熊本地震から学ぶスタディツアー「復興の軌道」実施報告

2024.04.03

ボランティアセンターでは、日本財団ボランティアセンターとの共催で、熊本地震で被災した地域を訪問し、災害から約8年が経過した復興の現在を学ぶスタディツアーを実施しました。
このスタディツアーでは、熊本地震で大きな被害を受けた熊本市、南阿蘇村、益城町を巡り、災害を記憶するミュージアムを訪れたり、体験談を後世につなぐ語り部のお話を伺ったりしました。また、東海大学熊本キャンパスの学生の方々との交流や、復旧した南阿蘇鉄道への乗車、熊本城見学なども行いました。

「熊本地震から学ぶスタディツアー」実施概要

日程 2024年2月19日(月)~2月22日(木)
訪問先 熊本県熊本市、南阿蘇村、益城町
参加者数 学生20人+引率スタッフ2人

1日目:2月19日

昨年5月にオープンした「熊本県防災センター」を見学しました。センタースタッフの案内のもと、館内の展示を見て回り、熊本県で発生したさまざまな災害の歴史を学びました。また、プロジェクションマッピング、VR(ヴァーチャルリアリティ)などさまざまな技術を用いて、熊本地震や令和2年7月豪雨など熊本県の過去の災害の経験やそこから得られた教訓、災害発生のメカニズム、防災の取り組みなどについて学ぶ機会となりました。
宿舎に戻ってから、今日学んだことを共有するふりかえりとして、現地を訪れ、見聞きし、自分が感じたことを整理する時間をもち、参加者同士で共有しました。
熊本県防災センターの見学
ふりかえりの様子

2日目:2月20日

午前中は、旧東海大学阿蘇キャンパスに昨年7月にオープンした「熊本地震震災ミュージアムKIOKU」を訪問しました。各種解説映像や震災遺物の展示を通して、南阿蘇村がどのような被害を受けたのかや復興への歩みについて学びました。また、大きな被害を受けた東海大学の建物を見学しました。
午後からは、南阿蘇村震災伝承館「轍」にて、東海大学の学生約800人が住む通称「学生村」であった南阿蘇村の黒川地区で下宿を営んでいた地域住民有志が設立した「すがるの里」の手作りの復興弁当を食べました。また、すがるの里メンバーによる地震の体験談や学生を見守ってきた地域の思いを伺う交流会を行いました。
その後、道の駅「あそ望の郷くぎの」に滞在した後、昨年7月に運転が再開された復興の象徴とされる南阿蘇鉄道に乗車し、中松駅から立野駅の間、車窓から南阿蘇を望む機会を設けました。
旧東海大学阿蘇キャンパスの見学
すがるの里メンバーとの交流会

3日目:2月21日

益城町を訪問し、益城町語り部の会の案内で、当時の体験談を伺いながら、国の天然記念物に指定された災害遺構「布田川断層帯」を見学しました。
午後からは、東海大学熊本キャンパスの学生との交流会を行い、東海大学の学生から熊本地震当時の話を聞き、本学学生から被災地を見学して考えたこと、感じたことを話し、これまでの熊本のこととこれからの熊本のことを語り合う機会を設けました。
震災遺構の見学
東海大学の学生との交流会

4日目:2月22日

地震で大きな被害を受けた熊本城を見学し、県民の誇りであるお城の復旧作業の様子を見学しました。また、熊本城ミュージアムわくわく座や熊本博物館も見学し、熊本が歩んできた歴史や街の変化についても知る機会となりました。
熊本城見学
熊本城ミュージアムわくわく座見学

参加した学生の声(アンケートより抜粋)

今回のスタディツアーで得た最大の「学び」は?

  • 防災を自分のこととして考えることの必要性。
  • 地域住民同士が団結することが大切で、皆で励まし合い、前向きな気持ちに早い段階でなれることが大切だと学んだ。
  • 「ボランティア」という枠にとらわれず目の前の小さなことから始めることで、誰かを助けられるかもしれないということ。1人だとできないことも、団結すれば達成できるということ。
  • 危険だから壊すのではなく、後に伝えていきたいものは、できるだけ早く残せるようにもすべき場合もある。また、物や場所だけでなく、人やエピソードも残して伝えていくべき。
  • 地震があったことで新たに出会った人やものを大事にしていく。
  • いろんな人が辛い思いをして、いろんな人がそれを乗り越えようとしていること。
  • 熊本の人たちのつながりの強さや、熊本に対する思いの強さを学んだ。
  • みんなで意見を共有し合うこと。

学びがもたらした変化は?

  • 自分の家庭でも防災対策をしようと思った。
  • まず、あいさつなどをして地域の人に顔を覚えてもらおうと思ったのと、日ごろから災害は起こるものだと考えて、常にスマホの充電を100%にしておいたり、モバイル充電器を持ち歩いたりするようになった。
  • 直近であった能登での地震も含め、将来起こるであろう大型地震について自分自身が何ができるのかといったことを考えるきっかけになった。
  • できない理由や足手まといになるかもなどのネガティブなことは考えず、まずできることに対してフットワークを軽くしようと思えた。「ボランティア」としての心構えや覚悟は必要だが、それが足かせにならないように、目の前の小さなことから始めてみる。
  • 自分も何か辛いことがあっても諦めず、挑戦していこうという気持ちに変えてくれた。
  • それぞれ違う意見や考え方を共有することで、自分の意見や考え方と比較でき、新たな視点やものの見方や考え方が広がる。

現地の見学にあたり受け入れのご対応をいただきました、熊本県防災センター、熊本地震震災ミュージアムKIOKU、すがるの里、益城語り部の会の皆さま、そして、企画実施に際し、現地アクティビティのご紹介、当日のアテンド、学生交流会のセッティングなどにご尽力いただいた、東海大学文理融合学部前田芳男先生、山田 一隆先生、ありがとうございました。

参加した学生たちは、実際に被災された経験を持つ方々から話を聞き、体験談だけでなく、その後の復興の過程でどのような心境の変化があったのかを直接伺うことで、災害を身近に感じることができました。加えて、災害から得られた教訓を現地で聞くことは、強いリアリティを伴い、学生たちに深く印象付けられていました。
また、毎晩のふりかえりの時間に、現地で見たことや出会った人々との会話、自分自身の感情のゆらぎについて整理し、共有したことで、体験したできごとが何を意味しているのか、自分自身にとってどのような価値観の変化をもたらすのかを語ることができるようになっていきました。他者と共有する中で、多様な捉え方や見え方をしていることへの気づきが生まれ、多様な視座の獲得にもつながりました。
さまざまな災害のリスクと向き合いながら、過去の災害から学ぶことは、今後の災害への関わりを考える上で非常に重要な機会でした。

お問い合わせ先
京都産業大学 ボランティアセンター 13号館B1階
〒603‐8555 京都市北区上賀茂本山
Tel.075-705-1530
Fax.075-705-3191

開室時間
平日:9:00~16:30(13:00~14:00を除く)
土曜:9:00~11:45※不定期に閉室することがありますので、事前にお問い合わせください。
日曜・祝日:閉室
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