コンピュータ理工学部ネットワークメディア学科 中島 伸介 教授

子供や高齢者を含む一般ユーザを対象に簡単に扱え、信頼性が高く、
効率的な情報システムを研究

 相対的な価値観でユーザの意図と嗜好を的確に捉える情報システムの構築。
 Web情報の信頼性向上を目的としたブロガーの熟知度に基づくブログランキング方式の開発。
 その時々のユーザが置かれている状況を考慮したフィット感の高い情報推薦方法などの実現を目指す。

コンピュータ理工学部ネットワークメディア学科 中島 伸介 准教授

人間は相対的な表現(価値観)で意志を伝えることが多いという点に着目

 子供や高齢者を含む一般ユーザに向けた簡単・安心・便利な情報システムの実現を目指しています。具体的には(1)「簡単に扱える情報検索」(2)「安心して利用できるWeb情報」(3)「便利な情報推薦」の実現に向けた研究を行っています。

 「簡単に扱える情報検索」とは、人間は相対的表現によって自分の意志を伝えることが多いという点に着目して、ユーザの相対的価値観に基づいた効率的な情報検索手法を探究しています。ここに2つのサンプルデータ(集合)があるとします(図1参照)。その中から選択したモノが結果的に同じでも、選択の意図は異なるかもしれません。注目したのは、選んだモノと選ばなかったモノの相対的関係です。たとえば、他がすべて黒色の中から灰色を選んだ人は、灰色が欲しいのではなく、もっと白っぽいモノを望んでいると推察できます。逆に白っぽいモノの中から灰色を選んだ場合は、黒っぽいモノを求めているのでは、と推察できるわけです。この選んだモノと選ばれなかったモノの差異に着目し、これを強調することでユーザの意図に合致した検索を実現する方法を「差異増幅型適合フィードバック検索」と呼んでいます。相対的な価値観に注目した別の検索システムについても研究を行っています。「相対的マッピング処理に基づく相対的情報検索」です。たとえば、何度も沖縄を訪れて好みのホテルがある人がいたとします。その人が今度はじめてマイアミへ出かけることになった場合、双方のホテル情報に精通している旅行代理店の担当者は「沖縄のこのホテルがお好みであれば、マイアミではあのホテルがお気に召すはずです」と推薦できるわけです(図2参照)。このようにデータ集合[A]における要求に基づきデータ集合[B]での検索を行う推薦システムを実用化したいと考えています。この手法はユーザの嗜好を的確に捉えた画期的な方法であり、多彩な分野で活用することができます。

Web上の有識者(重要なブロガー)を特定し信頼性の高い情報提示システムを開発

公開予定のブロガー熟知度に基づくマニアランキングのイメージ

 次に「安心して利用できるWeb情報」としては、信頼性の高い情報の取得に関する研究を行っています。たとえば、グーグル(Google)を使ってWeb検索を行うとランキングされた結果が返ってきますが、このランキングはWebサイトの注目度(人気度)を反映したものであり、情報の信頼性を評価したものではありません。では、信頼性の基準をどこに置けばよいのかということになりますが、私が注目したのは、情報の出所や背景です。つまり、権威者や有識者からの情報は、そうでない情報よりも信頼性が高くなるという考え方です。そこで、私はWeb情報の信頼性を向上させるために、ブロガー(情報の書き手)の熟知度に基づいたブログランキング方式の開発を進めています。ブログに着目した理由としては、ブログは、その書き手(ブロガー)が過去に発信した記事を追跡するのが容易であり、このブロガーの特性を解析することが可能だからです。ブロガーの熟知度判定は、過去に投稿したブログ記事の解析によって行います。これにより、トピック毎に熟知度の高いブロガーを特定することができ、信頼性の高い情報の獲得が可能になるのです。この熟知度判定に基づくブログランキングのもう一つの利点は、提示された幾つかのランキングから、そのトピックに関する視点を選択できることです。例えば、ある政局に関する話題に対して、自民党支持者の視点のブログと民主党支持者の視点のブログ等を選択することができます。つまり、ブロガーの特性を理解した上でブログ記事を閲覧することができるため、ユーザがその記事の信頼性を推し量ることが可能となります。なお、本研究は「株式会社きざしカンパニー」との共同研究として行われており、開発したシステムのβ版(マニアランキング)が8月末頃に「株式会社きざしカンパニー」のWebサイトにて公開される予定です(図3参照)。

ユーザの置かれた状況を考慮した情報提示

状況によって変化する嗜好の例

 「便利な情報推薦」としては「状況依存型ユーザ嗜好モデリング手法」を研究しています。
 「状況依存型ユーザ嗜好モデリング手法」はユーザが置かれている状況(コンテキスト)を考慮して、その時の嗜好に即応した情報推薦を行うための手法です。たとえば、焼肉が好きでも朝に一人でお店に行く人はまずいません。同じようにオープンカフェが好みでも雨の日に出かける人は稀です(図4参照)。つまり、フィット感の高い情報推薦を実現するためには、時間・天候・同伴者など数々の状況に関する適切な配慮が不可欠なのです。ただし、単純に状況データを細分化するだけでは個々の状況データの影響が小さくなるため、結果的に全体の精度が落ちてしまいます。したがってユーザの嗜好に確実に影響する状況だけを、いかに的確に抽出するかという点が課題となります。現在、飲食関係の他に通販、就職活動、ブライダルなどの分野への活用も検討しています。

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