留学体験レポート

山中 咲 ユヴァスキュラ大学(交換留学)

留学期間 国名 留学先大学名 留学の種別
2009年8月1日から
2010年7月3日まで
フィンランド ユヴァスキュラ大学 交換留学

 フィンランドへ留学する、知り合いに報告するたびに「なぜフィンランド?」「フィンランドってどんな国?」などとわたしに問いかけてきました。確かにそうだと思います。正直、留学先の候補としてフィンランドを選択するまでは、フィンランドがどこに位置するのかさえ知りませんでした。フィンランドはフィンランド語を母国語とする国でありますし、英語を専攻している私にはメリットがないのではないのか、私の中に大きな不安がありしました。しかし、誰もがどのような国なのか想像できるアメリカやカナダなどへ行くよりも、フィンランドのように国名は知られているが一般には馴染みの薄い国に飛び込んでみるのも留学の一つの目的だと考え結論を出しました。京都産業大学とユヴァスキュラ大学は提携を結んだ歴史が浅く、私が本学からの派遣される第一号の留学生だった為、ビザを取得することから大学の授業の登録まで何もかもが手探り状態で、留学の準備を始めてから現地の寮に着くまで不安のある落ち着かない日々でした。

 留学生活の中で、フィンランドの素晴らしさをたくさん知りましたが、ここではいくつかある中の2つを紹介したいと思います。まず驚いたのは、物価の高さです。日本の消費税が5%に対し、フィンランドは23%と日本の4倍余りあります。教育・医療・福祉が充実し、老後の不安に駆られることがないフィンランド人の生活は豊かさが保たれ国に守られていると痛感しました。先日某米誌が「世界最高の国、北欧の小国フィンランド」と記載した新聞を見て、私の感じていたことは間違っていないと思わず笑みがこぼれていたに違いありません。

 二つ目は、ほとんどのフィンランド人は英語が堪能だということです。通りがかりの人に道を聞いたり、お店の人と話したり、バスの運転手や駅員さんに声をかけたり、どの状況でもみんな流暢な英語を話していました。それも、今注目されている「フィンランドメソッド」というフィンランドの教育方針に裏打ちされていることを大学の講義やフィンランド人の友達の話で知りました。フィンランドでは英語の授業が小学校の低学年から始まるそうです。また、「みんな平等」が大切にされ、授業についていけない子をつくらないのが平等とされています。それだけではなく、私は日常生活にも要因があると感じました。フィンランドのテレビでは毎日アメリカやイギリスからのドラマやトークショウ、子供向けのアニメに至るまで多くの番組が、吹き替えではなく字幕付きで放送されていました。テレビによって自然に英語に触れることができる日常も言語習得の根本を支えているのだと強く感じられました。このような環境下にいた私は、フィンランドにいながら英語漬けの米英で生活している気分でした。もちろん街を歩いていれば、フィンランド語が飛び交っています。しかし、何のためらいもなく現地の人に英語で話しかけることができます。そんな日々を送っていたので、留学するほとんどの人が言語習得に関して悩んだり苦しんだりするように私も同じ経験をしました。しかし、私が彼らと違うと思うところは、英語やドイツ語など一つの言語に執着しなかったところです。もちろん専攻言語である英語は必ず高めたいと自分の中で決意していましたが、フィンランド語と出会って、英語だけにこだわらずフィンランド語も話せるようになりたいと強く思い始めました。英語を通して他言語を学ぶことは私にとって決して容易なことではありませんでしたが、厳しさだけではなく中には楽しさもありました。初めて英語を使って通じ合えることができたときの喜びと感動を再認識することができたのです。時には、留学生同士で英語とフィンランド語を混ぜて会話して楽しむ、英語圏では体験できない世界を味わえたような気がします。フィンランドに留学し、英語力の向上に加えフィンランド語を少しだけ話せるようになったことは、私のささやかな強みになりました。

 この留学は、英米語専攻ならば英語圏の大学に行くものだという固定観念を変えるものになった気がします。私だけではなく、これから留学したいと考えている人に同じ経験をし、フィンランドという魅力溢れた国を多くの人々に知ってほしいと強く願っています。老後は、フィンランドでノルディックウォーキングをして、ビール片手にサウナに入って気楽に暮らしたいものです。

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