久永翔(2011卒業)

 こんにちは。2011年にドイツ語学科を卒業した久永翔です。
 現在ボン大学で翻訳の勉強をしています。今回、卒業後も何かと面倒を見て下さる島先生からお願いがあり、体験記としてこれを書いています。
 先生からは、現在に至るまでの思い、今の心境、それからみなさん在校生へのメッセージなどを書いてほしいということなので、それらについて書きたいと思います。

 2010年から一年間交換留学していたのですが、その際一つの目標であった、ドイツの大学入学資格試験に合格しました。しかし帰国後、合格したにも関わらずこのまま正規の学生として入学しないのは、何かすごくチャンスを逃しているように思いました。実際、留学していた時にいた正規の学生になるために語学コースに参加していた、他のクラスメートたちの中には満足いく結果が出なかった人もいました。そんなことを考えると、余計にこのチャンスは活かすべきだという思いが強くなりました。また、その語学コースの授業は試験のためのコースであるため、話す、読む、書くなど全ての面を強化していくわけですが、どんな授業も楽しかったし、少なくとも苦ではありませんでした。帰国後の思いや留学していた日々を思い出すと何より、ドイツ語が好きということを再確認したし、それこそがドイツで勉強したいという大きなきっかけであり原動力でした。

 ボン大学を選んだ理由は、とてもシンプルです。島先生に相談していく中で、先生がよく知るボン大学の良さを知ったことと、西ドイツに住んでみたかったという二つです。というのも、どこで勉強するかということより、自分のしたいこととかこれからすることに、どれだけ力を注げるかということが重要だと思っているので、あまり場所にこだわりはありませんでした。ボンはとてもいい街です。大きくもなく小さくもなく、ベートーベンと大学が有名な旧西ドイツの首都です。都会過ぎない感じが大好きで、暮らしやすくていい環境で勉強に取り組めています。

 今僕は翻訳の授業に加えて、選択必修科目でアジア言語を一つ学ばなければならず、中国語の授業にも参加しています。入学から半年以上が経ち、現在2学期目で余裕も出てきていますが、特にこの中国語の授業では予習してくるのが当たり前というか、みんなレベルが高くて、すごいなあという印象です。
 「ドイツ語『を』学ぶ」以上に、「ドイツ語『で』学ぶ」ことになる、とういうのはこちらに来てから島先生がメールに書いたことですが、その通りで、正規の学生としている以上ドイツ語は出来て当たり前ぐらいの気持ちで自信を持っているべきだなというのが、今思うことです。当然、何言ってるのかわからないこともまだまだありますが、そんな時も慌てることなく常に落ち着いて目の前のことに全力で取り組んできたし、これからも変わらず大事にしていきたい姿勢です。またそういった緊張感の中でやっていくことが今はとても刺激的です。



 ドイツに来たばかりでまだまだ未熟で経験も浅い僕が、みなさんに伝えられることは少ないのですが、僕の意見では自問自答することが大事だと思います。島先生によると、長期留学に興味を持つ学生は決して少なくないものの、どうして良いかもわからずにいる在校生がたくさんいるそうです。そんなみなさんに僕が言えるのは、いろんなことを自分に問いかけることが大切だということです。自分に何ができるのか、何をしたいのか、このままでいいのか、など自分自身に聞いてみることで何か見えてくるかもしれません。
 こちらに来てまだ半年ちょっとですが、ドイツの学生も基本的には日本の学生と変わらないという印象があります。入学前はドイツの学生はみんな真面目で大人で、たびたびシリアスなテーマについて議論しているなんていうイメージを持っていましたが、実際の彼らはもちろんそんな学生もいるのでしょうが、少なくとも僕の周りの学生たちは特に日本の学生と違うと感じるところは少ないです。授業面倒だと言いながら、下らないことして喜んで、何を話すって特に重要な話なんてほとんどしません。日本でよく見た光景とほとんど変わりないと思うのです。
 さらにそれぞれ将来に向けた大きな目標があって、今勉強してるといったようなイメージもありましたが、それもみんながみんなそうではありません。例えば、前述した中国語のクラスメートたちですが、ほぼ全員中国語を選んだことに明確な理由はないようです。僕が言いたいのは、みなさんが思っているほどドイツ人、あるいは外国人と日本人に差はないんじゃないか、留学といっても違う国に行くだけで、全く別の世界に行くわけではないということです。
 ただ彼らはこれも先程書いた通り、予習を徹底的にしていたり、授業に臨む姿勢から話を聞く真剣さなど、何と言うか、取り組み方の全力さみたいなものが日本の学生とは全然違う気がします。僕も全部を知ってるわけではないので一概には言えませんが、そんな印象を持っています。

 長期でも短期でも留学を考えている人も迷っている人も、そんなみなさんに言いたいことは、是非飛び込んでということです。理由なんて何でもいいのです。小さなことです。とはいえ日本と違うこともありますから、それには慣れて行く必要はあります。でも、それも大したことではありません。迷いや悩み、本当に留学したらどうなるのだろうといった思いは結局、実際行くことでしか消えないと思うのです。
 一方で、留学することだけがドイツ語上達や自身の成長に意義あることとも思いません。日本にいてもドイツ語が上手くなるための方法はいくらでもあると思いますし、留学したからレベルが上がるというような単純なものでもないと思っています。大事なことは、自分自身がどういう姿勢で取り組むかではないでしょうか。常に何かを意識してやらないかぎり、いくらやっても伸びないと思うからです。留学経験者の多くがこのような根本的なことを、考える瞬間があると思うのですが、留学はそのための一つの機会でしかないと感じています。そしてこのチャンスを全ての人が使えるわけではないので、留学を意識している人にはこのチャンスに挑戦すべきだと言いたいです。

 長々書いてきましたが、この体験談が少しでもみなさんの参考になれば嬉しいですし、何かのきっかけになれば幸いです。

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