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人権教育啓発講演会「自殺問題を考える〜私たちに出来ること〜」
平成19年度第2回人権教育啓発講演会「自殺問題を考える〜私たちに出来ること〜」(人権委員会主催)が12月12日(水)、図書館ホールで開催され、あしなが育英会虹の家課・西田正弘課長と「こころのカフェ きょうと」自死遺族サポートチーム代表・石倉紘子氏が講演、教職員、一般市民の75人が参加した。
主催者を代表し、人権委員会・河野勝彦委員長が挨拶。灘本昌久・人権センター室長が司会を務め、講師の紹介に続き、講演会に移った。
西田正弘氏の講演
西田氏は 1.「3万人が自殺で死なないと1年が終わらない」 2.「社会経済・職業との関係(失業率との関係性)」 3.「遺児・遺族の声が『自殺対策基本法(06年6月)』」に結びついた。」 4.「未遂者・遺族支援について、」 5.『自殺』をどのように捉えなおすか」といった項目に沿って話を進めた。
西田氏は、2000年から、急増する自死遺児(自殺で親をなくした子ども)のケアを開始。文集「自殺っていえない」を遺児学生とともに発刊、12万部が読まれ、その後「自殺って言えなかった。」の刊行(2002年)に携わった。
遺児達の声を聴いてみると「自分のせいで親が自殺した」、「自分も将来、自殺するのではないか」と考え、「どんなに貧しくても、親にはずっと生きていてほしかった」と感じている遺児が多いことがわかった。
この取組みはしばしば報道され、遺児遺族のケアと自殺防止の必要性の声が高まり、昨年6月「自殺対策基本法」が制定された。
自殺するのは「心が弱いから」と個人的な問題として捉えられることが多いが、不況によるリストラや介護疲れ、多重債務などの社会的要因により、追い込まれた末、自死に至るケースが多い。西田氏は、「対策は社会的に取組む必要がある。まずはこのことに関心を持ってほしい」と話した。
石倉紘子氏の講演
石倉氏は、1.「私が体験したこと」 2.「遺族の現状」 3.「遺族支援とは」 4.「私たちにできること」といった項目に沿って話した。
石倉氏は保育士として働いていた85年、夫(当時42歳)を自死で失った。夫が自死したという知らせを受けた時、「義父から、もうこちらにこなくていい。息子が死んだのはあなたのせい。」と言われ、遺体にも会わせてもらえなかった、と当時を語った。とても仲がよかった夫がなぜ自分を置いて先立ったのか、不可解であると同時に、自死を防げなかったという自責の念にかられ続けた。自らも命を絶とうとする日々。周囲にも自死遺族であることを隠し続ける生活が続いた。
阪神淡路大震災(95年)をきっかけにボランティア活動を開始。そこで自殺などの孤独死を目の当たりにし、その人の生きた証が粗末にされていることを痛感した。と同時に夫の死を隠し続けることは夫に対して大変な人権侵害をしていることに気づき、夫の死を無駄にしたくない、という強い気持ちに駆り立てられた。そんなときにNHKテレビ「自殺っていえなかった」を見た。若い大学生や高校生が勇気を振り絞って本名で発言をしている姿に強烈な衝撃を受ける。
石倉氏は自分の人生を振り返り、自死遺族が自分の人生を取り戻すためには、辛い体験、苦しい体験を、同じ体験をした人の中で、安心して話し、聴くことにより、自身の体験を整理し、大切な人の自死を受け入れ、自死遺族が人生の主体者として人生に向き合いなおしていくことが必要である、と語る。
その後、保育園を定年退職した2004年に大学に入学し、サークル「いのち・こころ・死について考える会」を発足。2年の活動後、大切な人を自死で亡くした遺族を支える会「こころのカフェ きょうと」を昨年2月に設立した。「繰り返し語ることによって、当時、義父が‘あなたのせい’と言わざるを得なかったことが理解できました」「懸命に生きた夫の人生を証し、人間としての尊厳を取り戻せることができました」と自ら語ることの大切さを説いた。
質疑応答では外国と日本の比較、自殺者数の推移と比率、自殺防止のために周りの人が気をつけることなどについて質問が続いた。