第1回講座「アイスブレイクの意義を体感する 」

F工房(京産大発ファシリテータマインドの風)
F工房(京産大発ファシリテータマインドの風)
日時 2014年10月15日(水)13:30〜16:30
場所 京都産業大学 4G演習室(4号館4階)
参加者 28名
テーマ

 台風19号が近畿を直撃し、大学が休講になったのは2日前のこと。この日は爽やかな秋晴れになった。水曜日の3限が始まった頃、4号館4階の4G演習室には、人が少しずつ集い始めていた。

 ここは、今日から始まるF工房主催のイベント、ファシリテータ・トレーニング連続講座「ファシリテーションLabo.(ラボ)」(以下、「ファシラボ」)の会場だ。会場にはジャジーな音楽が流れ、リラックスした空間を演出していたが、その場の雰囲気には少しの違和感があった。集まった人たちの中には、見知った顔も多く、みんな挨拶をしてくれる。一方で、初めて見る顔の人も何名かいて、その人たちは心なしか表情が強張って見えた。そんな表情のグラデーションが、いまいちリラックスできない原因だったのかもしれない。などと考えながら、参加者が集まるのを待つ。

 会場は、長机に3脚の椅子がある状態が全部で9セットあったが、講座が始まる13時30分までに、それら全27席は全て埋まる状態だった。

 この講座の申し込みは32名。学生が31名で、職員が1名という内訳だ。F工房のイベントに初めて参加する人は8名で、それ以外の人は前年度の「ファシラボ」に参加していたか、本学のキャリア形成支援教育科目で学生ファシリテータとして活躍しているかのどちらかである。

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アイスブレイク「マスを21」で、Unfreezing(解凍)していく様子。

 定刻から5分遅れで始まった「ファシラボ」の初回講座。冒頭は、F工房担当コーディネータである中西さんの挨拶から始まった。いつもよりゆっくり話す中西さんは、少し緊張しているのだろうか。F工房スタッフの紹介・挨拶に続き、この講座のオリエンテーションが始まった。ここでは、「ファシラボ」の目的やファシリテーションの定義などについて説明があった。

 F工房のスタッフとして働く私だが、「ファシリテーションって何ですか?」と尋ねられると言葉に詰まってしまう。そんな私は、1人のスタッフとしてこの場にいるのと同時に、1人の参加者としてもこの場にいるのだと思いながら、中西さんの話を聞いていた。この「ファシラボ」を通して、私もファシリテーションについて少しだけ学ぶことができればいいな、と少しワクワクしていたのかもしれない。

 他の参加者は、私と同じような気持ちだったのだろうか。中西さんのちょっとしたボケに、時より笑みを見せながら熱心に話を聞く参加者の様子が印象的だった。それは、集中しているようにも感じられたし、緊張しているようにも感じられた。
 オリエンテーションであった話は下図のスライド資料の通り。

 15分ほどのオリエンテーションが終わり、「アイスブレイク」を実際に体験した。そもそも「アイスブレイク」って何?中西さんの説明によると、「アイスをブレイクする。」→「氷の状態を壊して(溶かして)水にする。」→「緊張の状態を打ち解けた状態にする。」ということらしい。ゲームを通して初対面の人同士の緊張をときほぐし,和やかな雰囲気を作るためのもので、今回体験したアイスブレイクはF工房がプロデュースした「マスを21」。某アニメを想像させるようなネーミングだが、配られたワークシートは縦7×横3の21個のマスが並び、左上から横に小さく番号がふられているシンプルな物だった。

 「マスを21」には前段階があった。事前に配られた付箋紙(ピンク・イエロー・ブルー3色を1人1色ずつランダムに配布)に、ピンクの人は「YES/NO で答えられる質問」、イエローの人は「初対面の人に投げかける質問(「お名前は?」以外)」、ブルーの人は「好きな〇〇について問う質問」をそれぞれ記入した。それをホワイトボードに貼ってある模造紙に、質問が見えないように貼り質問を出し合った。どうやらこの付箋紙が後に活躍するようだ。個人での作業後、オープンスペースへ移動。自然と円となり「マスを21」が始まった。遠慮がちに自己紹介する声とアイスブレイクはオテノモノと看板をぶら下げてそうなはつらつとした声とが教室内でハーモニーを奏でていた。私は、初めは戸惑いもあて、ソワソワしたが、体を動かしながら行ったことで、体も緊張も次第にほぐれ自然と笑顔になっていた。

 この場で何が行われたのかは、後ほど述べることにしよう。15分間の休憩を挟みながら2時間たっぷり時間をかけたアイスブレイクを終え、講座が始まる前に感じていた違和感はいつしかあたたかく和やかな雰囲気へと変わっていた。
 その後、F工房事業統括 鬼塚先生(文化学部 教授)からのミニレクチャーの時間。20分ほど「アイスブレイクの意味」について講義があった。
 ファシリテーションの目的は【対話を促進すること】であり、その手段の1つがアイスブレイクの導入である。そんな一言から話は始まった。私は見慣れない沢山のカタカナ文字を必死に拾い上げていた。鬼塚先生がミニレクチャーでキーワードとしていた「Unfreezing(解凍)」。アイスブレイクをすることで、参加メンバーそれぞれのココロや、メンバーが創り出すこの場が「Unfreezing(解凍)」される。そのことによって、対話が可能となり、参加者はここでの体験を通して「Move、Change(変化)」を経験する。そして、最後に「Refreezing(再冷凍)」を行い、参加者はここでの変化や学びを日常へと持ち帰る。この一連の流れについて、K. Lewin(クルト・レヴィン)の理論モデルを用いながら説明があった。このアイスブレイク「マスを21」は、この「ファシラボ」全体の「Unfreezing」の機能があったのだと、私はここでようやく気付くことができた。

 そして、最後に「アイスブレイク」を題材に「カタカナ語日本語化選手権」というワークを行った。これは、世に流通する「カタカナ語」を自分の感性に従って無理やり日本語に変換しよう!という趣旨のワークで、今回は「アイスブレイク」を自分なりに日本語にしてみよう!という内容であった。最後に「アイスブレイク」を自分なりに日本語にしてみることで、今日の講座のまとめにしよう!というものだった。参加者からは、ユニークな発想の日本語がたくさん出された。

 メンバーそれぞれが考えた日本語を「マスを21」のワークシートの21番目に記入し、今回の「ファシラボ」は終了した。今回の講座は、「マスを21」のマスを順に埋めていきながら、自分のことを他者に紹介したり、メンバーのことを知り合ったりする形で進められた。このシンプルなワークシートに、アイスブレイクの様々な要素が組み込まれていたのが印象的だった。

「アイスブレイク」カタカナ語日本語選手権 〜参加者のコトバ〜

  • ふれあいの第1歩
  • 場を温める
  • 聖なる炎
  • 場を整える
  • レンジでチン!
  • 居心地を良くする
  • 開放の場
  • 相互関係促進
  • いごこちを良くする
  • 氷を破くこと
  • とけ・とけ・開ける解開放
  • やまびこイン氷山
  • おとおし
  • おはなし
  • 見つめ合う
  • 人間関係
  • 相互理解
  • 遊び
  • 氷砕
  • 打ち解ける
  • コミュ力向上の場
  • 緊張緩和
  • 場作りの一歩
  • 緊張緩和
  • うま〜くまろやか(=゜ω゜)ノ☆
  • 友だちをつくろう
  • だんきうんてん

アイスブレイク「マスを21」ルール説明

目的

 参加者が、集まったメンバーに対して聞きたい質問を出し、それを利用しながら互いのことを知り合う。また、その質問を全体・ペア・グループ等、様々な形態で体験することにより参加者が状況に応じたアイスブレイクの使い方を学ぶ。

準備物

  • 「マスを21」ワークシート
  • 付箋(ピンク、イエロー、ブルー)
  • A4白紙
  • 模造紙
  • タイマー

方法

  1. ワークシート、付箋を配布する。
  2. 個人ワークで①〜④まで下記の内容を記入。
    ※○で囲っている数字はマスの数字に該当
    ①名前を記入。
    ②現在のこころの緊張度合い(%)を記入。(0%安心---100%緊張)
    ③〜④イエロー付箋から選んだ質問の答えを記入。
  3. オープンスペースへ移動。2人1組となり①〜④をふまえて自己紹介を行う。何度かペアを変えて行う。(※以後、新しい人とワークを始める際は自己紹介を必ず行う)
  4. ⑤〜⑥はピンク付箋からの質問の答えを記入。⑤〜⑥は同時に体も動かしYES/NOそれぞれ左右に分かれる。質問の答えによってポイントが加算される。(ファシリテータがランダムにポイントとなる答えをきめることが出来る)
    ※後に続く項目もポイント制となり、最終多くポイントを獲得した人が勝ちとなる。
  5. 引き続き、⑦〜⑨もピンク付箋からの質問だが2つお題を出す。1つ目は⑤〜⑥同様、左右に分かれ、2つ目では、さらにYES/NOで上下に分かれ4分割し、4つのグループを作る(※人間マトリックス)。グループごとに円となり自己紹介を行いメンバーの名前を記入(※書名ゲーム)。ファシリテータが1人に絞れるような質問(ex,誕生日が1番近い人・出身が京都から一番遠い人)を出し、その人の名前があればポイントが加算される(※書名ビンゴ)
  6. その後、ペアになった状態で⑩〜⑫のマスを使ったワークを行う。ファシリテータが青の付箋紙(「好きな○○」を問う質問)を選び、その問いかけに対する自分の答えを、ファシリテータの合図で同時に言い合う。この時、自分の答えと相手の答えが一致すれば両者にポイント加算。ペア相手の答えは⑩〜⑫に記入。
  7. ⑬〜⑮もペアワークで、青付箋紙の質問に対して2択のクイズを相手に出す「二択自己紹介」を実施。マスには相手の答えを記入し、正解したらポイント獲得。
  8. ⑯〜⑱は4人グループで1人A4白紙1枚配布。青付箋紙の問いかけに対して、四択クイズを考えA4用紙に記入。それをグループメンバーにクイズ形式で出題し合う。1人1マス使い、自分以外のメンバーの名前とクイズの答えを記入する。正解したらポイント加算。
  9. ⑲合計ポイントを記入。
  10. ⑳(アイスブレイクを終えた)現在のこころの緊張度合い(%)を再度記入。
  11. ㉑【アイスブレイク】の日本語訳を記入(※カタカナ語日本語化選手権)。
  12. ⑲〜㉑や、②と⑳の変化(※変化がない場合でもOK)についてグループメンバーと共有しながら、今日のワークを振り返って終了!
  13. 作成:中尾麻衣(F工房)

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