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交通広告 Keep Innovating. 2015 シリーズ2
コンピュータ理工学部の研究室内に設けられた実際に住むことができる実験住宅「ΞHome(くすぃーほーむ)」。ここでは「近未来の家をつくる」というコンセプトのもと、人々の普段の生活をよりスマートにするためのシステムを研究している。
「スマート天井通知システム」は、住宅の天井をディスプレイとして使用し、メールの着信や来客、家事の優先順位などの情報をアニメーションで投映するというもの。自分の頭上に必要な情報が映し出されるため、普段の生活の中では意識されないが、必要なときに見上げるだけで一目で情報が手に入るようになっている。
このシステムを作ろうと思ったきっかけは?
平井先生:このシステムを開発するには2つの技術が必要だと考えています。一つは、人の行動や行為を測る技術。これは本学の実験住宅でのスマートホーム化に対する重要な技術的取り組みの1つです。そしてもう一つは人に対して情報を認知させるための技術。これは目に見える視覚的な技術であったり、音で知らせる聴覚的な技術であったりさまざまです。これも住宅のスマートホーム化という観点で重要です。そんな中でも、「視覚的に知らせる」ということに関しては、従来のテレビやスマートフォンといった画面ではなく、周囲の環境をディスプレイとして使えるだろうと想定していました。
実際に家庭で使える小型のプロジェクターが次々と登場するようになり、この技術をスマートな生活に活かせないものかと考えたのが始まりです。ただ、このような機器は多くの場合、投影先として壁を想定しています。しかし、実際の住宅の壁となると家具やポスター、装飾品などであまり投影スペースがないんです。そこで、天井に目を付けました。近代建築やマンションでは、天井にも白いクロスが貼られていることが多いですよね。投映するコンテンツとしても、単に夜空や風景といった娯楽のためのものではなく、人の生活に即した情報を映す天井があってもいいのではないかと考え、開発に踏み切りました。
コンピュータ理工学部 准教授 平井 重行
「スマート天井通知システム」を体験してみていかがでしたか?
隅田くん:私はこのシステムの評価実験の際に、被験者として参加しました。実際にテレビを見ているときにこの通知に気付くか、という実験です。普段の生活でも、イヤホンをつけながら作業している時などは人の呼び声やチャイムの音が聞こえないことが多いので、このように視覚的に表現して通知してくれるのは便利だと思いました。
猿渡さん:将来、自分の生活の中に取り入れることができたらとても便利ですよね。あと、一人暮らしの人やお年寄りのために使用するのも良いのではないかと思います。一人で暮らしている高齢者の方の行動を把握できれば、必要なときにリアルタイムでサポートすることができますし。通知機能を使って薬を飲む時間を知らせてくれる、など応用できそうですね。高齢化社会への対応が求められている時代ですし、介護や医療の方面でも活用の幅を広げられるのではないでしょうか。
コンピュータ理工学部4年次 隅田 智之
そのほか、普段はどんな研究をしているのですか?
平井先生:ほかにも、玄関の床に天気情報を投映するシステムや、洗面台の鏡にニュースや一日の予定などを表示させるシステム、お風呂の浴槽の淵をタッチパネル化してさまざまな操作ができるシステムなどを開発しています。どの研究も、今ある生活をよりスマートにすることがテーマ。まずはどんなケースで役立つのか、「使われ方としての分析・検討」を行います。次に、システムとして「どんな動きをするべきか」という設計を。そして、それに対して「具体的にどう表示すべきか」というビジュアルデザインを行っています。特にビジュアルデザインに関して、「スマート天井通知システム」では、静止画ではなくアニメーションで表現するため認知科学的な視点も取り入れました。必要ない時には意識に上がらず、通知が来た時、情報が必要な時には周辺視野で気付くことができる。どれくらいの動きならば気付くことができるか、という部分を何度も検証しましたね。
隅田くん:私は研究室に入って半年なので個別の研究テーマはまだ決定していないのですが、興味があるのは音や信号処理を扱う内容です。音は物理現象ですから、すべて数式で処理することができるんです。それに基づいて実際にプログラムを作り、音の分析や合成を行う研究に取り組みたいと考えています。
平井先生:評価実験が必要な時は、互いに被験者として参加します。直接研究に関わっていなくてもいろんなテーマに触れることができると思いますよ。学生同士刺激を与え合って、学びを深めていってほしいですね。
文化学部 4年 猿渡 葉月
今後の研究の展望をお聞かせください。
平井先生:学部としては、IT系のエンジニアを育てることを目標としています。プログラミングのスキルや知識がコアにはなりますが、エンジニアとしての考え方や論理的な物事の進め方も身につけてもらいたい。自分の研究テーマだけではなく、周りの研究も通して多面的にエンジニアとしてのスキルを培っていってほしいですね。
世の中の潮流としては、今後も人とテクノロジーが共存できる仕組み作りは進んでいくと思います。IoT(Internet of Things)という言葉がありますが、テレビやデジカメをはじめ、モノをインターネットに接続するという流れは既に始まっていますよね。IoTとは、このようなデジタル機器以外の“モノ”にもセンサーを含むコンピュータの機能を持たせ、インターネットに接続することで、モノの状態を把握したりコントロールしたりすることを指します。ユビキタス社会とはまさにこれがありとあらゆる物事で実用化されること。さらに最近注目を集めている人工知能もどこまで発展していくのか楽しみですね。医療分野に応用すれば、症状の予測も含めて健康管理ができるようになったり、日常生活の中で「これをやっておくといい」という予知ができたりするでしょう。機械による指図ではなく、アドバイスという形で知らせる、ほんの少しおせっかいなシステムの存在が私たちの生活をスマートにしてくれるのではないでしょうか。
京都産業大学で学ぶ魅力は?
隅田くん:研究室は先輩・後輩の距離が近いなぁと感じます。コンピュータ理工学部では「寺子屋」と呼んでいるのですが、院生や学部の先輩が研究室に常駐して、勉強の指導やアドバイスをしてくれる制度があって。履修、自主学習のサポートだけでなく生活の相談にも乗ってくれるので、1年次からとても助けられています。
平井先生:コンピュータサイエンスやIT系の様々な分野を学ぶ場として、京都産業大学は申し分のない環境だと思います。「ΞHome(くすぃーほーむ)」をはじめ、研究施設も整っていますし、学生たちも熱心に取り組んでいます。
猿渡さん:キャンパスにはいろんな人がたくさんいて、活気のある大学だと思います。授業で違う学部の人とも交流することも多い。やっぱり文系も理系も同じキャンパスにあるからこそさまざまな考え方が生まれるのだと思います。人と人が関わり刺激を受けあって、新たなものが産まれる、まさに「むすびわざ」こそ京都産業大学の魅力なのではないでしょうか。
「ΞHome(くすぃーほーむ)」
京都産業大学の校舎内に設置された実生活可能なマンションタイプの実験住宅。日常生活の行動計測やインタラクションの分析、新しいユーザインタフェースやインタラクティブシステムの日常的・長期的使用実験の場として利用されている。