私立大学戦略的研究基盤形成支援事業
第4回セミナー開催のお知らせ

 オハイオ州立大学の諸橋賢吾博士をお迎えして、下記によりセミナーを行います。大学院生、学部学生の参加も大いに歓迎しますので、皆様ふるってご参加下さい。

日時 2010年6月1日(火)15:00〜16:00
場所 9号館902号室
講師 諸橋賢吾博士(オハイオ州立大学)
演題 シロイヌナズナトライコーム形成に関わる転写制御ネットワークの解析

要旨

 シロイヌナズナの表皮細胞から分化する毛状構築物であるトライコームは細胞分化のモデルとして転写制御の研究に広く用いられてきた。主に二つの転写因子、GL1, GL3がトライコーム形成開始を司っていることが知られているが、 その標的遺伝子については遺伝学的に示唆されているのみであった。我々はクロマチン免疫沈降法(ChIP)およびChIP-chip法などによるゲノムワイドな標的遺伝子の探索、共発現解析などにより、数百の標的遺伝子の発見に成功した(Morohashi and Grotewold, 2009)。標的遺伝子の一つであるTTG2はこれまでの遺伝的な解析からも標的として示唆されたものであった。我々はさらに転写制御ネットワーク解明をおしすすめるべく、TTG2の標的遺伝子探索を行った。その結果、驚くべき事にTTG2の標的遺伝子とGL3の標的遺伝子が高い割合で重複していることがわかった。TTG2がGL3の標的遺伝子であることをふまえると、フィードフォワードループ (FFL)が存在していることが示唆された。次にゲノム全体の遺伝子発現がGL3やTTG2によってどのように影響を受けるのかをマイクロアレイによって調べた。すると、ChIP-chipの結果と同様に、GL3によって影響を受ける遺伝子群の多くがTTG2によっても影響を受けていた。しかしながら、その影響は正反対であった。つまり、GL3によって活性化される遺伝子群の多くがTTG2によって抑制されていたのだ。この発現変化をFFLにあてはめると、非干渉的なフィードフォワードループ(I-FFL)の存在が強く示唆された(図参照)。GL3機能誘導系を用いてGL3誘導後から標的遺伝子発現の経時変化を調べると、誘導初期に発現ピークがみられた。これこそが、I-FFLの特徴であり、標的遺伝子の時期特異的な発現を生み出している。また我々は構築された転写制御ネットワークをもとに数式モデルを構築し、実際の実験結果との比較から新たな転写制御メカニズムの発見も試みている。

参考論文

Morohashi and Grotewold (2009). PLoS Genetics 5(2): e1000396.
Zhao, Morohashi, et al. (2008). Development. 135: 1991-1999.
Morohashi et al. (2007). Plant Physiol. 145: 736-746.

 
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