酒井 元也(ドイツ)

 留学した多くの人が言うことだとは思いますが、留学した一年の間にいい意味でも悪い意味でも普通に日本で一年過ごすのとは比べ物にならないほどの多くの経験を得ることができた、というのを僕も言いたいと思います。

 僕はもともと初対面の人が苦手ということもあり日本でも友達が多かったとはいえず、そのためまず最初に問題となったのが他人とのコミュニケーションでした。今回の留学で僕は他に6人の京産生と一緒にライプツィヒに留学しましたが僕以外は全員女の子で、その子たちが一緒にいる中に最初うまく馴染むことができませんでした。 だから必然的に、ドイツ人でも他の外国人でも誰でもいいから友達を作らないといけない!という考えが常に頭をよぎっていました。

 僕の住んでいた寮は学生寮だったのですが、今までに聞いていた2人一組ではなく、8人で台所、シャワー、トイレ、洗濯機共用というかなり予想外のものでした。そしてこの台所がいわゆる談話室のようなものになっていて、ご飯を作っている時などはそこで他の部屋の人と話したりすることがあるわけなのですが、当初の僕は英語もドイツ語もできず、当然日本語ができる人も誰もいなかったのでどれだけ向こうが話しかけてくれても何も答えられないという状況でした。ある意味ドイツ語を勉強するために望んでいた状況だったとはいえ、やはりどんなに頑張っても会話にすらならない状況が続いたのは辛いものでした。しかしここで逃げてしまっては結局今までと同じ、そんな自分を変えたくてドイツに来たというのも大きな理由だったのでとりあえず最初1か月、できるだけ台所に行って寮の人たちと話すようにしていました。

 正直いうとやはり言葉が通じないこともあって人によっては何回か面倒な顔をされたりしたこともありました。そんな中でもずっとそれを続けていく内にちょっとずつ打ち解けて、五月ごろからはかなり片言ではあってもなんとか会話といえるものができるようになっていたと思います。特に寮に入ったときに初めて会ったケニア人と隣の部屋だった中国人の2人にはずっと面倒を見てもらったので本当に感謝しています。今思えばドイツに行ってから最初の3〜4カ月が一番大変な時期だったと思います。インターネットを使ってタンデムを探したり、パーティで知り合ったドイツ人に声をかけて別の日に会ってもらったりしていました。そうやって少しずつ周りの人たちとのコミュニケーションをすることはドイツ語だけではなく、自分自身の成長にも大きく繋がっていったと思います。自分自身の成長という意味では同じ日本人の人たちとの新たな交流もとても重要だったと思います。一見せっかくドイツに行ったのに日本人と話すなんて無意味だと思う人もいるかもしれませんが、僕はそうは思いません。ライプツィヒには京産大以外からも何人かの日本人留学生やすでにライプツィヒで働いている駐在の方たちなど多くの日本人がいました。その人たちの多くは自分の考え方を強く持っていて、もちろん納得できない意見や考え方もありましたが自分自身を見つめなおす点ではそれらすべての人たちの話というのはとても参考になるものでした。

 また、単純にかなり深い人間関係を築けたというのもあります。もうすでに日本に帰っている人、まだドイツに残っている人、再びドイツに帰るつもりの人などいろんな人たちがいますがその人たち全員に感謝していますし、これからもこのような関係を大切にしたいと思っています。ただ、だからと言ってずっと日本人といればいいというわけではありません。あくまで他の国の人たちとの交流の隙間に日本人と接して、その人たちと話をすることに意味があると僕は思います。実際、特に留学の後半は僕自身少し日本人と長い時間を過ごし過ぎてしまったと思う部分もありますし、そのあたりのバランスは難しいと思います。ただし、その点に気をつけさえすれば異国での日本人同士の交流というのも悪くないのではないでしょうか。

 これから留学する人たちは大なり小なり、ある程度の不安を抱えていると思います。着いた当初はもちろんいろんなことからストレスを感じることもあるかもしれません。しかし、それはむしろごく自然なことでそういったものを乗り越えてこそ初めて得られるものがたくさんあると思います。そしてLeipzigの人たちは本当にみんな温かくて、その人たちと一緒に過ごせる時間というのは本当に貴重なものです。BuchMesseのドイツ人のコスプレに度肝を抜かれたり、夏には毎週のようにバーベキューをして、ワールドカップの時期には公共のテレビがある場所をはしごしてドイツ人と一緒にサッカーを応援したり、ホテルを予約せずに一週間旅行して本気で野宿しそうになったり、でも親切なドイツ人に助けられたり、夏が終わったと思ったら急に冬が来て驚いたり、DSHの勉強のために毎日カフェか図書館に行ったり、タンデムパートナーの実家に行ってコスプレパーティをしたり、ぶらぶらとクリスマスマーケットの中を物色したり、大晦日には花火で火傷しそうになったり・・・

 本当に数えだしたらきりがないほどの思い出をこの一年を通して得ることができました。もしかしたら留学が失敗に終わってしまうということもあるかもしれません。それでもその結果は自分次第できっと変えられるものだと僕は思っています。そして最後にもう一度だけドイツで、ライプツィヒで出会った、支えてくれた人達に伝えたいと思います。
「一年間、本当にありがとう!!」


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