第1回バイオフォーラム開催報告

 平成22年5月14日(金)に本学15号館15102セミナー室にて第1回バイオフォーラムを開催しました。バイオフォーラムは、学内外問わずに生命科学分野の第一線でご活躍されている先生に講演いただき、参加者の方に最先端の研究に触れていただくことを目的として、今年は年10回程度の開催を予定しています。
 第1回目の講演は、冒頭に本学総合生命科学部の瀬尾美鈴教授よりバイオフォーラムの開催目的等の説明がなされた後、開演しました。講師は、ルール大学(ドイツ)のMatthias Roegner教授をお招きし、シアノバクテリアによる生物的な水素ガス生産についてお話していただきました(※講演要旨は下記参照)。講演終了後の質疑応答の時間では積極的な意見が取り交わされ、盛況のなかで第1回バイオフォーラムを終了することができました。
 第2回以降のバイオフォーラムにつきましても、随時、お知らせさせていただきます。ぜひご参加いただきますよう、よろしくお願いします。

講演要旨

 植物や光合成細菌の光化学系は、光のエネルギーでATPと還元力を生み出す。ATPは細胞のエネルギーに、還元力は炭酸固定による糖の生産などに使われる。この還元力を人工的に水素ガスの生産に振り向けられれば、水素ガスの大量生産が可能になり、炭酸ガスに無縁のエネルギー体系が可能になる。そのために、光化学系IおよびII、2H+ + 2e- → H2 を触媒するヒドロゲナーゼの研究を進めている。光化学系IおよびIIをそれぞれ金の基盤に固定して、光によって電子移動を観察することはできた。しかし、このバイオバッテリーは、光によって光化学系がどんどん失活してゆくので、寿命が短い。細胞の中では失活した部品を取り替える修復装置がある。そこで、細胞を水素ガス発生の工場となるようにデザインして改変することを長期的な目標として、日本の別府温泉から単離された好熱性の光合成細菌の研究をおこなっている。この菌は夜になると光化学系IIにPsb27というタンパク質が結合して、光化学系IIは休眠状態となることがわかった。また、光を集めるアンテナ複合体はむしろ無いほうが、また、ATP合成酵素が少し水素イオンを漏らすほうが、光による還元力の生産に都合がいいことがわかった。ヒドロゲナーゼは、クラミドモナスのものは活性が高いが酸素に弱い。最近、酸素に強い細菌由来のヒドロゲナーゼが発見されたが、活性が弱い。そこで、この活性をあげるように改変することを試みている。

 
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