 (P1)が制御する遺伝子群の同定
演者 諸橋賢吾(オハイオ州立大学)
日時 2012年年10月16日 16時30分から17時30分
場所 15号館1階15102セミナー室
世話人 生命資源環境学科 木村 成介(075-705-3113)
主催 京都産業大学総合生命科学部
詳細 生命科学セミナー(120KB)


要旨

 トウモロコシの転写因子Pericapr Color1(P1) はR2R3 型MYB 転写因子であり、コーンシルクでは殺虫作用のあるC-グリコシルフラボン、ペリカープではフロバフィンなどの蓄積に関与している。これはP1が有用な可視遺伝マーカーとして利用されている要因となっている。C-グリコシルフラボンやフロバフィンの共通の前駆体であるナリンジェニンが生合成される経路は知られているが、ナリンジェニン生成後の経路に関与する遺伝子産物についてはよく知られていない。我々はP1 機能に関する対照的なアリルをもつライン(P1-rr およびP1-ww)を用いて、ゲノムワイド発現解析(RNA-Seq)およびゲノムワイドChIP解析(ChIP-Seq)を行った。その結果、P1 はフラボノイド合成に関わる酵素だけでなくもっと広範に遺伝子発現を制御していることがわかった。P1 は数千遺伝子の発現を調節し、そのうち約1500遺伝子は推定上の直接標的であることが予想された。さらに、我々はあるシトクロームP450 型酵素がP1 の直接的標的であることを証明し、ナリンジェニンから2-ヒドロキシナリンジェニンへの変換を担うF2H1 酵素であることを同定した。このステップはP1 が制御する代謝経路において鍵となるものであり、C-グリコシルフラボン生成の最初のステップである。P1 は遺伝子発現を主に活性化させるという予想に反して、P1の直接標的遺伝子は活性化も抑制化もされていた。これらの結果は、1)P1 はフラボノイド合成に関わる遺伝子群の主要な制御因子であること、と同時に、2)P1 は一次代謝や他の二次代謝産物の合成酵素遺伝子発現にも副次的に関与していることを示していた。本研究はトウモロコシの組織特異的な転写因子についてゲノムワイドな発現および結合領域を調査した初めての報告である(Morohashi et al., 2012)。発表者は、ほぼ同時期に発表された異なるトウモロコシ転写因子のゲノムワイド解析(ChIP-Seq)にも関わっており(Bolduc et al., 2012)、シロイヌナズナの約20倍のゲノムをもつトウモロコシを用いたゲノムワイド解析、とくにChIP-Seq についての苦労、問題点なども議論したい。

 
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