平成28年度 学部授業・カリキュラム改善に向けた「年間報告書」

1.「学習成果実感調査」についての分析結果

平成28年度に学習成果実感調査を実施した春学期29科目および秋学期38科目(いずれも履修者数10名以上)では、科目の満足度(設問6)の平均値は、それぞれ3.84(最低2.94、最高4.58)および3.83(最低3.14、最高4.58)であり、著しく満足度の低い科目はなかった。今年度の課題とした「事前事後学習の充実」については、これに充てた時間(設問3、7段階の評点)に関する評点の平均値が春学期で2.17(65分程度、昨年度2.03)、秋学期で2.39(75分程度、昨年度2.20)であった。さらに詳細に見てみると、春学期実施科目において事前事後学習を行った時間が90分以上であった学生の割合は平均15.0%(昨年度11.2%)、30分未満であった学生の割合は34.0%(昨年度37.6%)であった。秋学期実施科目については、事前事後学習が90分以上の学生の割合は平均17.0%(昨年度13.5%)、30分未満の学生の割合は平均29.0%(昨年度36.8%)であった。これらの結果から、わずかではあるが課題とした「事前事後学習の充実」が前進したものと考えられる。また、一部(15%程度)の学生は自主的に事前事後学習を行う習慣を持つが、多く(30%程度)の学生は、ほとんど事前事後学習を行わずに授業に出席していることも明らかになった。ただし、そのような学生の割合が低い(5%未満)科目もあることから、教員の適切な指導や教授方法の工夫(課題やレポートの指示)により改善できる可能性があるものと考えられる。

2.「公開授業&ワークショップ」についての報告

(1)参加人数

  1. 「公開授業」:18人
  2. 「ワークショップ」:19人

(2)ワークショップでの意見交換内容

公開授業の科目では、レポート課題において、学生が作成したレポートを学生が採点するというピアレビュー方式を採用していた。この方法について、講義担当者から詳細な実施方法やその効果について説明を聞いた後、出席した教員から実施の方法や効果について多くの質問が出された。実施の方法などには工夫が必要であるが、この方式を参考にすることで事前事後学習に充てる時間が増え、授業内容の理解と知識の定着が期待できるとの意見が多く出された。その他、板書の仕方、ノートの取らせ方、学生への発問の仕方などについて、意見が交換された。

3. 総括

(1)1. と2. において確認された、本学部の授業・カリキュラムの長所

本学部の授業は、学生の授業に対する満足度および学びの面白さなどの設問において5段階評価で、4近い評価(学部平均)を受けており、学生から総じて良好な学習成果の実感が得られている。これは、各教員の担当科目に対する豊富な知識と熱意を反映した結果であると考えられる。また、「スライドや予習・復習プリントが有効に使われている」、「小テストなどによって理解が深まった」などの感想が出されており、授業の進め方についても工夫がなされている授業が多いものと考えられる。
本学部のカリキュラムの特徴として、3学科ともに2年次秋学期から授業を担当教員が実験科目をリレー形式で担当していることも、授業に対する高い満足度と関連しているものと考えられる。授業で身に付けた知識の実践、あるいは実験の後での知識の再確認は、学生にとって学習が単なる机上の知識にとどまるものではないことを体感できる機会となっているはずである。

(2)1. と2. において確認された改善すべき点

本年度の課題としてきた「事前事後学習の充実」については、前年度に比べて前進は認められたものの、すべての学生が十分な事前事後学習を励行しているとは言えないのが現状である。今年度は、事前事後学習の励行を促す授業形態としてピュアレビュー方式が採用されている講義を公開授業とし、担当教員の意欲的な取り組みを紹介する場を設けた。また、ワークショップでも事前学習の時間を確保させるための取り組みについて議論することによって、事後学習の励行させるための取り組みについて学部教員の意識を高めるように努めた。これらのことが、事前事後学習に充当した時間の増加につながったと考えられる。しかしながら、多くの知識量と高度な理解・判断力を要求される生命科学の専門分野における知識を身に付けるためには、事前学習に加えて授業で習った内容を確実に復習することが不可欠であり、本年度の学習成果実感調査で明らかになった事前事後学習の時間では、明らかに不足している。
一方、事前事後学習を30分未満しかしていない学生の割合が数パーセントに過ぎず、逆に90分以上の時間を充てている学生の割合が70%を超える科目も見られる。このことは、授業の工夫によって事前事後学習の充実を可能にできることを示している。今年度に引き続いて、このような授業を担当する教員の取り組みや工夫について、公開授業やワークショップなどを通じて学部の全教員に紹介できる機会を設けるべきである。

4. 次年度に向けての取り組み

自然科学系の中でも、とくに生命科学の専門分野において要求される理解力や判断力は基礎知識の蓄積の上に養われる。ところが、本年度に実施した「学習成果実感調査」では、大多数の学生は基礎知識の習得と蓄積に不可欠な事前事後の自主学習に充てる時間が圧倒的に不足していることが判明した。
そこで、次年度も引き続いて予習・復習を確実に励行させるための授業形態の工夫を目標として挙げる。具体的には、Moodle等を用いて事前課題を与え予習時間を増やすとともに、事後復習を徹底指導する、授業において小テストを実施する、さらに宿題を課しことにより学習到達度・理解度をこまめにチェックするなどの取り組みを、担当教員が実践することで学生の事前事後学習が習慣化するように努める。また、すでに事前事後学習の励行について効果をあげている教員の取り組みを、公開授業やワークショップを通じて学部教員全員に紹介する機会を設ける。
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