結果分析・改善計画(平成24年度 秋学期)

1.結果の総評

 この調査結果は、各教員が担当する主な講義科目(全50科目)と「入門セミナーB」の25クラス分を対象に実施された2012年秋学期の学習実感調査(Bアンケート)について分析しまとめたものである。アンケート結果から,(a)入門セミナーBの授業の満足度は高く,経済学部の導入科目として十分な存在意義を持っているがさらに魅力を高める余地があること,(b)講義科目については,出席率が十分ではなく,科目毎の満足度のバラツキがあり,今後,継続して分析調査をする必要があること,が明らかになった。

2.調査結果にみられる本学部授業の課題

  1. 入門セミナーBの出席率は8割程度,講義科目の出席率はそれを大きく下回る。
  2. 入門セミナーBは学力別クラス編成であるが,その何れのクラスでも成長を実感し,学びの面白さを感じている受講生の比率が高い。一方で,少数ながら成長の実感や学びの面白さを得られないクラスもあるため,原因の検討が必要である。
  3. 入門セミナーの学力別クラス編成のよりよい運営および,「演習問題への取組みと学びの面白さの両立」が,今後さらに導入教育の有効性を高めるための課題である。
  4. 講義科目についても,成長の実感や学びの面白さに関する評価のバラツキがある。高評価の講義を参考にして,講義科目の魅力を高める必要がある。

3.2の各項目についての改善計画

 2013年度の春学期から秋学期にかけて,授業改善のために,以下のような取り組みを行う。

  1. 出席率や満足度の高い科目の講義授業の担当者から,事前学習や事後学習,授業中の課題提出など「受講生に主体性を持って授業へ取り組んでもらう」工夫について学ぶ。
  2. 入門セミナーの授業の目的や,最低限取り組むべき演習課題など,教員間の合意形成に取り組む。
  3. 入門セミナーで1限の理解を深めるための演習だけでなく,経済学への興味を持ってもらうための工夫について情報交換を行い,各教員の授業改善に役立てる。
  4. 講義科目の魅力を高めることは,学部魅力を高めるために欠かせない重要な課題である。

 導入科目の充実に目途がついてきた現在,2014年度にかけてアンケート調査の項目改善を始めとして取り組みを本格化させる。

2012年度秋学期学習実感調査の結果について

 この調査結果は、各教員が担当する主な講義科目(全50科目)と「入門セミナーB」の25クラス分を対象に実施された2012年秋学期の学習実感調査(Bアンケート)について分析しまとめたものである。
 入門セミナーBのアンケート結果は,回答者の数が1つの授業につき平均で20.44人と少人数であること,学生が英語の学力試験によってクラス分け(英語の試験によるクラス分けで,英語の学力が最も高いクラスが5,低いクラスが1である)されており、クラス毎の回答者性質が異なること,などの理由からあくまで参考としての分析結果と考える必要がある。

1.入門セミナーBについて

 入門セミナーBのアンケート結果からまずわかることは、授業の満足度は学力別クラスのどのレベルに所属する受講生にとっても全般的に高いことである。長年にわたり,経済学部の導入科目として重視してきたこと,1限のマクロ経済学入門・ミクロ経済学入門の理解を深めるために,各教員が様々な工夫を凝らしていることが功を奏したといえよう。 詳細にアンケート結果を見てみると,以下のようなことがわかる。

1.1 入門セミナーBのアンケート結果について

(1)出席率はどのクラスも概ね8割程度

 入門セミナーBのアンケート回答者による出席率(自己申告)は84パーセント(アンケート選択肢の中位の出席率から算出),アンケート実施日の実際の出席率が81パーセントであり,受講生の出席率は8割前後であると推測できる。
 欠席した理由として目立つもの(回答者の60%以上が選択)は,「授業内容が難しすぎる」と「アルバイトが多忙」の2つである。欠席理由として「授業内容が難しすぎる」の回答が多かったクラスは5クラス(全25クラス中,学力レベル1で1クラス,2で2クラス,3で1クラス,5で1クラス),「アルバイトが多忙」は4クラス(全25クラス中,学力レベル2で1クラス,3で1クラス,5で1クラス)であった。受講生の学力レベルに関わらず「授業内容が難しすぎる」という理由で欠席者が出ていることは問題であり,教員側には,受講生の学力レベルに合わせた授業を行うよう,なお一層の努力が求められる。

(2)学力別クラスのレベルによらず,成長を実感し学びの面白さを感じている学生が多い

 学力別クラス分けでレベルの低いクラスを担当する教員からは,授業の運営の難しさが報告されているが,教員が担当するクラスのレベルに応じた授業を行うことで,どのレベルの受講生もスキルや知識を獲得できたという成長実感を持って受講している様子がうかがえる(図1参照)。

入門セミナーBの受講生の成長実感 入門セミナーBで学びの面白さを感じたか 授業に対する満足と1限との連携 授業に対する満足と成長実感の関係

 また,「この授業を通じて学びの面白さを感じた」受講生の割合が80%を超えたクラスが25クラス中11クラスあり,1クラスを除いて50%を超えの受講生が学びの面白さを感じている(図2参照)。入門セミナーBの受講により,成長を実感することができた」受講生の比率は,クラスによりバラツキがあり(平均50.8%,最大値95.2%,最小値16.7%,標準偏差18.7%),成長を実感できた受講生の比率が30%未満のクラスが3つあった。
 今後の検討課題としては,学力別クラスの有効な運営について,さらに詳細な検討が必要である。学力別のクラスの作り方について英語の試験を用いるのが適切なのか,さらに5段階のクラス分けが望ましいのか3段階ぐらいがよいのか,最も学力レベルが低いクラス(運営の困難さが指摘されている)の受講生数と学力が高いクラスの受講生数が同じで無理なく指導が可能なのか,等の問題について検証作業を行うことが望ましい。
 学力レベルに関わらず成長の実感や学びの面白さを得られないクラスがあるとすれば,その原因が受講生の学ぶ姿勢だけでなく教員側にも改善点がある可能性は否定できず,教員は,クラス毎の授業の質のバラツキを無くすための努力を行う必要があるだろう。

(3) 1限(マクロ経済学・ミクロ経済学入門)との関連性の高い(1限の理解をより深める)授業を行うクラスで満足度が高い

 図3は,「入門セミナーBの授業に総合的に満足した」受講生の比率と「入門セミナーBが1限の授業の理解を深める助けとなった」と答えた受講生の比率の散布図である。同様に,図4は,「入門セミナーBの授業に総合的に満足した」受講生の比率と「入門セミナーBの受講により知識を得たりスキルを伸ばしたりすることで自らの成長を実感した」受講生の比率の散布図である。
 「入門セミナーBの授業に総合的に満足した」受講生の比率の高かったクラスの担当教員6名のうち5名までが,1限のミクロ経済学入門またはマクロ経済学入門の担当教員であった。受講生がいかに,入門セミナーB1限の理解を深めるために演習課題を解き,理解の度合いが明らかになる「知識を得たりスキルを伸ばしたりすることで自らの成長を実感した授業」を,より単刀直入には「1限の授業の理解を深める助けとなる授業」を欲しているかが見て取れる。
 担当教員によって,授業の方針は様々である。あまりも授業の縛りを強くすると授業の個性が失われることが懸念される。しかしながら,受講生は入門セミナーBの担当教員を選ぶことができない。「総合的に満足」と答えた受講生が3割に満たないクラスも4クラスあり,担当教員の授業の方針や力量によって,受講生に有利不利が発生しないような配慮が必要である。

1.2 今後の入門セミナーの課題:学びの面白さと演習問題への取組みの両立

 アンケートの自由記述欄には,入門セミナーBの受講により,時事問題の学習・解説や取引ゲーム,映像教材を使った議論などにより経済学への興味が喚起されたというコメントが複数寄せられていた。
 中でも,「ただ単に問題を解いて答え合わせをするのではなく,ミクロ経済学そのものの本質について教員とのコミュニケーションの中で触れていくという授業形式が経済学のおもしろさを引きだし,とてもよかった。改善すべき点はコミュニケーションをとる形式の授業だけではテストに全く対応ができないので,こういうところがここの問題につながるというふうにテストを見据えた授業を行った方がよいと思う。」というコメントが,入門セミナーの課題と目指すべき方向について,鋭い視点を提起している。
 単に,入門セミナーが1限の理解を深めることをだけを目的とした演習になってしまっては,学びの面白さや専門科目への興味を喚起することは難しい。その反面,十分な演習なしで1限の内容を十分に理解することができない受講生も多くいることを忘れるわけにはいかない。
 1限の理解を深めるための十分な演習と,経済学への興味を喚起する少人数科目ならではの対話,また各教員の専門性や個性を生かした授業構成などについて,各教員がさらに工夫を凝らすことにより,入門セミナーBの魅力をよりいっそう高める余地があると考えられる。

2. 講義科目について

 講義のアンケート結果からわかることは,受講者数の多い講義が多く,入門セミナーBの約8割の出席率に比べると,かなり出席率が低いことである。その中で出席してアンケートに答えている学生から得られた情報だけでは,実は十分でないのかもしれないということを念頭に置くべきだろう。講義の満足度を見ると,受講生の89パーセントが満足と答えた科目がある一方で,30パーセント未満の受講生しか満足と答えていない科目が2科目あり,バラツキがある。
 アンケート結果からは,受講生が積極的に学ぶためには,「学びの面白さ」が非常に重要であることがわかる。今回,講義科目の中で抜群の評価を得た授業があった。100名程度の出席者(受講申請者ではなく)がいるにも関わらず,毎回,事前学習・事後学習を行い,受講生の負担は大きかったにも関わらず,アンケートの記述欄へのコメントが多く寄せられ,教員の熱意が受講生に伝わっていることが伺えた。
 専門科目の魅力を高めることは,学部の魅力を高めるために欠かせない。満足度の高い講義を行っている教員から学べることは少なくないと思われる。

【表1】 講義に総合的に満足できたと答えた受講生の割合 出席者数 シラバスを読んで受講したと答えた受講生の割合 学びの面白さを感じたと答えた受講生の割合 興味があったので受講したと答えた受講生の割合 受講により成長を実感できたと答えた受講生の割合
平均値 62.42% 126 60.92% 57.34% 24.47% 50.31%
最大値 89.90% 403 85.71% 87.67% 64.00% 84.29%
最小値 21.97% 23 26.85% 25.39% 2.08% 18.94%
標準偏差 15.86% 74 15.17% 15.15% 13.85% 13.50%

講義に対する満特と学びの面白さの関係
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