中国経済プロジェクト第8回 ワークショップ

 

 3月8日、京都産業大学大学院 経済学研究科オープンリサーチセンター(ORC)の中国経済プロジェクトによる「第8回ワークショップ」が開催された。

 

 講師は神戸大学大学院経済学研究科教授加藤弘之先生と青山学院大学国際政治経済学部教授中兼和津次先生にお願いしました。
 加藤先生は「包と比賽:中国経済の制度的基礎」について、中兼先生は「中国は移行経済の優等生か?―他の移行経済国との比較」について話された。
 加藤先生は、偶然にも本学元学長柏祐賢先生が中国経済について議論*された際に導入した「包(パオ);請負」について議論された。1978年以降の改革開放後の中国の農家・郷鎮企業・国有企業・中央と地方政府など多方面における経済活動の前提として、包が現在でも存在していると説明された。そして、中国経済が市場化およびグローバル化を推し進める中で、徐々に「包」が機能する範囲は狭くなり、徐々に「比賽(ヒサイ);競争」の範囲が維持拡大してゆくであろうとされ、政治改革に大きな進展がない限り、「包」と「比賽」を組み合わせた制度が今後も存続するであろうと話された。

 

 続いて、移行経済論を1つのライフワークとされて来られた中兼先生は、ここ20年の間に移行経済国に大きな変化があったことから、改めて移行経済論をまとめておられ、今回はその内容についてわかり易く説明された。先生は、他の移行経済国と比較しながら、中国は大局的に見て体制移行に成功しつつあることは事実である。しかし、その反面、他の国と同様に民主化運動に対する弾圧や腐敗の蔓延など「移行に伴う費用」を払ってきたことも事実であると話された。

 

 ORC中国経済プロジェクトは、この3月末で7年間の研究活動を一応終えます。その前に、中国経済研究者の「東西横綱」である2先生を招聘できたことは幸運でありました。これまでご支援・ご協力いただいたすべての方々に対して、本プロジェクトより心より感謝申し上げます。

 

*柏祐賢『経済秩序個性論I II III』(柏祐賢著作集第3−5巻, 京都産業大学出版会, 1985-6年)第2編「中国経済秩序個性論」

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