チェコ共和国 パラツキ—大学

外国語学部 英語学科 イングリッシュキャリア専攻 山本 里緒さん

留学先 チェコ共和国 パラツキ—大学 哲学部
留学期間 2015年9月~2016年7月
留学アドバイザー 外国語学部 ギリス・アマンダ教授
出身高校 滋賀県立 国際情報高等学校

長期留学のきっかけ

私が長期留学を決めたきっかけは、高校二年生の夏に参加した海外研修でした。カナダのバンクーバーで約2週間ホームステイをしながら午前中は語学学校、午後はボランティアやアクティビティーに参加しました。その時、私は自分自身の英語力の乏しさにとても悔しい思いをし、また2週間の留学は短すぎると感じました。それ以来、私は大学では一年間の長期留学をするという気持ちを胸に日々勉強に励んできました。

ヨーロッパ・チェコで留学

ペトシーン展望台から、プラハを一望

私がチェコで留学するというのを決めたのは、二年生の春です。一年生の秋学期にヨーロッパの文化について学ぶ特別英語の科目を受講しており、実際にヨーロッパの文化、歴史や社会についてもっと詳しく知りたいという気持ちが沸き、ヨーロッパへ留学してみたいという思いが芽生えました。また2015年度から新しい協定校が数か所加わり、その中にチェコ・オロモウツにあるパラツキー大学があり、ヨーロッパで留学、また新しく加わった協定校というのに惹かれました。

私自身、その時はチェコについて全く知らず、まずチェコがどこにあるのか、何が有名で、チェコ語も全く分からないし、新協定校のため情報量も少なかったです。そこで、チェコやパラツキー大学についてインターネットなどを使用し、リサーチしました。チェコは、ヨーロッパの中心に位置し、“中欧”と呼ばれる国で、四方をドイツ、ポーランド、スロバキアやオーストリアに囲まれ近隣の欧州諸国へのアクセスがとても良いです。首都のプラハは世界一きれいな街ともいわれるほど、未だに、中世の文化や雰囲気が残る綺麗な場所、中欧の歴史はとても興味深く複雑だということを知り、チェコへの興味がますます沸いてきました。またオロモウツはチェコ第5の都市で、中世の雰囲気や建物を多く残しているというのを知り、パラツキー大学でヨーロッパの歴史、文化や言語を学びたいと思ったのがチェコを選んだ理由でした。

履修科目

哲学部 — English Philology
私は秋セメスターに8科目、春セメスターに5科目履修しました。哲学部の専門科目、チェコ語、中欧やヨーロッパに関する授業や語学系の授業などを受講していました。授業時間数は、一クラス90分で、チェコ語のクラス(週2回)以外は、週1回の授業がほとんどでした。秋学期は週5日授業があり、Modern American Society、Intensive Course of Czech for Foreign students、Survey of Czech Music、Core Fields of European Culture、Woman in the Middle Ages、English 3、Business English、English Grammar Essential の計8科目を受講していました。
春学期は、5科目履修し、週3日授業がありました。Jesus Christ Superstar: 2nd Temple Jud.、Central European Culture and Society、Magic and Witch-hunts in Early Modern Europe、Intensive Course of Czech for Foreign students、Business English 2を受講していました。多くても、1日3科目までが事前事後学習など考慮しての限界かなと自分自身で決めていたので、このような時間割にしました。

ヨーロッパ・チェコならではの授業

受講授業内容

哲学部の授業、チェコ語の授業などがあった大学の建物
・チェコ語
90分の授業を週2回、留学生向けのチェコ語の授業を受けていました。授業は、チェコ語で書かれた教科書と単語帳・文法が英語で書かれたもの、計2冊使用していました。様々な国から来た留学生が受講しており、にぎやかで楽しいクラスでした。チェコ語の授業はとらなくても良いものでしたが、せっかくチェコに留学に来ているし、チェコ語が少しわかったほうが便利かなと思い授業を受けていました。チェコ語はスラブ言語といわれていて、格変化がたくさんありとても難しい言語といわれています。しかし、受講生全員がゼロからのスタートなので、チェコ人の先生がわかりやすく教えてくれました。チェコ語はとても難しいですが勉強しがいがあります。授業内では、CDを使ってリスニングをしたり、チェコ語の単語がかかれたカードを使ってグループで競い合うゲームをしたりしていました。レッスンが終わる毎に、小テストがあり週末はよく部屋にこもって勉強していました。

中欧文化と社会について

~Central European Culture and Society~

春学期には、この中欧についての授業を履修し、中欧とは何か、中欧の文化・歴史、中欧と呼ばれる国々には共通する価値観があるのかなど、簡単そうに見えて実は、暗く複雑な中欧文化とその歴史について学びました。授業は、週1回90分間でした。クラス内ではディスカッションをしたりドキュメンタリーや映画を観たりします。毎回リーディングの課題がたくさん出され、学期内に中欧についてリサーチをし、レポートを一つ提出します。チェコが中欧の国であるからこその授業だと感じたし、中欧についての知識を深める良い機会でした。

近世ヨーロッパにおける魔女狩り

~Magic and Witch-hunts in Early Modern Europe~

私は「魔法と魔女狩り?」と、最初授業の名前を見たときに思いました。ヨーロッパといえば魔女狩りが行われていたことで有名で、なかなか日本ではこのような授業を受けられるのは少ないと思い、受講しました。授業は講義形式で、毎回リーディングが課題として出され、リーディングに基づいてのまとめと質問を次回までに書きまとめ、提出するというのがこの授業のスタイルでした。集められた質問は授業内で、先生や生徒全員でディスカッションをする形でした。授業では、まず「Witch」とは誰を指すのか、「Magic」とは何か、魔女と言っても女性だけだったのかから始まり、どうして当時の人々は魔女や魔法を信じたのか、また魔女狩りが長い間行われた背景などについて学びました。

英語について

英語の授業を2セメスターともいくつか履修しました。ビジネス英語を勉強したかったので、両学期ともビジネス英語のクラスをとりました。1セメスター目の秋学期は比較的に、英語のクラスを多くとり、春学期は英語の授業を減らし、学部のより難しい専門科目を受講していました。英語の授業のレベルはそれほど難しくなく、取るものによっては易しく感じるものもあるかもしれません。どの授業においても、ディスカッションが多いと感じました。私が一番感じたのは、英語の授業ではディスカッションに参加できても、学部の専門科目の授業では、あまりディスカッションに参加できないことが多く、それがとても悔しかったです。それも、自身の英語力よりも、ヨーロッパの歴史や文化についてあまり知識がないため、ディスカッションに参加する前に、先生やヨーロッパからの留学生の発言がわからないことが多く、とても辛く感じました。その時に、ヨーロッパへ留学するのならば、事前に少しは日本でヨーロッパの歴史についての知識を培うべきだと感じました。

授業外の時間

チェコ語の教材
授業内よりも、授業外の自習時間のほうが多かったです。チェコ語や英語の宿題はほぼ毎週あり、学部の専門的な授業をいくつか取っていたため、週末や時間があるときにはリーディングの課題に追われていました。毎週20ページほどのリーディングを5時間ぐらいかけて寮の部屋で黙々と行っていました。また、学期末が近づくと最終レポート提出が重なり、秋学期は2つレポートを書きました。春学期は3つレポートを書き、それ以外にもチェコ語のファイナルテストがあったため、期末試験期間は寝る時間を惜しんで、図書館で調べ物をしたり寮の自分の部屋でレポートとテスト勉強に励んだりしていました。同じチェコ語を受けている友人たちとチェコ語の勉強をしたりチェコ人の友達に手伝ってもらったりしていました。海外の大学は、レポートの求められるレベルが高く、ページ数など多いと聞いていましたが、実際に英語で5~10ページのレポートは初めてだったので、とても苦戦しました。内容もとても専門的で、参考文献はトピックによっては、英語で書かれたものが大半だったりチェコ語だったりと、参考文献探しにも時間が掛かりました。またそれらを読む時間も相当掛かりました。しかし、書き終わった後は達成感があり、良い評価ももらえたので、それが自身にも繋がりました。

滞在先

~オロモウツでの寮生活~

パラツキー大学では留学生は、ホームステイではなく大抵が、寮に住むという選択をしています。中には、数カ月寮に住んで、その後留学生たちと一緒にアパートでシェアハウスする人がいたりします。また、医学部に留学している学生はアパートを借りて住んでいたりします。 私の場合は、留学中はずっと同じ寮に住んでいました。学生寮はいくつかあって、私が住んでいた寮はEnvelopaといって比較的中心地から近く、大学のオフィス、授業校舎、大型スーパーやデパートなど約20~30分程度の徒歩圏内でした。トラムと呼ばれる路面電車は必要な時以外は使わなかったので、節約できたと思います。寮内にはたくさん部屋があり、二人で一部屋が基本でした。flat内には2つ部屋があり、バス・トイレ、洗面台、冷蔵庫などは、4人共用でしたが、部屋には机、ベッド、ランプなど人数分設置されていました。 キッチンは寮の部屋には無く、寮のフロアごとに一つずつ設置されており共用でした。キッチンには、流し台、電子レンジやオーブンがありました。また、ランドリールームが寮内にあったため、2時間40コルナ(約160円)払って洗濯していました。私の場合は、ルームメイトとトイレットペーパ、洗剤などを一緒に出し合って購入したり、洗濯も一人20コルナを出し合って交互に洗濯して節約していました。また、寮から歩いて数分のところにMenzaといわれる学生食堂があり比較的安い価格で食事ができます。私は、一度しか行ったことがありませんが、安く手ごろに食事ができて多くの学生がよく通っていました。
Envelopa寮前にて
住んでいた寮の部屋

異文化交流

私の寮には、チェコ人が多かったですが、法学部や教育学部の留学生も多く住んでいました。私は日本人の友人がルームメイトで、隣の部屋には、秋学期中はギリシャ人の留学生二人と4人で生活していました。留学生同士なので、英語を話す良い機会になったし、お互いの文化を教えあったり、誕生日パーティをしたりと寮のflat内でも異文化交流ができたと思います。ギリシャの手作りのお菓子をくれたりきれい好きなのかよく掃除も率先してしてくれていました。彼女たちは1セメスターだけの留学だったので、お別れするのはつらかったですが、新しく春学期にはスロバキア人とポーランド人の留学生が加わりました。寮内で一緒に誕生日パーティを開いたり、カフェに行ったりと、様々な国からの留学生と仲良くなったりできるので、初めての寮生活で不安でしたが、楽しく良い経験ができました。留学生だけでなくチェコ人とも仲良くなれたり、中には日本語学科のチェコ人も住んでいたりするので、チェコ語がわからず困ったときに、よく助けてもらいました。隣のflatに住んでいたチェコ人の友達とは、一緒にキッチンで料理をしたりランチを食べに行ったりしていました。英語だけでなく、英語を使って日本語を教えたり、ギリシャ語、ポーランド語、チェコ語などを教えてもらったりと寮では多文化交流できて、たくさんの出会いがありました。

休暇中

~オロモウツ~

大学の授業がない時や週末は、課題に追われる時がありましたが、それ以外の時はルームメイトや友達と近くのショッピングモールに買い物をしに行ったり、レストランにランチを食べに行ったり、カフェに行ったりしていました。オロモウツはプラハに比べ物価が半分ほどで安く、ランチもドリンクを頼んでも、100コルナ(約430円)ほどでした。オロモウツだけでなく、チェコにはTea Houseがたくさんあり、チェコ人はそこでお茶や紅茶などを飲んでゆったり友達と話しながら過ごしたりするのが好きみたいです。私もチェコ人の友達とたまに、Tea Houseにいってお茶を飲みながら、ゆったり過ごしていました。また。カフェとは違い、ゆったりとした落ち着いたところが多かったです。

オロモウツの中心広場には、世界遺産に登録されている三位聖一体柱といわれる建造物があり、そこは観光スポットとして有名できれいです。時々、ここでマーケットが開かれ、手作りのアクセサリー、スカーフ、小物類など様々な種類のチェコらしい物が購入できます。クリスマスやイースターの時は、大きなマーケットが開かれ、クリスマスツリーやイルミネーションが装飾されてとてもきれいです。チェコの伝統的な食べ物などが多く並び、またPunčとよばれる果物が入ったホットワインをチェコではよくこの時期になったら飲むのが習慣みたいです。寒いオロモウツの冬にはぴったりの飲みやすいクリスマスの飲み物でした。クリスマスマーケットではコンサートが開かれ、チェコの伝統的な音楽の演奏や劇などが披露されていました。

12月 オロモウツ
クリスマスマーケット
ホットワインのPunč

~オロモウツの街並み~

オロモウツはプラハに比べて田舎で、パラツキー大学があるためたくさんの学生が住んでいます。そのため学生の街ともいわれています。平日は、学生が多いのですが、週末になると実家に帰るチェコ人学生が多く寮など街中は、静かです。自然豊かで、夜は比較的安全で住みやすいところでした。中心広場にいくつか教会があり、教会にある塔に登るとオロモウツを一望できたり、大きな公園がいくつかあってジョギング、サイクリングやピクニックなど自然豊かでした。建物も歴史的な街ということで、古くから残っているものも多くあり中世の歴史的な雰囲気が感じられました。
広場の教会の塔からの眺め
有名な三位聖一体柱にて

~ERASMUS ~

ヨーロッパにはErasmusとよばれるプログラムがあります。パラツキー大学にも交換留学生だけでなく、多くのErasmusの学生が留学していました。またESNという留学生やErasmusの学生をサポートする団体があり、バディ制度や留学生向けのアクティビティーがたくさん企画されていて、私自身も積極的に参加して留学生たちと関わるようにしていました。二月にESN企画で、オロモウツからバスで一時間ほどにあるスキー場に行き、留学生たちと一緒にスキーをしたり、春にはまた、留学生たちとポーランドへ三泊四日で旅行に行ったりしました。この旅行では、アウシュビッツ強制収容所やヴィエリチカ岩塩坑へのツアー、17世紀のポーランドの王都であったクラクフという街へ行き観光したりしました。団体料金なので、個人で行くより安く済み、留学生との仲もより深まるのでこういったErasmusのアクティビティーは新しい出会い、様々な国の留学生たちと交流したり英語を話したりの良い機会にもなったのではないかと思います。私が一番印象的だったのは、アウシュビッツ強制収容所を訪れたときです。日本で歴史の授業の時に学んだ場所へ、自分が訪れるとは思いもしませんでしたが、そこでは戦争の悲惨さと痛感し、宗教や人種差別など深く考えさせられました。留学生の中に、ドイツ人の女の子が参加していたのですが、自分の国の歴史やヨーロッパについて、やはり実際に、足を運び知ることが大切だと思いました。
ESN主催 留学生とスキー
ポーランド・クラクフにあるお城

~ヨーロッパ旅行~

6月 オランダ 風車村にて
休暇中に友達とヨーロッパ旅行をしました。計8か国へ旅行に行き、ヨーロッパの文化や雰囲気を肌で感じることができ、旅行から帰るとチェコの良さ、様々な文化や価値観の違いなどに改めて気づくことができました。客観的にチェコについて、また日本について考えられるようになったのもこの旅行のおかげもあるのではないかと思います。チェコから出て、西欧の大国に旅行に行くと、その国の良さ、人間性、価値観、文化など様々なものを実際に見て、また中欧とは違った雰囲気や文化を比べることができ、自分自身が持つヨーロッパに対する考えが変わりました。

留学の成果

約10ヶ月間のオロモウツでの留学は、私自身をいろんな意味で成長させてくれたと思います。最初は、異国の地でチェコ語もわからないし、どうなるのか心配でした。留学し始めてすぐ、ホームシックになって泣いたり人間関係で悩んだり、自分自身の英語力や進路についてすごく考えたりしていた日々を過ごしていました。そういった時に励まして支えてくれたのは、家族や一緒に留学していた友達でした。リーディング、レポート、期末テストに追われていた時や、本当に辛くて諦めそうになった時もあります。学部の授業は、レベルが高くて全くディスカッションに参加できず、毎回授業後は心が折れていました。授業を休みたいときもあったし、レポートを出さなくてもいいかなって考える時もありました。しかし、一生懸命最後まで諦めずに頑張ったおかげで、今の自分がいるし、自信にもつながっていると思います。たとえつらいことがあっても、諦めずに、また新しいことへ挑戦するチャレンジ精神を持つことの大切さ、人と人とのつながりの大切さをこの留学で改めて気づくことができたと思います。 いろいろな国の留学生と関わることができて、英語が上達したということだけでなく、自分の視野が広がったのもこの留学の成果だと思います。また日本にいるときには気づかなかった、価値観や文化の違いを感じることができたし、それが新しい発見で楽しかったです。

しかし、留学中は楽しいことだけでなくつらい経験もしました。自分ではどうしようもできないこともあって、悩んでいた自分もいました。そういった楽しいだけでなく、苦い経験もあったこの留学のおかげで、自分を客観的にみて、また向き合えることができたと思います。

今後について

この留学において、私は自分と向き合えたからこそ自分自身の強みや弱みを知ることができました。チェコでの留学生活で経験したこと、学んだことを就職活動の際に活かせればと考えています。本学において、これからも英語のみならず様々な分野で勉学に励みたいと思います。また、これから留学を考えている人の手助けができれば良いなと思います。

最後になりますが、京都産業大学海外留学特別奨学生として採用していただき、本当にありがとうございました。また、国際交流センターの方々、留学アドバイザーのギリス先生には交換留学応募時から帰国後、そして単位認定までの長い間、いろいろな相談に乗っていただきサポートしていただいて、とても感謝しています。ありがとうございました。
留学中は、楽しいことだけでなく、つらいこともたくさんありました。私一人の力だけでなく、日本で応援してくれていた家族、友人、先生方、多くの人々の支えがあったからこそ、無事に留学生活を終えることができたと思います。この留学経験を活かして、今後も本学において勉学に励むとともに、自分の将来に向けて努力を惜しまず、成長していきたいです。本当にありがとうございました。

PAGE TOP