内蒙古行

K.Y.


夏休みに内モンゴルへ旅行に出かけた。フフホトからバスに揺られること12時間、大草原の中にポツリとあるシリンホトと言う町に到着した。そこは町を自転車で走ると30分ほどで果てしなく続く草原に出れるような小さな町だった。私と友人はここでちょっとした中国風バカンスを楽しんだのだが、その時の体験を少し報告しようとおもう。


内モンゴルといえば羊の肉が有名だ。現地に到着したその夜、移動で疲れた体に栄養を補おうとレストランに入り、羊肉のシャブシャブを食べ、朝鮮料理だとおもうがニンニクを丸ごと漬けたものを食べ、ビールも飲みながら食事をしていた。その店はわりに繁盛しているらしく、他にもたくさんの食事客、宴会客がいた。その中で七〜八人の男性宴会客が円卓を囲んで大きな声をはりあげながら楽しそうに飲み食いしていた。特に緑色の公安服を着ている男二人の威勢がいちばんよかった。私はそれに気づいていたが、中国でのよくある光景で、地方では更に度を増しているんだとおもう程度で、それほど気にも留めなかった。


だが、いつも思うことがある。なぜ制服でレストランへ来て宴会するのだろう?プライベートであるなら私服で来ればいいのではないか?もしかして仕事がおわってすぐに来たのか?等々。さらに、「オレは公安の人間だ」と周囲の人々に知らしめたいのか?


さて、彼らの宴会も終わりに近づき、一人の「小姐」が料金をかいた小さな紙を提示した。すると一人の公安服の男が「○○元でいいだろう!」というようなことを小さくない声で言っていた。なんと乱暴な値切り方であろう、その声は二つ三つテーブルを隔てた私にも聞き取れた。ふと見ると小姐がどうにもならないかのように気弱に、その場に立っている。そして、その男はじれったく思ったのか「主人(店長)を呼んでこい!」と叫んだ。小姐はプイとあちらへ向き、主人のいる裏へ入っていくと、しばらくして主人が出てきた。彼はニコニコと笑顔で腰も低くやってきた。その男のそばまで来て、なにやら料金のことで話しあっていたが、男が椅子に腰掛けたままで主人の肩を二〜三回軽くポンとたたいた。すると主人は小姐に一声かけて裏へ入っていった。そして宴会係の男が百元札を二〜三枚テーブルにおくと、この一団のグループは去っていってしまった。その時の小姐の憮然とした態度を見て、私はことの結果をはっきり理解した。


これは内モンゴルでの出来事ではあったが、おそらく決してめずらしいことではないだろう。中国内の役人たちは多かれ少なかれ、彼ら自身の責任ある立場を利用して、また職権を濫用していることは想像に難くない。この事例以外にもいろんな話が伝わっているからだ。さもなければ「放権、高効、服務」というスローガンは発せられないはずである。もっとも役人、官僚の腐敗についていえば日本にいる私が隣国のことを、あれこれ言えたものではないのだが------!

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