Vol.058 探検部 北川 京ノ介さん インタビュー

文化団体連盟所属クラブでありながら、その枠にとらわれない、
個性的な活動をしている探検部で、
昨年1年間主幹を務めた北川 京ノ介さんにお話を伺いました。

探検部ではどのような活動をしていますか?

北川 京ノ介さん(コンピュータ理工・4年次)
探検部の主な活動には登山、トレッキング、ラフティング(ラフトボートでの急流下り)、洞窟活動の3つがあります。多くの探検家が「探検とは、人間が本来持って生まれた知的・肉体的欲求の発露であり、その営みである」と語るように、自然に対する感謝を忘れずに、やりたいこと・知りたいことをなんでもやってみる、というアウトドア的な活動をしています。他にも、夏には無人島で合宿を行っています。

登山について詳しく教えてください。

昨年までは、部全体の登山イベントとして夏に毎年富士山に登っていました。しかし、富士山が世界遺産に登録されたことで登山客が増加し、道が整備されたことで探検としての面白さ、肉体的欲求が満たされなくなりました。そこで昨年は、南アルプスを登り、今年は飛騨山脈の穂高岳に登る予定です。冬は険しい山を登ることはありませんが、登山は基本的に1年を通して行っています。また登山と言っても色々あり、林道のような未舗装路をオフロードの自転車で走ったりもしています。この自転車での活動についても合宿を行っています。

登山に関連して、探検部では洞窟の探査を行っています。洞窟は石灰岩質の山によく見られるので、石灰岩質の山を見つけて、森林を分け入り探査しています。洞窟は地図で確認することができません。新洞探査はその地理的空白を埋める活動で、知的欲求の営みであると言えます。
実際に昨年6月の他大学探検部・社会人クラブとの測量訓練・洞窟知識強化合宿の際に、関西近辺では有数の大規模の鍾乳洞を発見しました。入口は成人男性では入れないほどの小ささでしたが、そこにはしっかりと発達した鍾乳石があり、コウモリなどの洞窟の中でみられる生物も確認しています。今までは調査などの試行錯誤を重ねている段階でしたが、これからはデータ管理などを徹底し、本腰を入れて測量する予定です。これは探検部だけでは、勉強したくてもなかなかできないことでしたが、学会の方や社会人の方との交流でようやく測量という活動に結び付きました。自分たちの知識・技術を高めながらゆっくりと調査を進めています。また、測量機材を揃えるためにも外部との協力は必須ですので、5月31日(土)にも測量の合宿を組んでいます(当時:5月26日)。
このように、様々な活動が密接に関わりを持っているので、「探検」を一言で簡単に言い表すことはできません。

ラフティングについて詳しく教えてください。

ラフティングは、部員同士で協力して激流を下るため、筋肉など体力的な面が重要になります。そのため、他大学の探検部は文化系ではなく、体育会に所属しているクラブが多いです。トレーニングをすることが少ない本学探検部では、大会に出るほどの力が無いので、この点では他大学と比べて見劣りするかもしれません。できる限り我々としても愛好家としての範囲で様々な川に挑戦しています。普段は、年間を通して京都の保津川で行っていますが、夏は岐阜の長良川で行っています。今年は和歌山の川にも挑戦したいと思っています。技術的な面は次の世代にしっかり伝承するようにしています。近年は洞窟探査に尽力していますが、今後、流動的ですがラフティングを中心として活動をする世代も出て来るのではないかと思っています。

冬のラフティングについて教えてください。

冬のラフティングは非常に寒く、極めて冷たい水に浸かるので、精神的鍛錬になります。皆が等しく極寒を体験する中で、部員が弱音を吐くこともありますが、探検部にとって必要不可欠な行事だと思っています。なぜなら、たとえ夏でも川は結局寒いですし、水も冷たいです。そのような環境によって体温が奪われた状態で、ボートが転覆するという緊迫した状態で川の底から生きて戻ってくるためには、最悪の状況を想定したような事をしなければ、実際に起こった時に対応できないからです。

その他にも、冬の雪山に日帰りの荷物で登り、遭難した場合を想定した不時泊(ビバーク)も行っています。その際の荷物は本当に服と鞄に、一応の救急セットのみで、様々な工夫をしながら寒さを乗り切っています。

木の棒さえあれば火を熾せる技術も身に付けました。サバイバル的な技術を身に付けたことがきっかけで、先日、滋賀県栗東市の防災イベントで講師として派遣されました。電気が停まった時でも空き缶や竹筒を駆使してご飯を炊けるようになろう、というもので、地域の方々に指導しながらご飯を炊くというのは今回が初めてでした。普段から野営して身につけた技術を違う形で発揮することができてうれしかったです。今時屋外での焚火などは安全上の問題で規制されてしまうので、こういった講演会は野営の普及に大きく役に立っていると感じました。

探検部は文化系クラブの中でも、体育会のように身体を使う要素を持つ異色の存在だと思います。そのような中で、気にかけていること、または際立たせていることはありますか?

我々探検部は学術的な探検をしています。洞窟探査も、古くからの存在の噂を元にした探査や、石灰岩の分布が重要となるという点でれっきとした地質学ですし、他の文化系団体に引け目はありません。ただ、探検活動を行うにあたって体力トレーニングの重要性は日々感じています。

夏の無人島合宿について教えてください。

無人島合宿は8月上旬、非常に暑くなった気温の中3泊4日で行います。その暑さの中、誰もいない海で泳ぐことや、漁協許可の元で漁もできますし、別に辛いことをするわけでもないので、バカンス的要素の多い合宿です。食料、テントも持っていきますが、流木を使って家を建てることも出来ます。

心身共に探検部で養われたことはありますか?

何でも「無理」と決めつけず挑戦することです。どうにか自分たちの力でできることを見つけてやってみるという精神は非常に鍛錬されました。また、一旦やり始めたことは決してあきらめません。あきらめてしまうと悔しさが残ってしまいます。ただ、物理的に不可能なことはあきらめざるを得ません。例えば、新洞探査における雪道での自動車の走行です。洞窟内は年中温度が10~15℃の範囲で安定していて、雪が積もっていても入口の穴だけ融けるので、冬の洞窟は見つけやすいです。その中で、雪山の中を進んで洞窟を探しに行く際に、車が何度も動かなくなるので心が折れそうになったこともあきらめたこともあります。どの活動も厳しいですし、その中で楽しさを見出す力は長けてきます。肉体的には、3000メートル級の山を登るので、高山病なある部員も、翌年は登るスピードの調整で乗り越えています。
とにかく挑戦する強い気持ちを持ち、実行するために訓練、工夫をすることは大切だと思います。机上の空論では話にならないので行動に移すことが一番大事です。

今後の目標を教えてください。

まずは、先述した洞窟を測量して発表することです。また、昔から残っている、我々の界隈でいう“甘え”的な活動を見直し、気を引き締め直したいです。例えば、同じところにばかり行くのではなく、新たな場所に挑戦していきたいです。
また、6月中には三重県の新洞調査にも出向く予定です。また、国内でも地域を活気づけていきたいですが、海外の洞窟は規模が非常に大きいので、海外の洞窟調査にも進出していきたいですし、実際マレーシアで知り合いが増えており、洞窟関連で誘いがあるので海外での活動が近いうちにあると思います。

何か最後に伝えたいことはありますか?

今後、地方部がもっと活性化されればいいなと思っています。そのために探検部が少しでも力になれたらと思います。学生諸君には、東京・大阪の都心一極集中の中でも地方部に目を向けてほしいと思います

また、探検部では新入生を募集しています。目的もなく、なんとなく大学生活を過ごすくらいなら一緒に探検しませんか!1つおもしろいことを見つけて打ち込もう!やりたいことも見つかりますし他大学や社会人交流で人間として広がりが出ると思いますよ!


(2014.06.23)
【記事:文化団体連盟本部 近持 恒平さん(経済・3年次)】
【写真提供:京都産業大学 探検部】

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