第4回天文台講座「近赤外線の“目”で宇宙を見る」

2011.03.05

 第4回天文台講座が3月5日(土)16時から神山天文台サギタリウスホールで開かれ、吉川智裕専門員が「近赤外線の“目”で宇宙を見る」と題して講演し、小学生から年配の方まで、一般から37人が参加した。

 神山天文台では、教育・研究スタッフの専門分野の話題を中心に、天文台で行われている天文学の研究や観測技術の研究・開発について紹介し、地域の方々が天文台の研究者と気軽に交流できる場を目指して天文台講座を年4回開催している。

 吉川講師は、まず、ハワイ島のマウナケア山が世界の中でも有数の天文学観測のサイトとして知られることを説明し、日本が誇る大望遠鏡「すばる望遠鏡」とそこでの観測について、写真を交えて紹介した。
 そして、このような大望遠鏡を使って非常に遠くの銀河からの微かな光を観測し研究する意義について「遠くの銀河からの光を観測することは、昔の宇宙の姿を観測することであるため、それによって宇宙の歴史を調べることができる」と説明。また、現在までに人類が観測してきた宇宙の広がりについて、3次元立体映像投影装置と「Mitaka」を用いてわかりやすく解説した。

 次に、遠くの宇宙にある銀河を観測するうえで、近赤外線による観測が重要であることを説明した。宇宙は膨張しているため、宇宙のどこにいても遠くのものほど速い速度で自分を中心に離れていくように見えることを図表を用いて示し、これが光のドップラー効果を起こすことを説明した。これによって、遠くの銀河の可視光は私たちのもとには近赤外線として届く。一方で、銀河から届く光は、見る波長によって見えるものが変わってくるため、遠くの銀河を近くの銀河と比べるためには近赤外線で見る必要があることを説明した。
 また、近赤外線について理解するために、近赤外線カメラと近赤外線懐中電灯を用いた実験を行った。人間の目には真っ暗で見えなくても、近赤外線カメラを使うことによって、近赤外線懐中電灯に照らされたものを“見る”ことができることを説明した。

 最後に、すばる望遠鏡の近赤外線の“目”である「MOIRCS(モアクス)」を紹介し、それによって撮られた宇宙の近赤外線深撮像観測「モアクス・ディープ・サーベイ」による画像やその成果を紹介した。

 講演後の質疑応答では「宇宙の外側はどうなっているの?」「すばる望遠鏡の次の世代の望遠鏡は?」などの質問が活発に投げかけられ、講師がわかりやすく回答していた。
ハワイの望遠鏡について解説する吉川専門員
PAGE TOP