宇宙から彗星の撮影に成功!(神山天文台、JAXA/立教大/東大等と連携)

 京都産業大学・神山天文台の河北秀世台長(理学部教授)は、立教大学理学部・亀田准教授やJAXAと共に、宇宙から彗星の撮影に成功しました。観測には、立教大が東大およびJAXAと共に開発した 望遠鏡「LAICA」を用いています。この望遠鏡はJAXAが打上げた 超小型深宇宙探査機プロキオンに搭載されており、今回の観測は宇宙空間から行われました。観測対象となったのは、現在、ヨーロッパの彗星探査機「ロゼッタ」が探査を行っているチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星です。

 LAICA望遠鏡は、本来、地球の周りを広くおおっている水素ガスの層「ジオコロナ」を宇宙空間から撮影することを目的に開発された望遠鏡です。一方、河北台長は彗星科学を専門としており、これまでにも地球惑星科学振興西田賞(日本地球惑星科学連合、2014年度) をはじめ複数の賞を彗星科学分野の研究で受賞しています。今回、LAICA望遠鏡を使って彗星の観測ができないかと望遠鏡の開発を主導した立教大学・亀田准教授から相談を受け、「この望遠鏡は、宇宙からしか観測できない水素ガスの発する光を観測できる貴重な望遠鏡。今まさにヨーロッパの彗星探査計画『ロゼッタ』が進行中のチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星ならば、彗星近くに留まって観測を続けている探査機との連携によって新しい知見が得られるに違いない」(河北台長・談)と、同彗星の観測を提案しました。また、彗星の研究では新進気鋭の若手研究者であり本学の卒業生でもある新中善晴博士(国立天文台/リエージュ大学/日本学術振興会特別研究員PD)とも協力して、亀田准教授らと共に9月13日に同彗星が発する水素ガスの光を撮影することに成功しました。

 通常、彗星から放出されるガスは球形の広がりを示すのが一般的ですが、水素原子からなるガスでは、太陽からの強烈な紫外線によって、太陽の反対方向に少しひしゃげた形になることがあります。しかし、今回、観測で得られた水素ガスの分布は、予想を上回る非対称性を示しており、「ジェット」と呼ばれる局所的なガス噴出の影響を受けている可能性があります。本学大学院にて彗星の観測的研究をテーマとして学位を取ったばかりの新中博士は「このようなジェット起源とみられる彗星ガスの非対称性が観測されたことは、これまでには無いのではないか」と語っています。このような観測が成功した鍵は、LAICA望遠鏡の性能(空間的に細かい構造を区別できる能力:空間分解能)の高さにあります。研究チームでは、今後、更に詳細な解析を行い、来年春に米国ヒューストンで開催される国際学会での発表を目指しています。

 詳しくは、以下のサイトをご覧ください。

図:紫外線波長(水素原子のライマンα遷移による発光)で撮影したチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星。普通の恒星は点源で球形に写っているのに対し、彗星が非対称な形状を示していることが分かる。

写真:現在、ベルギーのリエージュ大学にて彗星の研究を行っている新中博士(本学にて2014年度に博士号を取得)。今回の観測計画立案に、貢献した。

 図:深宇宙探査機プロキオン(イメージ図、東京大学/JAXA提供)

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