結果分析・授業計画/改善に向けての取り組み(平成26年度 春学期)

1.結果の総評

 この調査結果は、各教員が担当する主な講義科目(全35科目)と導入教育科目である「入門セミナーA」の23クラス、および「ミクロ経済学入門A」および「マクロ経済学入門A」を対象に実施された2014年春学期の学習実感調査(Bアンケート)について分析し、まとめたものである。アンケート結果の総評は以下のとおりである。

  1. 入門セミナーの満足度は高く、経済学部の導入科目として十分な意義を持っている。
  2. 講義科目については、満足度や成長の実感にバラツキがあり、今後、継続して分析調査をする必要があることが示された。

2.調査結果にみられる本学部授業の課題

課題は、以下の3点である。

  1. 入門セミナーAは学力別クラス編成である。学力レベルによらず、少数ながら成長実感や満足度を十分に得られないクラスが存在する。その要因として基礎的内容の理解、および、1限との連携が課題であることが示唆された。
  2. 入門セミナーAが理解を深める助けになった点として、学力レベルの低いクラスでは、「1限でわからなかった点を解説してもらえた」点を指摘する学生が多かった。そのため、学力レベルの低いクラスでは、演習問題を解くことと併せて、1限の補助的解説を行うことが、1時限目の授業内容の復習・補完に貢献する可能性が高い。
  3. 講義科目については、成長の実感や満足度に関する評価のバラツキが大きい。高評価の講義を参考にして、講義科目の魅力を高める必要がある。

1.入門セミナーA

(1)学力レベルが低いほど、入門セミナーが経済学入門の理解を深める助けとなっている。

図1 レベル別・入門セミナーが経済学入門の理解を深める助けとなったか
(各レベルを100%としたときの%値を表示)

 全体で、7割以上の回答者が入門セミナーが経済学入門の理解を深める助けとなったと回答していた。入門セミナーは経済学部の導入科目として十分な意義を持っていることが確認された。
 図1は、学力レベル別(5段階)に、入門セミナーが経済学入門の理解を深める助けになったかをみている。入門セミナーが経済学入門の理解を深める助けとなったかとの問いに、学力レベルが低いほど「強くそう思う」・「そう思う」と回答する割合が高い。学力レベルと、この問への回答との間には有意な関連が認められた(p < 0.01)。
 入門セミナーのレベルによってアンケートへの回答率が異なる。入門セミナーの平均回答率は85%であった。学力レベル4の平均回答率が最も高く(91%)、学力レベルが下がるにつれて回答率は下がり、学力レベル1の平均回答率は85%であった。平均回答率が最も低いのは学力レベル5(79%)であった。すべての受講者がアンケートに回答しているわけではないため、結果の解釈には留意が必要である。

(2)不十分であった点として、基礎的内容の理解・1限との連携を指摘する者が多い

表1 レベル別・入門セミナーが不十分であった点
(値は各選択肢を選んだ人数・複数回答可)

 表1は、入門セミナーが経済学入門の理解を深める助けになったという回答に「2.あまりそうは思わない」・「1.そう思わない」と回答した学生に対して、学力レベル別に不十分な点を尋ねた結果である。学力レベルに関係なく、基礎的内容の理解に関して不十分だと指摘する学生が最も多く、「専門用語や図の意味がよくわからなかった」(51名)・「記号の意味がよくわからなかった」(25名)点を不十分な点と指摘している。さらに、1限の経済学入門との連携についても不十分だと指摘する学生が多く、特に「1限の講義(=経済学入門)と入門セミナーの教え方が統一されていなかった」(34名)点を不十分だと指摘している。

(3)経済学入門と教え方が統一されていない場合、成長実感・満足度ともに低い傾向がある

図2 入門セミナーが不十分であった点と成長実感・満足度
(成長実感・満足度「5:強くそう思う 〜 1:そう思わない」)

 図2は、入門セミナーが不十分であったと指摘した項目別に成長実感(「この科目の学習を通じて知識を得たりスキルを伸ばしたりすることで自らの成長を実感することができましたか」)と満足度(「総合的に見てこの科目に満足していますか」)に対する回答の平均値を示している。特に、入門セミナーの不十分な点として「1限と教え方が統一されていない」と回答した学生の成長実感と満足度は、ともに低い値を示す傾向があった。

(4)理解を深める助けとなった点として、すぐ復習・演習問題を解く点を指摘する者が多い

表2 レベル別・入門セミナーが理解を深める助けになった点
(値は各選択肢を選んだ人数・複数回答可)

 表2は、入門セミナーが経済学入門の理解を深める助けになったという回答に「4.そう思う」・「5.強くそう思う」と回答した学生に対して、学力レベル別に入門セミナーの理解を深めるために助けになった点を尋ねた結果である。学力レベルに関係なく、「演習問題を解いた」(163名)・「すぐに復習できる」(135名)という点を指摘する学生が多かった。学力レベルの低いクラスでは、「1限でわからなかった点を解説してもらえた」を指摘する学生が多かった。

図3 入門セミナーが理解を深める助けになった点と成長実感・満足度
(成長実感・満足度「5:強くそう思う 〜 1:そう思わない」)

 図3は、入門セミナーが理解を深める助けになったと指摘した項目別に成長実感と満足度に対する回答の平均値を示している。すべての項目について、成長実感・満足度ともに4前後の高い値を示していた。
 以上の結果より、入門セミナーの不十分な点として基礎的内容の理解・1限との連携を指摘する者が多く、特に「1限と教え方が統一されていない」と指摘した学生の成長実感・満足度が低いことが示された。1限の経済学入門と2限の入門セミナーとの連携について、現行では各教員の判断に任せられている。学部全体で方策を検討する必要があるだろう。また、入門セミナーで演習問題を解いているクラスで、入門セミナーが理解を深める助けになったと回答する学生が多かった。さらに、学力レベルの低いクラスでは、「1限でわからなかった点を解説してもらえた」ことを、入門セミナーが理解を深める助けになったと指摘する学生が多かった。学力レベルの低いクラスでは、演習問題を解くことと併せて、1限の補助的解説を行うことが、1時限目の授業内容の復習・補完に貢献する可能性が高い。

2.講義科目

表3 経済学入門との連携・成長実感・満足度

 出席者数の平均は129名であった。入門セミナーと比較すると、受講生の多い科目が多く、出席率が低い傾向がある。経済学入門が科目の講義理解に役立ったと答えた回答者の割合は、平均47%で、理論経済学系の科目ではその値が高く、応用経済学系の科目では値が低いという傾向があった。
 アンケート結果より、半数以上の学生が成長を実感できた、もしくは、満足できたと回答していた。満足度や成長の実感には講義間でバラツキがあり、回答者の約9割が満足できた、もしくは、成長を実感できたと回答する講義がある一方、回答者の約3割が満足、もしくは、成長を実感できたと回答する講義があった。満足度や成長実感の高い講義のアンケート記述からは、学生が積極的に講義を受けるための仕掛けをふんだんに取り入れている様子がうかがわれた。満足度や成長実感の高い講義の特徴を教員間で共有することで、各教員がさらなる工夫を凝らし、専門科目の魅力も高まっていくのではないかと思われる。

3.2の各項目についての改善計画

  1. 1限の経済学入門と2限の入門セミナーとの連携について、学部全体で方策を検討する。
  2. 学力レベルの低いクラスでは、演習問題を解くことと併せて、1限の補助的解説を行う。
  3. 講義科目の魅力を高めることは、学部魅力を高めるために欠かせない重要な課題である。2014年度秋学期に向けて、アンケート調査の項目改善をはじめとした取り組みを行う。

改善に向けての取組(経済学入門・入門セミナー)

改善に向けての取組(導入教育の向上)

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