再帰新星「らしんばん座T星」の増光初期の分光データ取得に成功

再帰新星「らしんばん座T星」の増光初期の分光データ取得に成功

 画像中央の星が、今回分光観測した新星。
荒木望遠鏡の二色同時撮像装置(ADLER)で観測。

 2011年4月14日、再帰新星として知られるらしんばん座T星が増光していることが、アメリカ ハワイ州のM. Linnoltさんによって発見され、世界中の天文学者に報告されました。京都産業大学神山天文台では、新井彰(あらい・あきら)特定研究員および磯貝瑞希(いそがい・みずき)特定研究員が、この日の夕方から荒木望遠鏡をこの天体に向け、分光観測を実施しました。今回の観測で、再帰新星が爆発によって増光を開始する初期の段階の貴重なデータを世界で初めて取得することに成功しました。

 新星は、ふたつの星が互いの周りをまわりあう連星と呼ばれる星のうち、片方の星のガスがもう片方の星に降り注ぎ、その表面で急激な爆発を起こしたときに明るく輝いて見えるものだと考えられています。一度爆発した新星でも、さらにガスが降り注ぐことによって、1000年から数100万年の周期で再び爆発を起こすと考えられています。特にその周期が短く、数10年の周期で爆発を起こすものを再帰新星と呼びます。

 今回観測されたらしんばん座T星は、1966年以来、45年振りの史上6回目の爆発となりました。CCDを使った近代的な観測装置で観測されるのは初めてのことになります。らしんばん座T星は、新星の中でも珍しく激しい爆発を起こしていない時期(静穏時)の状態もよく観測されています。そこに増光初期のデータが加わることによって、再帰新星の爆発のメカニズムの解明に重要なデータになると考えられます。1966年の爆発の時は6等星まで明るくなりました。これは、夜空の暗い所であれば肉眼でも見える明るさに相当します。今回も、これくらいの明るさまで増光することが予想されますので、神山天文台では引き続き観測を続ける予定です。今回の一連の観測・研究については、文科省の私立大学戦略的研究基盤形成支援事業に採択された研究課題の一環でもあり、日本天文学会などでの発表を予定しています。

画像中央の星が、今回分光観測した新星。荒木望遠鏡の二色同時撮像装置(ADLER)で観測

 荒木望遠鏡F2低分散分光装置(LOSA/F2)で観測した新星のスペクトル(星の光を虹の七色に分けたもの。左から右にむかって、青・緑・黄色・オレンジ・赤色の光に相当する)。中央付近に飛び出た「とげ」のようなパターンが、爆発で飛び散る水素のガスが発する光。このとげの形から、爆発の構造などを調べることができる。新星爆発のメカニズムに関する情報を取り出すにはスペクトルの観測が不可欠なため、本学のような分光観測を実施できる天文台が重要な拠点となっている。

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