井上昇(ドイツ)

ドイツ人の気質を肌で感じた1年間

パッサウ学生の週末の過ごし方

 僕にとってドイツ留学は初めてのことばかりでした。海外に行くことも初めてだったし、一人暮らしも初めてでした。ドイツ語の成績も優秀というわけではなかったし、英語もまったくだめなので大丈夫だろうかという不安はもちろんありました。しかしそれよりも好奇心の方が上だったので、とにかく行って体験したい、という気持ちでいっぱいでした。
 僕が留学したところはパッサウというドイツの南、オーストリアとの国境にある小さな町です。ここはドナウ川、イン川、イルツ川の3つが交わるとてもきれいな町です。また世界一大きなパイプオルガンがある大聖堂があり、観光地としても有名な町です。僕はここにあるパッサウ大学の交換留学生として約1年間滞在していました。イン川沿いにある大学には広場があり、そこで夏には学生たちがバーベキューなどを楽しんでいます。僕も友人に誘われ何度かバーベキューをして楽しみました。ドイツのバーベキューは日本とちょっと違って野菜は焼きません。肉やソーセージだけです。他にはサラダやパンをみんなでそれぞれ持ってきます。飲み物はビールやワインです。夏になるといろいろな友人から誘われるので週に1回はバーベキューをしていた記憶があります。おもしろいもので、毎回絶対知らない人に会うことになります。他にもなにかパーティーなどに誘われると初めて知り合いになる人が多いので、名前を覚えることがなかなかできませんでした。それで街中でばったり会っても、名前が出てこずちょっと気まずいなんてことがよくありました。知らない人で思い出したのですが、僕が誕生日の前に、とあるバーに友達を何人か誘ったのですが、当日、友人が僕の全く知らない人を連れてきて、その人におめでとうと言われました。僕は誰?!と思いつつ笑顔でありがとうと言っておきました。向こうではそれって結構普通なのだろうと思います。
 向こうの人(学生だけだと思う)はほんとによくパーティーをします。週末になれば町のどこかで絶対やっていました。向こうでは学生寮もあるのですが、アパートなどをルームシェアしている学生もたくさんいます。寮にはちゃんとパーティールームがありそこでやります。ルームシェアをしている人はアパートの地下やリビング、台所を使います。大学でもありました。これは毎週でなくて、どの学部が主催するかによっても場所や日にちが変わるのですが、さすがに豪華でした。入場料もしっかり取っていました。大学のどこかの一室を借りてというのではなく、吹き抜けになっているような広い場所です。DJもどこからか呼んで、ミラーボールや照明、壁などにプロジェクターで映像を映したりしてさながらディスコといった感じです。学生たちはその日のチケットを買うのに必死です。僕が仲良くしていた友人がよく、というより毎週なにかしらパーティーに誘ってくれました。最初は楽しかったし新しく友人ができるので行っていましたが、やはりそう毎週毎週行っていると正直飽きます。なので後半はどうやって断ろうかなんていろいろ考えていたように思います。

パッサウの年末年始風景

 ドイツは夏もそうですが、クリスマス前の4週間もいい時期です。街はきれいに装飾され、大聖堂の前などには出店も並びます。この時期にはちょっと変わった飲み物があります。それは赤ワインをあたためたものなのですが、これが結構おいしいのです。これにはそれ用の赤ワインがあって、普通の赤ワインだとだめらしいです。このクリスマス前は人も多いのですが、逆にクリスマス当日、街はほとんど人がいなくなります。お店も閉まります。特にパッサウは学生の町なので、ほとんどの学生は実家に帰って家族と一緒に過ごすので町中は閑散としていました。カップルでデートなんて日本ぐらいなものでしょうか。これも文化の違いなのだと思いました。クリスマスが終われば今度は年越しです。ドイツでは年が明けたら町中で花火を上げます。パッサウでは町中が煙だらけになるぐらい上げていました。日本みたいに大きな打ち上げ花火ではないのですが、なにせ町中で上がるのでおもしろかったです。

現地での勉強について

 なにか遊んでばかりいたみたいに思われるといやなので、僕が受けていたドイツ語コースについて書きます。パッサウ大学では留学生向けのドイツ語コースが残念ながら週に2時間だけでした。これではなんなので、パッサウで開かれている市民講座に通いました。これは月〜金と毎日ありました。時間は午前か午後どちらか選べます。もちろん僕は初級コースから始めました。先生がとてもおもしろい人で楽しく勉強できました。他にもドイツ語を学びに来ている人たちがいて、国籍、年齢が様々で、とてもいい刺激になりました。やはり毎日行っていると(休んだ日もありましたが…)ドイツ語は身に付きます。しかも周りはドイツ語ばかりで何をするにもドイツ語です。それにもっといろいろな人といろいろな話がしたいと思えば、自然と机に向かって勉強もします。日本ではありえなかったのに。これは自分でも驚きでした。実際、自分ではどれくらいドイツ語が上達したかはよくわかりませんでした。ところがそれは、周りの人たちがよくわかっているのです。というのは、僕がドイツに来てから数ヶ月以上経ったある日、友人にドイツ語うまくなったなあと言われました。しかも他の何人かにも言われた記憶があります。え、ほんとに?いやいや、そんなことないよ、と言いつつ、心の中ではかなり喜んでいました。
 ドイツに来ればある程度はドイツ語が話せるようになるのは事実ですが、だからといって留学する前に日本で別にドイツ語を勉強しなくてもよかったというわけでは決してありません。僕はもっと勉強しておけばよかったと思っています。確かに実際話したり、聞き取りなど身に付けるのは日本では難しいです。しかし、単語や文法、読み書きに関しては日本でもできることです。だから僕が思うのは、もっとそういう勉強をしていれば、さらにレベルの高い勉強がドイツでできただろうということです。
 最初にも書きましたが、僕にとってこの留学で初めてのことばかりでした。そのことは、単にドイツ語力が伸びたということ以外にも、いろいろな多くのことを僕に学ばせてくれました。そしてそれらは僕にとってかげがえのないものとなり、自分自身の成長に大きく影響したと自信を持って言えます。


外国語学部ドイツ語学科
井上昇

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