菅原宏太教授 日本地方財政学会第15回佐藤賞受賞

経済学部の菅原宏太教授が、日本地方財政学会第15回佐藤賞を受賞しました。

 日本地方財政学会佐藤賞は、日本の財政学に大きく寄与をされた故佐藤進先生の地方財政研究を発展させたいというご意志に基づき、日本地方財政学会が、地方財政、国と地方の財政関係、地域経済および地方自治などの分野に関する優秀な著書、論文について授与するものです。

 定住自立圏形成の要因について、成立条件の理論的命題を導き出しそれを実証しただけでなく、実証結果をサイド・インフォメーションで補強した点が評価され、今回の受賞となりました。

受賞論文

菅原宏太「地域間協調行動の実証分析−繰返しゲームからみた定住自立圏形成−」、日本地方財政学会編『日本地方財政学会研究叢書』第21号、pp.79−105、勁草書房、2014年.

  • 日本地方財政学会第23回大会での授賞式
    (左 金子勝教授[慶応大学、佐藤賞選考委員会委員長]
    右 菅原宏太教授)

  • 日本地方財政学会第15回佐藤賞賞状

概要

 定住自立圏構想のスタートから3年が経過し、中心的な役割を担うとされた中心市候補団体の間では、自立圏形成について意欲の差が見られる。
 そこで本稿では、便益の地域間スピルオーバーの下での繰返しゲームを理論的枠組みとして、そこでの協調解として自立圏形成を捉え、その成否にどのような要因が影響しているかを実証的に考察した。主要な分析結果は次のとおりである。第1に、周辺市町村から中心市候補団体へのスピルオーバーの程度が小さく、中心市候補団体から周辺市町村へのスピルオーバーの程度が大きいと、自立圏形成の成功確率は低くなる。第2に、人口規模の大きい中心市候補団体は自立圏形成に消極的である。一方で第3に、中心市候補団体の医療サービスの許容量が大きいと自立圏形成の成功確率は高まる。第4に、構想の当初に想定されていたのとは異なり、人口減少リスクは自立圏形成のインセンティブとはなっていない。第5に、既存の財政措置は自立圏形成を促進させる効果を示している。
 本稿の貢献は、定住自立圏形成という事例を通じて見た場合、地方自治体間の関係は非協力ゲームで説明できることを明らかにした点である。つまり、自立圏形成に至らない非協力均衡が実現してしまう可能性が考えられる。本稿の結果から、これが避けられるべきならば、財政支援措置の拡充が政策的に有用だといえる。

PAGE TOP